3章
5話
 翌日の早朝5時、玲奈・彩・奈々の三人は、和哉の尾行をしている。

彩「楽しそうに歩いてるな、やっぱりデートなんかな?」

奈々「お兄ちゃん、彼女できたんだ」

 和哉に彼女ができたかも?となると、複雑な表情を見せる奈々。兄に彼女ができたのは嬉しいが、未姫に何と言っていいか悩んでいた。それとは対称的に

玲奈「あはははは、会長、私以外の女と付き合ってるの?ぶっ潰す」

 玲奈はキレていた。まだ彼女ができたとは限らないのに・・・。電車に揺られること数十分、和哉はある大学の前に来ていた。

玲奈「ここに彼女がいるんだ!」

彩「ここって東大?」

 和哉が早朝から訪れたのは、日本一の大学。迷うことなく、歩いていき、研究所のような建物に綺麗な女性と共に入っていく。中で入館書を見せ、奥へと進んでいく。玲奈達は建物の中に入って、和哉の後を追うことはできない。

玲奈「あはははは、会長許さないから」

 マジギレした玲奈は受付の女性に有無を言わせず、和哉がいる場所まで案内させる。

奈々「私・・・松井さんを怒らせないようにしよ。怖いから」

彩「マジで怖っ、ウチも怒らせんよにしよ」

 案内され、和哉がいる研究室の前に行くと

「君たち、私のラボに何の用かな?」

奈々「あの・・・兄がここにいると・・・」

「あー、奈々ちゃんか、久し振り。って言っても10年振りだからおじさんのことは覚えて無いか」

 久し振りと言われ、必死に思い出そうとする奈々。だが、流石に10年前の記憶を辿るのは容易ではなく、思い出せない。

「お父さんの友達で、お兄ちゃんの家庭教師してたんだよ」

奈々「あっ・・・お久し振りです」

 ようやく思い出した奈々。

奈々「お兄ちゃんの家庭教師をしてくださってた鈴置教授です」

彩「それで岡田君は何してるんですか?」

「私の助手をしてくれてるんだよ。そこから見てみなさい」

 玲奈達が隣室の小窓から研究室を覗いてみると

彩「あんな真面目な顔もできるんや」

 真剣な眼差しで実験をしている和哉。普段とは違い、欠伸一つしていない。

玲奈「山本さん、顔赤くなってるけど、どうかしたの?」

彩「暑いから・・・この中暑いから赤くなってんのとちゃうか?」

「おかしいな、この中は完璧な温度管理してるから、暑いはずは無いがな」

奈々「私には寒い位ですよ」

彩「あ・・・そうなん・・・や。ちょっと待ってや、こっちに来んとってくれる?」

 先程、受付の女性を恐怖に陥れた笑顔で玲奈が近付き、彩は怯えながら後退りしていく。

玲奈「もしかして、惚れちゃったの?ねぇ、私の会長に惚れちゃった?」

彩「無い無い、それは絶対無いから安心して、なっ!」

 真っ赤になりながら否定する彩。近くで見ている奈々は、否定しながらも彩が和哉に惚れているようにしか見えなかった。

COM ( 2015/10/11(日) 19:26 )