元不良見習いの奮闘記







































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第9章 笑ってもらうために
丹精込めた飯はうまい
タン!タン!タン!タン!
会話もなく包丁の音が響く。
平手「ねぇ。」
高松「ん?」
平手「本当に誰もいないの?」
高松「あぁ、ここの持ち家の人も出て行った。」
平手「へぇ〜、いつもここで作っているの?」
高松「あぁ、まぁ、最近立てたばっかりだからだけどな。よし、全部切った。」
下処理した野菜を用意する。
冷蔵庫から材料を出す。
平手「何作ってくれるの?」
高松「見てのお楽しみ。」
まず、微塵切りにした玉ねぎを炒める。
ついでに、人参を鍋で煮る。
玉ねぎは、少し焼き目がつくまで炒める。
高松「これくらいだな。」
炒めた玉ねぎをボウルに移す。
そのボウルに挽肉を入れる。
その上、卵、牛乳、パン粉を入れる。
その後、塩胡椒を入れて・・・
平手「え?ケチャップ?」
高松「あぁ、美味くなるんだってよ。」
これは、角田の入れ知恵。
混ぜ終えたら少し寝かす。
高松「人参は、あと少し・・・」
その横で、じゃがいもを蒸す。
人参の味見をする。
高松「うん、これくらいだろ。」
コンロから下げて冷ます。
空いたコンロに水の入った小さめの鍋を置く。
出汁を使ったことがないので出汁の素を使う。
その鍋に、小口切りをした長ネギとわかめを入れる。
やることがなくなってきたため洗い物をする。
高松「あ、じゃがいも。」
蒸しているじゃがいもの様子を見る。
竹串で刺す。
高松「これくらいだな。」
時間もあと30分ある。
これも少し冷ます。
高松「よし、やるか。」
メインを作る。
寝かせたタネを掌より少し小さめに作る。
出来るだけ空気を抜くように叩く。
隣で沸騰している小鍋の火を緩めながら、フライパンにバターを多めに置く。
その小鍋に味噌を溶かす。
バターが溶けたら、そのタネを焼く。
ジュー!と肉の焼ける音が響く。
平手「いい匂い・・・」
高松「もう少しでできるから。」
焼けたタネを皿に盛る。
そのフライパンに料理酒を先に入れアルコールを飛ばして、ケチャップと中濃ソースを入れ、ソースを作る。
高松「よし。」
できた物を皿に盛る。
米は、あらかじめ炊いていた。
高松「はい、高松特製のハンバーグ定食だ。」
平手「おぉ・・・」
女の子ってこともあり、少し小さめにハンバーグを作った。
そのハンバーグの皿には、人参のグラッセと粉吹き芋を添えている。
平手「いただきます。」
箸を取ってハンバーグを食べる。
ゆっくり噛んで味わっている。
俺は、少し緊張している・・・
平手「・・・」
沈黙している。
また箸を伸ばす。
それを繰り返している。
平手「・・・ふっ。」
微笑んだ。
平手「ごちそうさま。」
高松「お粗末様。どう?」
平手「美味しかったよ。」
そのまま笑顔になった。
高松「いい笑顔するじゃねぇーか。」
平手「え?あ・・・」
高松「またうちに来いよ。俺じゃないけど、うまい飯いっぱい出してやるよ。」
平手「うん、でも君に作って欲しいな。」
高松「ん〜、今は難しいな。まぁ、気軽にきてくれよ。」
平手「わかった。」
携帯が鳴る。
平手「迎えが来たみたい。」
高松「そのままでいいぞ。」
平手「わかった。」
平手は、扉まで行く。
平手「またね。」
高松「いつでもお越しください。」
平手「それと・・・」
高松「ん?」
平手「ありがとう。」
高松「・・・お、おう。」
平手は、出て行った。
高松「よし、片付けっと。」
笑顔になってくれてよかったと思っている。
無言で食べ続けていたから、物凄く不安だった。
でも、最後に微笑んだ時は、心のなかでガッツポーズができた。
高松「あのまま、笑顔で居続けてくれたらいいな〜。」
その前に厨房に立てるかどうかだな。

満腹定食 ( 2021/10/20(水) 22:59 )