伊藤理々杏
台本少女A
僕は周りに人がいないことを確認して、急いで教室の中に飛び込んだ。何人たりとも僕がこの教室に入ったことを見られてはならない。それは僕の尊厳を守る為でもあり、"彼女"を守る為でもあった。



カビ臭い匂いが鼻を突き抜ける。僕は一瞬にして鼻呼吸を止め、匂いをシャットアウトした。ここは今は使われていない旧化学実験室。
暗幕は一つの光も通さないように固く閉じられ、廊下側の窓から差し込む僅かな光だけが教室全体を淡く照らしていた。
もう随分人が立ち入ってないのか、全体的に埃っぽい。陰気な雰囲気が漂い、壁の端に人体模型がその場に佇む光景は哀愁さえも感じられる。
人が使用しないだけでここまで風化するのだろうか。まるで時代を巻き戻したようなその有り様に思わず立ち尽くしてしまう。


「待ってたよ。ほら、こっち」


教室の奥から女子の声が響く。瞬間、何かを擦るような音がしたと思うと、ゆらゆらとか細い火の玉が現れた。まるで手を振るかのように火の玉は揺れる。僕はその火に向かって歩き出した。
火は下方に移動し、やがて何かに点火される。それがアルコールランプだというのは、この場所だからこそ分かったのかもしれない。
辺りが暖かみのある光に照らされる。頬を付きながらぼんやりと火を眺める君の姿も照らされる。


「何かアロマランプみたいじゃない? ムードでるかなって思って」


「そんな大層なものじゃないだろ」


「むう、細かい男は嫌われるんだぞ」


アルコールランプの火に照らされた君は口を尖らせ、立ち上がって僕との距離を詰める。
僕の肩を掴み、爪先を立てて口づけをしてくる君。プルンとした柔らかな唇が触れて数秒間、ゆらゆらと揺れるランプの火を見ていた。
君は唇を離すと、僕を見上げて


「今日は君から襲ってきてよ」


「注文はそれだけ?」


「う〜ん……じゃあ、できるだけ乱暴に」


「分かった」


僕は了承すると、突き飛ばすように壁際に君を追いやる。肩を掴み、壁に押し付けて唇を奪う。背の低い君は首を曲げないと届かなかった。強引に顎を上げさせ、舌を貪り食う。君の口内に溢れた唾液を啜り、わざと音を立てて官能を誘った。
キスの最中も、君のスカートを捲りパンツの中をまさぐった。早くも濡れそぼった君の性器は僕の指を離さまいと締めつけ絡みつく。


君をその場に屈ませ、手早くベルトを緩めてズボンを下ろす。パンツの中で窮屈そうにしている肉棒は刺激をせがむように脈打っている。僕は君の頭を掴まえて、パンツの匂いを嗅がせるようにこすり合わせる。


「もう痛いほど起ってるんだ。楽にしてよ」


僕がそう言うと、君はパンツを下ろして肉棒を露にして、ゆっくりとそれを咥えた。だが、その間怠っこしい動きに痺れを切らし、頭を掴んで腰を動かす。自分のペースで肉棒を出し入れさせる。君は苦しそうに顔を歪めている。その表情が僕の心に火を付け、より一層ピストンを早める。
あまりの激しさに君は噎せ返って肉棒から口を離した。咳き込む君の口から唾液が床へと垂れる姿を僕は眺める。言い様のない優越感が僕の中にはあった。


「こっち来て」


僕は君の手を引っ張り、立ち上がらせる。埃まみれの机に君を横たわらせ、陰部が丸見えになるくらい股を開いた。露になった陰部に肉棒をあてがう。


「挿れてほしい?」


「……うん」


「だったら、ちゃんとおねだりしないと」


「僕のアソコに挿れてください……」


君の今日の台本は従順な女なのだろう。童顔の君が恥じらい、艶やかな表情を浮かべる。ならば、僕も君の台本に沿うように乱暴な性交の限りを尽くそう。
君の子宮に貫かんばかりに肉棒を差し込み、激しく腰を振った。人間らしい情事など切り捨て、まるで動物の性交のように腰を打ち付けた。
君の嬌声が部屋中に響き渡る。地面に落ちた埃が宙に舞い上がりそう大きく震えた喘ぎ声。僕はその声をさらに響かせたい一心で腰を振った。


肉と肉がぶつかる乾いた音と君の震える嬌声、そして僕のくぐもった息遣い。
その光景を滑稽だと嗤うかのようにランプの火はゆらゆらと揺れていた。
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阿吽 ( 2018/01/03(水) 09:15 )