新人警察官は駆け上がる





































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第19章 その光を戻すために
諦めた人間
杉山「暇だな。」
津田「そうだな。静かだな。」
程よい田舎なのかめちゃくちゃ静かだ。
その静けさは、乃木坂区の交番にいた時よりだ。
杉山「そろそろパトロール行くか。」
津田「戸締りするわ。あと、帰りにコンビニに寄ってくれ。」
杉山「いいぞ。男気で。」
津田「やるか。ボケ。」
〜〜〜〜
小坂side
「菜緒、大丈夫?」
小坂「大丈夫だよ。美玖。それになんだが身体の調子もいいよ。」
金村「それならいいんだけど。それと男の人と同居しているって聞いているんだけど、それって・・・」
小坂「本当だよ。けど、何もないから安心して。」
金村「よかった〜。けど、どんな人?」
小坂「う〜ん、まだわからない。」
金村「なんで?」
小坂「あんまり話さないし、けどご飯は作ってくれる。体調は気遣ってくれるけど、無愛想なんだよね。」
金村「恥ずかしがっているわけじゃないの?」
小坂「ううん、ここに来てずっと。微笑むけど笑顔とか見たことないかも。」
金村「なんか怖いね。」
小坂「でも、何もしてこないから大丈夫だと思うよ。」
金村「それだったらいいね。」
〜〜〜〜
津田「でぃ!くっしゅん!」
杉山「なんだ?花粉症か?」
津田「いや、そんなはずはないんだけどな。うわ、書類書き直しだよ。」
杉山「おつかれ〜。あ、津田。」
津田「ん?」
杉山「親の誕生日に酒送りたいだけど、何かいいのないか?」
津田「そうだな〜。今は案はないから次の出勤までに決めとくわ。」
杉山「すまん。まじ助かる。」
津田「まぁ、いいさ。その代わりメロンくれよ。」
杉山の実家はメロン農家で売り物にならないメロンをくれる。
この間もメロン2玉を4人で食った。
杉山「あぁ、いいぜ!いっぱいあるからな!」
〜〜〜〜
津田「ただいま〜。ふぁ〜。」
小坂「お帰りなさい。」
津田「起きてたのか?飯は?」
小坂「私が作ります。」
津田「そうか。俺は、シャワー浴びて寝るわ。」
小坂「おやすみなさい。」
自分の部屋に戻ろうとする。
津田「ふぁ〜。あ、小坂さんのお友達?どうも。」
金村「あ、どうも。」
津田「ゆっくりしてな。俺は寝るけど。」
金村「お気遣いありがとうございます。」
着替えを持って風呂場に行く。
金村「真面目そうだね。けど、顔が怖いね。」
小坂「そうなんだよね。なんでやろう?」
聞こえている。
なぜ、俺は必要最低限の会話で済ませているのか。
俺が、小坂さんに何か言うと小坂さん自身を崩してしまう可能性があると思ったからだ。
え?どういうことか?
ストレートに言うと、仕事辞めてもいいんじゃないかって言ってしまう可能性があるってことだ。
俺は諦めた人間だから、簡単に言ってしまう気がしてならないのだ。
小坂さんが引っ越しする前に日向坂46について橋本さんに聞いた。
個々の力もあるが団結力が強いグループで、誰も見捨てないと言うアニメみたいなことを言っているグループだと俺は解釈した。
津田「そんな綺麗事を言えるほど、世の中は甘くねぇーよ。」
シャワーを浴びながら、こう呟く。
だから俺は小坂さんと話す時は、最低限の会話で済ましている。

満腹定食 ( 2021/06/28(月) 21:00 )