元不良見習いの奮闘記







































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第27章 大人への決意
似て似つかない
病院
ドタドタ!ドタドタ!
高松「ひ、平手!!」
「こ、こら!安静にって言われただろ!」
平手「い、嫌だ!!まだやれる!!」
高松「・・・平手?」
平手「あ、高松。なんでいるの?」
高松「スタッフから呼び出されたんだよ。安静にしろ。俺だって入院した時は、安静にしてたぞ。」
平手「高松がそう言うなら・・・」
外見は何もなさそうだが・・・
高松「平手の怪我の状態は?」
「えっと、腰部打撲・左仙腸関節捻挫による仙腸関節不安定症、両手関節捻挫による遠位橈尺関節痛の診断を受けたよ。」
高松「・・・え?」
念仏を唱えているのかと思った。
「あ、ごめん。わからないよね。えっと、腰はぎっくり腰みたいな状態なんだよ。あと、言葉の通りだね。」
高松「そ、そうか・・・」
聞いているだけで、酷い状態だ。
よくそんな状態で、踊ろうとしていたと思う。
高松「・・・」
平手「高松?」
高松「あ?」
平手「こっちきて。スタッフさん、席外してもらっていいですか?」
「いいぞ。そのかわり安静にな。」
平手「は〜い。」
スタッフは、離れていく。
高松「・・・」
平手「悲しい顔をしないでよ。私のせいなんだから。」
高松「だけどよ、そんな状態で踊るのか?」
平手「私は、あの中にいないといけないの。だから、踊る。」
高松「・・・」
欅坂は、平手ありきのチームだ。
そのリーダー的な平手が、いなくなるのは相当痛手だろう。
だが、腰はいつ爆発してもおかしくない。
高松「俺は、やめといた方がいいと思う。」
平手「・・・」
高松「確かに、お前が踊って歌うところは見たい。だが、そんな状態で踊って、その後のことを考えると、今は安静・・・」
平手「わかってるよ。」
高松「え?」
平手「そんなの、わかってるよ。けど、私は、あの中で踊るの。」
高松「・・・」
最初、話した時は似ていると思っていた。
だけど、こうやって話し合うとやっぱり違った。
平手は、どこまでも上を目指していた。
俺は、平手のことを見ると何もないと感じてしまう。
そりゃ、飯を作ってお客に喜んでもらうを第一に考えて、その中で試行錯誤してたつもりだ。
だけど、違った。
俺は、ただの凡人で人殺しをした人間というレッテルを貼られたような気がする。
高松「・・・」
平手「高松?どうしたの?」
高松「あ、い、いや。どうやってお前を止めようかなって。」
平手「本当にそう思ってる?」
高松「あ、あぁ。そうじゃないとお前は止められないからな。」
平手「・・・」
高松「どうした?」
平手「ねぇ、高松?」
高松「ん?」
平手「何を隠しているの?」
高松「・・・え?」
平手「それに芽実からも聞いたけど、何も話さないけど、何を隠しているの?」
高松「・・・言えねぇーよ。」
平手「どうして?」
高松「お前らと俺との間に溝が深く入るからだ。」
平手「なんでよ。色々話してくれたじゃん。」
高松「すまんが、言えねぇ。時間もあるからそろそろ帰るわ。じゃーな。」
平手「え、あ!高松!!」
平手が見た高松の背中は、何かを背負っている感じがした。
それも重たいものだ。
高松「・・・」
俺は、どうすればいいんだ。
俺は、何もないのか。
誰も教えてくれないし、どうすることもできない。
平手を見ると尚更だ。
俺には、何があるんだ?

満腹定食 ( 2022/01/12(水) 16:17 )