新人警察官は駆け上がる





































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第19章 その光を戻すために
眩しい存在
あれから4日経ってまた夜勤明け。
たまたま某有名音楽番組を見ている。
日向坂46が出るから小坂さんもテレビを見ている。
俺も距離を取ってソファーに座る。
『菜緒〜!見てる〜!』
小坂さんが休んでいることに対して呼びかけている。
小坂さんを見ると嬉しそうな感じと悔しそうな感じがする。
津田「あそこに戻りたい?」
小坂「あ、はい。戻りたいです。みんなが待ってくれてますから。」
津田「そうか・・・」
会話が続かない。いや、続けられない。
続けていたら、思ってもないことを言ってしまいそうだ。
小坂「1ついいですか?」
津田「ん?」
小坂「津田さんは、私のことどう思っていますか?」
津田「あ〜、話しか聞いたことないけど、すごいものを背負っている最年少ピッチャーって感じだな。」
小坂「どう言うことですか?」
津田「高校生から、卓越した才能を持っていてあらゆる賞を取れって監督から言われているイメージってこと。」
小坂「なるほど・・・」
津田「正直な話、俺は、乃木坂と櫻坂しか見ていないからそんな感じなんだよ。だから、周りから帰る場所があるのはいいなって思えるんだわ。」
小坂「津田さんは、そんな経験はありますか?」
津田「ない。俺は、その場所も用意されてなかったから、その場所を目指して必死になった。」
小坂「そのあとどうなったんですか?」
津田「オーバーロードしていたのか、気づいたら膝を壊していた。俺は、そこから諦めること以外選択肢がなくなった。もちろん、違う選択肢を見つける可能性はあったと思うが、俺は諦めた。今までの積み上げてきたものを全部投げ捨てて。」
小坂「・・・」
津田「それもあるから、小坂さんに心ない言葉を投げつけてしまう可能性がある。だから、最低限の会話しかしていない。たぶん前に来ていた子の印象も悪いと思う。だけど、小坂さんのことが嫌いではない。それだけはわかってくれ。」
小坂「津田さん。」
津田「ん?」
小坂「悔しかったですか?」
津田「悔しかった。だから落ちぶれた。酒に溺れ、暴れて何もかも嫌になった。屑みたいな生活していたわ。」
小坂「そのあとは?」
津田「一応俺にも仲間がいたから、そいつらに助けてもらった。だから今の生活がある。」
小坂「・・・」
津田「まぁ、俺が小坂さんにあんまり話さないってことは、嫉妬しているんだろうな。」
小坂「そうなんですか?」
津田「あぁ、裏で相当な努力しているのはわかっているつもりだ。それもあって小坂さんは、今の生活をしている。俺は、努力が実らなかった人間だ。見てて眩しいし、羨ましいんだよ。今の状況で言うことじゃないんだけどな。」
小坂「・・・」
津田「それに、日向坂46もそうだな。眩しいよ。どこ行っても実力社会だ。蹴落として蹴落とされて、潰して潰されて、そんな所ばかりだ。それをなくして、誰も見捨てないって言うのは、この世の中では綺麗事だ。だけど、今はそれをやり遂げている。見てて羨ましいんだよ。」
小坂「・・・」
津田「あ、すまん。小坂さん。あんたのことを嫌っていないことだけは、わかってくれ。寝るわ。」
小坂「おやすみなさい。」
俺は、自分の部屋に戻る。
あれ以上話を続けてしまうと、諦めてもいいって言ってしまうところだった。
俺は、嫌な人間だな。

■筆者メッセージ
この章は、主人公の負の部分が多くなると思いますが、見てくれたらありがたいです。
満腹定食 ( 2021/06/28(月) 22:56 )