第2章
07
次の日、優希と尚はまた病院にいた。尚の母親の手術の日だった。優希と尚はまだ出校停止の解除はされていないので、病院に行くことにしたのだ。

「母さん…大丈夫かなぁ。」
「ほんとだな。上手く摘出されたら良いけどな。」
「尚と優希君、これから母さん手術が始まるって。とりあえず、ここで待とうか。」

3人は手術室の前の椅子に座った。数分後、尚の母親が手術室に入った。入り際、尚は立ち上がり母親の側に駆け寄ろうとしたが、父親に止められた。そして手術が始まった。尚はそわそわして落ち着きがない。以前手術をした時は病院にはおらず、学校に行っていた。だから、母親が手術をしているのを見るのは今回が初めてだった。

「尚、少しは落ち着けよ。大丈夫だから。」
「落ち着けないよ。ほんとに完治出来るのか信用出来ないし…」
「確かにそうだが我慢するしかないだろ。」
「はぁ…」

その後も尚はそわそわし続けた。優希も尚を宥めたりしたが、尚は全く落ち着こうとしなかった。まだ手術は続いている。

「母さん…」
「全摘出だからなぁ…結構時間がかかるとは先生言ってたが…こんなに時間がかかるとはな。」
「俺までそわそわしてきた。」
「優希もか?」
「気になって仕方ない。」

そしてようやく…

「手術終わりました。転移もありませんし、癌は全て摘出しました。数週間ほど入院して、問題なければ退院出来ると思います。」
「よかった…」

安心したのか、尚は膝から崩れ落ちた。優希も笑みがこぼれた。

「よかったな尚。」
「うん。先生…ほんとに全摘出なんですよね?」
「大丈夫ですよ。ですが、無理な仕事はさせないでくださいね。」
「はい。」
「さ、優希君と尚は帰ってな。あまり長居しなくていい、後は父さんに任せなさい。」
「うん。優希帰るか、変な緊張で疲れた。」
「だな。じゃ、先帰ります。」

優希と尚は病院を後にし優希の家へ向かった。

夜明け前 ( 2018/03/28(水) 18:55 )