新人警察官は駆け上がる





































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第1章 関西娘は愛が足りん!
始まり
津田「で、特徴は?」
「黒のスエットを着てました。身長は175くらいですね。それから携帯で写真を撮ってました。」
津田「それ以外は?」
「ないですね〜。顔もマスクとフードしてあまり・・・お役に立てず、すいません。」
津田「いえ、ご協力ありがとうございます。」
最近になって、不審者の目撃情報が多く寄せられている。
それにその情報もほぼ同じ内容で同一人物だと確定しているが、誰も顔を見たことがない。
津田「こちら、津田。不審者の目撃情報を貰いましたが、前と同じです。応答どうぞ。」
『ジッ!了解、勤務に戻るように。』
津田「了解。」
自転車に乗り、パトロールを再開する。
ーーーー
キキィー!ガシャン!
津田「津田巡査!ただいま、パトロールから戻って参りました!」
「お疲れ〜、そんな固くやらなくていいぞ〜。」
この人は、北村和也。俺の3年先輩だ。
北村「本当にお前は、真面目だな。」
津田「そんなことないですよ。報告書をまとめますね。」
北村「けど、何にもなかっただろ?不審者の目撃以外は。」
津田「不審者がいることがあかんことなんですから、自分達も気を引き締めましょう。何かが起きてから遅いんですから。」
北村「はぁ〜、真面目だね〜。融通の効く後輩が欲しかったわ〜。」
津田「嫌味っすよね?」
北村「別に〜、仕事、仕事〜」
ーーーー
時間も経ち、現在21時30分。
北村さんは、日勤なので18時上がっている。
俺は、夜勤なので次の日の朝9時まで仕事である。
今所属している交番は、中心街より少し離れた所に建てられている。
そのため夜は静かだ。
「応援に来たぞ〜。」
津田「お疲れ様です。駒田さん。」
駒田浩和。ベテラン警察官で俺が夜勤に入っている時は、必ずこの人が来る。
駒田「お疲れさん。で、何も起きてないよな?」
津田「今のところはないです。」
駒田「そうか。しかし、この街の不審者が出てしまってるから気を張り詰めてしまうな。」
津田「はい。ですが、北村は相変わらずです。」
駒田「ハハ、それが北村のいいところだよ。津田は、もう少し柔らかくてもいいと思うがな。」
津田「???」
「キャーーー!!!」
静かな夜に悲鳴が響く。
駒田「津田!」
津田「はい!!」
悲鳴がした現場へ走る。
ーーーー
現場に急行すると、女性が腕を掴まれて抵抗している。
津田「そこ!!何をしている!!」
走りながら、声をあげる。
こっちに目を向けて、犯人は逃げていく。
津田「待てっ!!駒田さん!女性を!!」
駒田「わかった!君!大丈夫か?!」
走って追いかける。
黒の上下のスエット、身長175くらい。
目撃情報と同じ人物だ。
津田「止まれ!!」
と言っても止まることなく、犯人は逃走する。
逃げ切らないと思ったのか、犯人は近くあった自転車やゴミ箱を薙ぎ倒し、俺の行手を阻む。
津田「あぶっ!待て!!」
少し距離をあけられる。その距離は縮むことなく、見通しの悪い交差点を右に曲がった所を見て、犯人は姿を消した。
その場所は、街頭は少なく先は真っ暗に近い。
津田「こちら、津田。犯人を逃しました。どうぞ。」
駒田『こちら、駒田。女性に外傷はなし。一旦警察署に応援を要請する。津田、戻ってこい。』
津田「了解。どうぞ。」
俺は、女性が襲われた現場に戻る。
ーーーー
現場に戻り、駒田さんに報告する。
津田「すいません。捕まえることができませんでした。」
駒田「こればかりは仕方ない。報告は、俺が上に言っておく。」
津田「わかりました。」
「あの〜。」
襲われた女性が、声をかけてくる。
「助けていただきありがとうございます。私は、これからどうなりますか?」
少し関西訛りが入っている。
津田「これから警察署へ行ってもらいます。そこで、起きたことを話してもいます。」
「そうなんですね。あと、私はまた襲われてたりしますか?」
駒田「そんなことをさせないためにパトロールを強化してあなたと住民の安全を守ります。」
「そうですよね。このことマネージャーに伝えてもいいですか?」
駒田「親御さんは?」
「今、離れて暮らしてて。今日も仕事帰りで。」
駒田「わかりました。これから警察署に行くのでそこで迎えに来てもらってください。」
「わかりました。」
女性は携帯を取り出し、連絡を取る。
駒田「芸能人の方か?津田、お前わかるか?」
津田「知りません。テレビはあまり見てこなかったので。」
確かに、顔は綺麗でかわいい。
モデルさんかタレントさんなんだろう。
「すいません。これから向かってくるそうです。」
駒田「わかりました。ちょうどパトカーも来ましたし、送ってもらいましょう。津田、同行しろ。」
津田「あ、はい。では、参りましょう。」
俺はパトカーに乗り、女性と警察署に向かう。
「すいません。お名前なんて言うんですか?」
津田「津田と言いますが?」
「津田さんですね。私、早川聖来って言います。本当にありがとうございます。」
津田「いえいえ、当然の義務です。」
早川「すいません。少し身体寄せてもいいですか?」
津田「え?」
これが彼女との出会いだった。
早川さんは、俺の肩に頭を乗せる。
俺は、めちゃくちゃドキドキした。

満腹定食 ( 2021/04/22(木) 11:16 )