4話
彩「なぁ送辞できた?」
和哉「こんなんで良いだろ?」
送辞の下書きを受け取った彩の表情がみるみる変わっていく。
彩「何なんこれ?『卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。(号泣)』・・・・・・って何やこれ?アンタ、ふざけてんのか」
和哉「良いだろ、それ。号泣して席に戻される。良いアイディアだろ?」
玲奈「何かのドラマで見たかも」
彩「奈々ちゃんみたいに可愛い娘がやったら可愛いけど、アンタみたいなんがやってもな・・・やり直し。終わるまで帰らせんからな!」
和哉「ウケると思ったんだけどな」
彩「アンタ、アホか」
彩に怒られ、残念がる和哉。
和哉「じゃあこれはどうだ?」
玲奈「山本さん、どうしたの?」
送辞の下書きを読み出した彩の瞳から涙が零れ落ちる。
彩「最初からこれを出さんかい、ボケ!」
和哉「って、ことはOKなんだよな。お疲れ」
彩「ちょい待ち・・・・行ってしもうた」
彩が引き止めようとしたが、和哉は逃げるように帰ってい く。
彩「頼むから今日だけは真面目にしてな」
卒業式当日、和哉に不安を感じた進行役の彩が真剣な表情で頼んでいる。
和哉「フリか?」
彩「やったらあとでシバく!」
彩の巨大ハリセンを恐れ、和哉は真面目にすることを約束させられた。 卒業式が始まり、進行役の彩が不安を感じる送辞。真面目にすることを約束させたとはいえ、和哉が本番で裏切らないとは言えなかった。
和哉の送辞が始まると、その場にいる教師・生徒の殆どが涙を流す。彩が涙を流した内容と、和哉の感情が込められた声。
送辞が終わる時には、啜り泣く声が講堂内のあちこちで聞こえる。特に進行役をしている彩が泣いていた。和哉が席に戻る時には彩は進行役でありながら号泣。
彩が進行役が務まらないと判断した和哉は、席に戻りながら、他の誰にも気付かれない様に奈々と潤に合図を送る。潤が進行役を代わり、奈々が彩を席まで連れていく。
潤「申し訳ありません。会長の送辞に感動して進行役を交代するのを忘れてました。続きまして卒業生答辞」
潤が進行役を代わり、卒業式は無事終了する。
卒業式の片付けが終わると、生徒会役員は生徒会室に集まる。和哉は帰ろうとしたのだが、彩に無理矢理連れてこられた。
彩「神谷君、代わってくれてありがとな」
潤「礼なら和哉に言ったら。アイツが代わる様に合図出したんだし」
彩「そうなんや・・・岡田君、ありがとな」
和哉「仕方無いだろ、進行役代わらねーと早く終わんないだろ。まぁあんな珍しいの見れたから良いか」
素直に礼を言った彩をからかう和哉。更に
和哉「司会やりながら号泣するヤツ初めて見た」
追い討ちを掛ける和哉に彩の怒りが爆発。
彩「アンタ、死なす!」
彩の上段回し蹴りが和哉のコメカミに炸裂。和哉はそのまま倒れ、気絶する。
潤「白か・・・あっ・・・」
彩「アンタは変態か?アンタも死んどき!」
見えた彩の下着の色を思わず呟いた潤のコメカミにも彩の上段回し蹴りが炸裂。潤も気絶してしまった。
玲奈「会長、大丈夫?」
奈々「潤さん、大丈夫ですか?」
和哉と潤が気絶すると、玲奈と奈々が駆け寄る。
玲奈「気絶してるだけみたい」
彩によって気絶させられた和哉と潤は、ソファーに寝かされる。
彩「これ、どないする?」
彩がこれと言っているのは、気絶している和哉と潤。気絶して30分以上経つが、起きる気配は無い。
「コンコン」
由紀「失礼します」
ノックの後、返事を待たずに由紀が生徒会室に入ってくる。
由紀「岡田君は・・・いたっ。でも、何で寝てるの?」
彩「そんなんええやん。柏木さんこそ何で生徒会室に?」
由紀「私は岡田君と一緒に帰りたいな〜と思って」
由紀が和哉と一緒に帰りたいと言うと、玲奈は頬を膨らませる。
由紀「かわいい寝顔、ずっと見てたいけど、王子様を起こしてあげないとね」
和哉に近付き、キスをして起こそうとする由紀。
奈々「だから生徒会室でそんなことしないでください」
由紀が和哉に近付かないように立ち塞がる。
玲奈「ダメ、会長を起こすのは私」
奈々「松井さんも止めてください。山本さんも笑ってないで、助けてください」
玲奈も和哉にキスしようとし、奈々一人では止められそうになく、彩に助けを求めるが、彩は見て笑っているだけ。
由紀「お兄ちゃんを獲られたくないからって邪魔しないで」
邪魔をされた由紀は、奈々を突き飛ばす。
由紀「邪魔者がいなくなったし」
玲奈「私が」
由紀と玲奈、押し合いながら和哉に近付いていく。
和哉「ふぁ〜、よく寝た。こんな時間か、帰ろ」
寝惚け気味の和哉は何も気付かず帰っていく。突然のことに四人は帰っていく和哉を見送るだけだった。