第1章
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ところで、悠太達とカラオケにいなかった尚と咲良はというと…2人でデートかと思いきや、2人とも一緒にはいなかった。尚は家にいた。1人ではない、今尚は…

「尚早くしなさい、3人でしたら早く済むから。」
「ちょっと休憩…」
「情けない、あんたそれでも男なの?」

そう、尚の家では大掃除をやっていた。勿論、悠太からお誘いはあった。だが、断るしかなかった。咲良とデートもしたかったが、咲良は咲良で都合がある。

(はぁ…冬休み入って早々大掃除かよ、優希は福岡で美桜ちゃんといちゃいちゃ、悠太らはカラオケで盛り上がってるのか。それに比べ俺は…コキ使われてる。参ったぜ、早く咲良ちゃんとデートしたいな…)
「尚!あんた手止まってる!早く早く、疲れてるのは母さんも父さんも一緒なの。」
「休憩させてよ…2人は休憩してるのに、俺は休憩無しじゃん。」
「つべこべ言わず、さっさと手を動かす。」
「なんだよ…」

鬼嫁ならぬ鬼母だ。そんなことなんか言えず、尚は渋々手を動かした。今頃みんなはそれぞれ楽しい冬休みを送ってるのに…自分だけ寂しい冬休みだ。

「ふぅ、終わったわね。尚ありがと。」
(全然思ってないくせに…いいや、やっと終わった。ああ…疲れた疲れた。)

ヘトヘトになりながら尚は部屋に戻った。咲良から電話が来てたが、出れる筈もなく、留守電が来てたので電話した。

《はーい、あ!尚君?電話いいの?》
「ごめんごめん、大掃除してたから出れなくて。」
《大掃除してたんだ。ごめんね、そんなんも知らずに電話しちゃって。》
「大丈夫だよ、それより何だった?」
《あのさ、クリスマスデートしよ?》
「勿論。デートの醍醐味だもんね。場所は追々決めよ?」
《うん。ごめんね、それだけ言いたかったの。また会おうね。》
「うん。」
(デートか、2学期一回しか行けなかったからな…この冬休みは行かないと。)

尚はウキウキしながら部屋を出ようとしたその時、突然母親が入って来た。

「か、母さん?」
「あんたさっき誰と電話してたの?」
「誰って…別に誰でもいいじゃん。」
「ちょっと携帯貸しなさい。」
「ちょっと母さん…」
「えーとさっきのは…ん?誰、この子?」
「べ…別に誰でもいいじゃん、母さんには関係ないから。」
「まさかあんた…彼女じゃないでしょうね。」
「それは…」

尚の目はしどろもどろだった。当然母親は見逃す訳がない。

「あんた…いい?学校卒業するまで、付き合ったらだめって言ったわよね?この子と別れなさい。」
「何で?付き合うのは自由じゃん、それに何でこの歳で、母さんの言うこと聞かなきゃだめなんだよ?」
「母さんにその言い方は何?父さんに言っておくから。」
「はあ?付き合って怒られるとか…」
(マジ腹立つ。)
「別れるか、父さんに怒られるか。どっちがいいの?」
「いつまでも俺を子供扱いすんなよ!」
「尚…あんた…」

尚の怒鳴り声に父親も駆けつけた。

「母さん一体…尚何をしたんだ?」
「うるせー、俺は息子じゃない。俺の好きにさせてくれよ!」
「お前…何を…」
「親父退けよ!もう…」
「ちょ、尚待て…」

追いかけようとしたが、もう遅かった。尚は何も持たずに家を出てしまった。

「母さん、何があったんだ?」
「………」

尚の家はピンチを迎えた。

■筆者メッセージ
まさかの展開を作りました。

光圀さん

こんなんにしましたが、どうですかね?意外でした?こんなんもありかなって思いまして。
夜明け前 ( 2017/09/21(木) 21:42 )