第6章
06
「ただいま。」
「おかえり、楽しかった?」
「まあね。卒業式前の最後のイベントみたいな感じだったし。」
「優希もいよいよ卒業かぁ。」
「まだ実感はそんなにないんだけどね。」
「あんた、卒業式の日爆泣きだけは止しなさいよ?」
「泣かないよ。てか、姉ちゃん行く気なの?」
「丁度休みだし。優希の最後の晴れ姿見たいしね。」
「マジかよ…」

優希は家に着いて早々落ち込んだ。姉には卒業式に来て欲しくなかった。これといった理由はないが…

「あれ、美音は…」
「お兄ちゃん…」
「あら…出て来た?」
「ん?出て来たってどういうこと?」
「例の件よ。」
「例の件…あぁ、美音すまない。」
「何でずっと隠してたの?」
「隠してたって…それは単純に、お前に言ったら泣くかなって…」
「………」
「美音ちゃんごめんね。私が優ちゃんに無理言っちゃったから…美音ちゃんのこと考えてなくて…」
「うぅ…」
「父さんどうしよ?」
「まぁ…優希が決めたことだし、俺も母さんも美音が落ち込むのはわかってたし…」

優希と美桜がカラオケ大会に行ってる間に、どうやら美音に言ったようだ。優希も悠太らに先程伝えた為、帰って早々に言おうと思っていた。

「お兄ちゃん…私の最後のお願い…」
「お願いってなんだ?」
「私とデートして?」
「で…デート!?」
「お兄ちゃん卒業したら福岡行くんでしょ?だから、私と2人きりでデートしたいの。」
「デートってなぁ…」
「それがダメなら福岡もダメだから。」
「ちょっと待てよ、勝手に決めるなよ。」
「まぁまぁ、優希そういうことだ。」
「う〜ん…わかった。けど、俺卒業したら悠太ら皆んなと卒業旅行行くから、デートは帰って来てからな。」
「約束だからね?破ったら承知しないから。」

そう言うと美音は上に上がって行った。

「優ちゃんとんでもない約束しちゃったね。」
「ああなると美音はややこしいんだよ。」
「そうだ優希、旅行先は決めたのか?」
「いや、まだ決めてないけど…てか、何で?」
「ほらよ、行って来い皆んなで。」
「え…父さん何これ?まさか、予約したの?」
「前に言ったろ?お前には散々迷惑かけたから、最後ぐらいゆっくりさせないとな。」
「ありがと父さん。母さんも。」
「いいえ。」
「ちょっと優希、私にはないの?」
「姉ちゃん何もしてないでしょ?」
「失礼ね、旅行先決めたのは私なんだから。そんなこと言うんだったらキャンセルするわよ?」
「それは嫌。姉ちゃんごめん。」

旅行先まで両親と義姉が決めてくれていた。その後、優希と美桜は部屋に入り寛いでいた。

「これで優ちゃん皆んなに言えた?」
「何とかな。」
「優ちゃん…卒業だね。私も見に行くから。」
「何でだよ?姉ちゃんと美桜は…」
「もしかして泣く姿見られたくないの?」
「違うわ。」
「優ちゃん絶対泣くと思う。」
「変なこと言うなよ。」
「泣くに私は一票!」
「はいはい、さあて卒業式の準備でもするかなぁ…」
「ハンカチとティッシュも忘れないとね。」
「俺は泣く前提かよ、絶対泣かないから。」
「意地張っちゃって。」
「うるせー。」

優希は卒業式で泣くのか?それはともあれ、間も無く優希は卒業式を迎える、高校生活がいよいよ終わる。

■筆者メッセージ
さぁ…優希君達いよいよ卒業です。
夜明け前 ( 2018/11/11(日) 17:45 )