第5章
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「ねぇ、お兄ちゃんもうすぐ卒業じゃん。」
「そうだな。」
「お兄ちゃん、教科書とか貸してよ。私、お兄ちゃんと同じ学校行くから。」
「いいけど、まだ美音来年じゃん。今貸さなくてもいいんじゃない?」
「お兄ちゃん忘れがちだから、先に貰っとかないと忘れるでしょ?」
「忘れがちってなぁ…」

美桜とデートを終えた優希は、家に着いて早々美音から教科書等貸してと言われた。どうも美音は優希が通ってた学校に今年受けるらしい…だが、受かってもないのに、先に教科書を渡しといていいのか?

「仮に滑ったらどうすんだよ?持ってる意味ないよ?」
「いいから貸して。お兄ちゃんいちいちうるさいぞ。」
「受かってもないのに…いいや、はいよ。その代わり、『お兄ちゃん、滑ったから教科書返す。』とかなしな?」
「滑んないもん!お兄ちゃん、私を甘く見過ぎだよ。私は本番に強いんだから!」
「そうですか…」

どこからの自信かわかんないが、美音は胸を張った。優希は大丈夫か心配だ。

(自信満々だけど、ほんとに受かんのか?テストでいつも赤点ギリギリなのに…美音の将来が心配だなぁ。)

だが、優希にはもう1つの心配事がある。美音にいつ福岡住むことを言うべきか…

(どうしよかなぁ…多分泣くよな。逆に泣かなくても反対するか。まぁ…父さんと母さんは許してくれたから、美音1人が反対しても無理なんだけどさ…)

優希は迷いながら部屋を出た。

「優希、ちょっとこっち。」

父に手招きされ優希は向かった。

「美音にはまだ言ってないのか?」
「言いにくい…」
「そうだろうな…優希、無理して言うことはない。なんだったら父さんが代わりに言うし…」
「うん。無理だったら頼むよ、父さん。」
「まだ焦らなくても…って、そういうわけにはいかないか。ま…フォローはするから安心しな。」
「ありがと父さん。あ、明日さ悠太らとカラオケ行くから。」
「そうか。楽しんで来いよ。」

父にそう言うと、優希はまた部屋に戻った。

夜明け前 ( 2018/08/30(木) 17:41 )