新人警察官は駆け上がる





































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第12章 俺の身体はビールで出来ている
自分に合った酒とペースを選べ
菅井さんから連絡があり、苦味が強いビールを用意して欲しいと頼まれた。
理由を聞くと、もっと酒の楽しみ方を知りたい人がいるってことだったらしい。
念のために甘い酒も用意する。
大人びて度数が強い酒を飲むのは、後々後悔するってことも教えるか。
津田「つまみは、何するか。」
ビールもそうだが、料理もうまく感じるようにフードペアリングを考える。
やっぱり無難に肉か?
魚もなかなか高いしな〜。
津田「ん〜。」
ピンポーン
津田「お?誰だ?」
扉を開けると久々に会う人がいた。
津田「あ!魚屋のおっちゃん!どないしたんや?」
乃木坂区の商店街で店を構えている魚屋のおっちゃん。
いつもいい魚を仕入れているから頼りにしていた。
魚屋「お〜!おまわり!いや〜、仕事でこっちにきたんやけど2匹だけ残っちまって・・・それも店側に断られよ。」
津田「あちゃ〜、おっちゃんの目利きならいつもいい魚仕入れてるやん?」
魚屋「それが運んでいる最中に傷が入っちまって・・・」
津田「うわ〜、不運やな。」
魚屋「それでよ、お前さんがこの近辺に住んでいるって聞いたから、来っちゃったわけよ。」
津田「マジか!おっちゃん、ありがとう!」
魚屋「礼を言うのはこっちの方だよ。それでよ半額でどうだ?こいつなんだか。」
津田「うお?!マジ?」
魚屋「あったりめぇーよ!」
津田「買った!」
魚屋「毎度あり!!」
〜〜〜〜
津田「ふふ〜ん。いい日だ〜。」
魚屋のおっちゃんからマジでいい物を買った。これで料理に合わせるビールが決まった。
そろそろ来るか?
ピンポーン
津田「来た来た、はぁ〜い!」
扉を開けると菅井さんではなく渡邉さんと少し子どもみたいな女性が立っていた。
津田「あれ?渡邉さん?」
理佐「ごめんね。友香は、仕事入っちゃって・・・」
津田「あぁ〜、それはしゃーないですね。で、隣の女性は?」
「はい、原田葵です。美味しいお酒を選んでくれるって、ゆっかーから聞いて来ました。理佐も来たことあるんだよね?」
理佐「そうだよ。本当に美味しいんだよ。」
津田「では、お入りください。」
リビングに案内する。
理佐「え?すご〜い!鯛?」
津田「えぇ、いいのが入ったんですよ。」
魚屋のおっちゃんから買い取ったのは傷の入った鯛。
40センチくらいだな。
それをカルパッチョと刺身、バター焼きにしたのだ。
津田「で、メインはこれですね。」
原田「わぁ〜!!すご〜い!!」
鯛1匹まるまる使ったアクアパッツァ。
しじみやプチトマトを入れている。
理佐「いいわね〜、ビールは何があるの?」
津田「えぇ〜と、キレかコクかですね。」
理佐「私はキレで。葵は、苦いビールが飲みたいのよね?」
原田「うん、飲んでみたいの。」
津田「それじゃ、コクだな。」
理佐さんに出すのは、大雪地ビール 大雪ピルスナー。
下面発酵という発酵方法で長期熟成させ、キレを出す為にろ過しています。 厳選モルト100%で仕上げた、会社を代表するビール。
原田さんに飲んでもらうビールは、湖畔の杜ビール 味わい天涯Ⓡ。
前にも出したので説明は短め、コクがあり口当たりのいいビールだ。
色も濃いので苦味も強い。
津田「はい、どうぞ。」
理佐「いただきます。あ、スッキリしている〜。」
原田「ん〜、苦〜い。」
津田「苦みが強いビールは初めて?」
原田「うん、アサヒとサッポロしかないよ。」
津田「それしか飲んだことないならこのビールは苦いかも。それでも飲みます?」
原田「飲む。みんなみたいに飲みたい。」
やっぱ、人に合わせて飲もうとしていたか。
津田「俺から忠告ですね。今回は、俺の部屋でいいですけど、人と合わせて飲むは、あまり進めません。それに酒も合わせるのも良くないですね。」
原田「え?」
津田「自分に合う酒を飲んで、自分のペースで飲まないと色々と壊れてしまうってことですよ。」
原田「むぅ〜。」
津田「子供扱いされるのは嫌だと思いますが、ちょびちょびでいいんで、そこから自分に合う酒を飲んでください。」
理佐「ほら、言ったじゃん。甘くてそんなに強くないお酒ってあります?」
津田「ありますよ。先に料理を楽しんでください。」
原田「あ、美味しい!」
次に飲んでもらうのは、だいぶ前に出した小林酒造本店の沖縄んブルー。
リスイエローの青いバージョンだな。
津田「はい、ブルーサワー。」
原田「あお〜い!」
理佐「津田さん、これって偶然?」
津田「そうですよ。黄色と赤は飲んだことあるんで青にしました。」
原田「甘〜い!」
津田「それも度数強いですけど、そこからちょびちょび強くしていってくださいね。」
原田「は〜い!」
子供だな。
けど、物分かりが言い分まだマシか。
酒は、自分に合わせて飲むもの。
相手に合わせてると後々しんどくなる。
それをわかってもらえるならありがたいな。

満腹定食 ( 2021/06/13(日) 09:47 )