04
「いや〜寒い。新年1発目からこの寒さは身に応えるな〜、なぁ美桜。」
「………」
「あ…あれ?」
(聞こえてるよな?)
優希の質問に答えようとせず、ただ黙ったままの美桜に、優希は驚いた。
「み…美桜?」
「………」
(何で黙ってるんだ?)
「美桜…」
「優ちゃん…」
「な…何だ?」
ようやく口を開いた美桜から出てきた言葉に、優希は慌てた。
「なっちゃん達を見て見惚れてたでしょ?」
「え…」
(ば…バレてた?)
「やっぱ優ちゃんは可愛い子には、ずーっと見ちゃうんだ…悲しい。」
「いや…別に見惚れてなんか…」
「あ〜あ…彼女の前でそんなことするなんて…」
「だから美桜、俺は見惚れてなんか…」
「フンだ、じゃあね優ちゃん。」
「え…」
美桜はプイと怒ると先に帰ってしまった。優希は1人取り残され何も出来なかった。
(確かに見惚れてはいたけど、せめて俺の言い分ぐらい…と思ったけど、言い訳になるか。多分嫉妬だろ…そう思いたいんだけど…違うかな…)
自分の予想が合ってればいいが、もし違ってたらとなると少し心配だった。優希はそう思いながら家に到着した。既に先に帰っていた美桜は上に上がっていたようだ。リビングに入るやいなや、美桜の母親が心配そうに聞いた。
「美桜なんか不貞腐れてたけど…なんかあったの?」
「あぁ…まぁちょっと。」
「まさか別れるとか…」
「いや…多分ないと思いますけど…」
(別れるって…美桜が聞いてたらどうするんだよ。今俺の中では焦りしかないのに…)
ほんとに別れることになったらどうなるのだろうか?今の優希には全くわからなかった。
「まあまあ母さん、優希君に不安かけさせたらだめだろ。」
「でも、もしそうなったら…これからの予定が全部…」
「そうなったらそうなったで、現実を受け止めるしかないだろ。」
(お父さん…それ、俺をフォローしてるのか?俺にはちょっとプレッシャーかけてる気がするんだけど…)
もう一つ優希には心配ごとがあった。帰って来たのはいいが、居場所がなかった。美桜の部屋に入ったら美桜に何を言われるのかわからない…
(はぁ…マジで別れたらどうしよ。)
「おーっと、忘れてた忘れてた。優希には、今から父さん達旅行行くから。」
「今からって…」
「昨日言うの忘れてたんだよ。すまないが、2人で留守番頼むよ。」
「はあ…」
(2人でって…嫌味にしか聞こえない。)
そんなつもりで言ったわけではないのは優希はわかっていた。だが、今の状態からすれば、そう聞こえてもしょうがなかった。
「じゃあ優希君頼んだよ。」
「大丈夫、私は仲直り出来てるのを期待してるから。」
「はあ…」
(仲直り…まぁそうだよな。嫉妬してるってことは、俺に原因があるからだよな。)
美桜の両親を見送ると優希はリビングに戻った。