美しい桜と音-3学期編- - 第3章
09
「ん…んん?ここは…」

岡田は目を覚ました。自分は今どこにいるのだろうか?

「気付いたか?」
「ん…向井地?」
「そのまま寝とけ、すぐ起き上がったら倒れるぞ?」
「私は一体…」
「あの男らに襲われたんだろ?」
「そうだ…でも、何故向井地知ってる?」
「何でって、白間がたまたまお前が拉致されてくとこ見たみたいでよ。助けたい本心が強かったから助けに行ったんだよ。でも、俺らが到着した時はお前…意識なかったけどな。」
「美瑠…」
「あいつ言ってた、書記だったんだな白間。」

実は岡田を助けに行く途中で、白間は優希に話していた。

「向井地君。」
「ん?」
「実は私ね、元生徒会の書記だったの。」
「そうなのか?そうか、だから助けに行きたいって言ったのはそれか。」
「うん。同じクラスだし元生徒会メンバーだし…岡田さんが心配だから。」
「なるほどな。」

白間は岡田を助けたい気持ちが誰よりも強かった。始め助けに行こうとしなかった優希を説得したのだから。

「白間は誰よりもお前を助けたい気持ちが強かったんだな。」
「美瑠…」
「礼は白間に言えよ。」
「そんなもん、言われなくたってわかる。でも、向井地らも私を助けに…って向井地、その傷は?」
「大した傷じゃねえよ。」
「まさか私のために…」
「まぁ…行ったからには、お前を救出しないとな。」
「ありがと。」
「別に。」

なんて話をしていると、上西先生が入って来た。

「あら、2人とも起きた?はい、奈々ちゃん。」
「私の制服…」
「すごく汚れてたから洗ってきたの。」
「でも先生、そんな短時間で乾きます?」
「洗った後すぐ乾燥機行ったから大丈夫よ。」
「なるほど…」
「それより優希君も、ずっと災難続きね。」
「そうですかね…なんか、それが日常茶飯事になってますけど。」
「あらら…」
「じゃ先生、俺帰ります。」
「向井地帰るのか?」
「先生来るまで待ってただけだし。それにこんな時間だからよ、明日もあるし帰る。」

優希の言う通り時計は既に夕方だった。とっくに帰る時間だった。

「じゃあな岡田、気を付けて…」
「優希君、まだ奈々ちゃん本調子じゃないから、一緒に帰ってあげなよ。」
「え…いや、もう大丈夫でしょ?」
「もし帰りにまた襲われたらどうするの?」
「どうするって…先生が岡田の家まで送ってけば…」
「今日はだめよ。これからさや姉とご飯食べに行くんだから…」
「はぁ…わかりました。一緒に帰ればいいんですよね?岡田、昇降口で待ってるから早よ来いよ。」
「お…おう、わかった。」

優希は保健室を出た。岡田は制服に着替えた。着替えてる間、上西先生は岡田に話した。

「上手くいった。」
「え?」
「まんまと優希君、私の口車に乗せられたね。」
「まさか先生…ご飯食べに行くのは嘘?」
「そう。ほんとは私が送ってけばいいんだけど、まだ私やらなきゃいけないことあるから、優希君に頼もって思ったの。」
「向井地聞いてたら多分怒ると思いますよ?」
「ううん…優希君そう言って結構面倒見いいからね。だから、お兄ちゃんの鏡なんだよね。」
「向井地ってお兄ちゃんなんですか?」
「そうだよ。詳しく聞きたいなら、ここじゃなくて直接聞きな。ほら、早くしないと優希君待たせてるよ?」
「先生…ありがとうございました。」
「気を付けてね。優希君にはさっきの話内緒よ?」
「わかりました。」

岡田も保健室を後にした。

「さあてと、茶々っと済ませて帰ろっと。」

そう言いながら上西先生は用事を片付け始めた。

夜明け前 ( 2018/06/25(月) 19:53 )