親心
高松「・・・」
俺は、いつも通り厨房に立っている。
でもこのまま厨房に立っていいのかと思い始めている。
市村「高松さん。」
高松「お、お?どうした?」
市村「すいません。これのやり方が、わからなくて・・・」
高松「あ、あぁ。それか。これは、こうやってこうだな。」
市村「ありがとうございます。」
高松「おぉ、ゆっくりでいいからな。」
市村「はい。」
丸岡と市村が交代で入ってくれるから、店は少し回せている。
2人とも入れない時もあるけど、その時は俺が頑張るしかないが、こうやって人がいると助かるもんだな。
角田「かんぼう、だし巻き頼むわ。」
高松「へい。」
〜〜〜〜
ジャー!!
高松「・・・」
皿を洗っている。
周りも静かになるし、落ち着いてられる。
唯一幻聴と考え事しなくていい時間だ。
高松「・・・」
市村「お疲れ様でした。お先に失礼します。」
角田「お疲れ〜!」
白村「お疲れ。気をつけて帰れよ。」
市村「はい。」
高松「・・・」
市村「え、あの、高松さん?」
角田「いや、大丈夫だ。そのままにしておいてやれ。」
市村「あ、はい。」
白村「かんぼうは、今成長のために考えているんだよ。」
市村「そ、そうなんですか?」
白村「あぁ。市もそのうちわかるさ。」
市村「あ、はい。では、失礼します。」
〜〜〜〜
高松「・・・」
俺は、まだ厨房にいる。
俺は、手を見つめている。
そう、人を死に追いやった手だ。
何も言わずに生きていくのか、告白して関わってきた人間を避けされるか。
どうすればいい案なのかわからない。
白村「おい、まだ悩んでいるのか?」
高松「あ、白村。」
白村「ほら、やるよ。」
缶のカフェオレをもらう。
蓋を開けて少し飲む。
白村は、ブラックコーヒーを飲んでいる。
高松「あ、ありがとう。」
白村「どうしたんだ?最近ずっと暗いぞ。」
高松「い、いや・・・うん。」
白村「言えないか?」
高松「まだ言えない。」
白村「そうか・・・それは、俺や康太にも言えないのか?」
高松「・・・そうだな。俺は・・・」
白村「怖いんだろ。」
高松「・・・」
白村「俺もその怖さを知っているぞ。」
高松「え?」
白村「俺もお前みたいじゃないけど、やんちゃしてたんだよ。それである時、やらかしてその時の店長を殴っちまってよ。」
高松「・・・」
白村「それから店をやめて、ぶらぶら歩いてた時に、大将が修行してた店に入ったんだよ。それで、大将に拾われてここにいるんだよ。」
高松「そうだったんだな。」
白村「そうだな。それに言いたくないことは、誰にだってあるんだぞ。康太も普段はふざけているけど、あいつにも俺たちに言えないことがあるんだぞ。」
高松「・・・」
白村「大丈夫だ。その言える時が来たらでいい。今は、仕事に集中しろ。いいな?」
高松「・・・わかった。」
白村「じゃ、早く寝ろよ。」
白村は、そのまま帰っていく。
俺は、残っているカフェオレを飲み干して、厨房の電気を消す。
俺には、まだ言える覚悟がない。
けど、それでも前に進むことはできるとわかった。
明日からどうにか頑張るぞ。