第2章
01
翌朝早く、真人はレコーディングのスタジオにいた。別に自分が歌う訳ではない。でも、何故か早く来てしまった。

(みなさん結構早く来るもんだと思ったけど、俺が早すぎたんか…昨日もそのせいで山本さんに疑われたんだよな…次から気を付けんと…)

ようやくメンバーたちが続々やってきた。その中には山本の姿もいた。真人にとって初めてのレコーディングの風景、それに思わず感動してしまった。

(やっぱ凄いな。生で見るのを全然違う。)

レコーディングが終わり、メンバーたちが戻って来る。

「あ、真人君オッは!」
「お…おはようございます…」
「真人君固すぎやって、気楽にいこうや気楽に。」
「はあ…」

一気に縮まった山本との距離、いいことだが急すぎて真人が付いていけてないのが現状だ。

「あれ?さや姉のマネージャーさん?」
「せやで。真人君や。」
「初めまして…」
「かっこいいな。うち渡辺美優紀、彩ちゃん羨ましいわ。」
(この人が渡辺さん…釣り師で有名の…はあ…)
「初めまして真人さん、薮下柊でーす。」
「よろしく…」
「ん?真人さんどないしたん?」
「えっ…いや別に…」
「真人君な、こんな感じやから。」
「そうなんや。あ、うちこれから仕事あるでまたね。」
「みるきーさんまたね。」
(俺ついさっきまで釣り師の渡辺さんと話してたんだよな…)
「おーい…真人君大丈夫か?」
「えっ…あ…はい。」
「意識とんでましたよ?」
「大丈夫です。」
「彩さん大変ですね。」
「そんなことないで、真人君頼りになるんやから…ね?」
「えっ…」

山本の顔がすごく近い。

(あわわ…これはやばい…山本さんの顔が近くに…はは…)
「ちょ…真人さん?」
「あかん失神してる。柊ちゃん一緒に楽屋まで連れて来てくれへん?」
「いいですよ。」
「真人君にあれは刺激ありすぎたかな…」

山本と薮下は失神してる真人を楽屋まで連れて行った。

夜明け前 ( 2015/12/06(日) 07:00 )