第4章【CL編】
62話
タッチが大きくなった瞬間ここぞとばかりにエデルソンがペナルティエリアを出てスライディング。
キングはシャペウで出てきたエデルソンを嘲笑うように抜きゴールへ優しく転がし前半2分のロスタイムに入った瞬間に同点弾。

後日のインタビューでキングは

「エデルソンは代表で一緒だから性格もよく知ってますよ。あの場面あの人なら攻撃的にディフェンスしてくる。そう信じ、あえてタッチを大きくしたんですよ。」

と応えたそうだ。

キングは悠々とゴールパフォーマンスを済ませ自陣に戻る。

「集中切らすな!まだ同点だ!」

キャプテンデブライネの声掛けに皆落ち着きリスタート。直後ユベントスは意表を突くハイプレスでボールを追いかける。先陣を切っていたハルクがロドリを激しく当たり突き飛ばしながらボールを奪取。笛はならない。中に走り込んだ『百獣の王』にパスが渡るとダイレクトでペナルティエリア外から一閃。あっという間に逆転され前半終了の笛が鳴り響く。

ロッカールームにて。

「よし、キャプテン。後半どうしようか?」

「…あー、そうだ。今キャプテン俺だった。」

「やはりここはキャプテンの意見を聞くのが第1だな!」

旧キャプテンと新キャプテンの絡みに監督も割り込んでリードされてるとは思えない明るい空気感だ。
そしてその空気を変えるのもキャプテンだ。

「んー。ぶっちゃけ問題が1つ。キングとロナウドを同時に相手するのは無理だ。でもやらなきゃいけない。ディフェンス!コンパクトに、裏取られるのは怖いがサイドバックもガンガン上がって行こう。真ん中はそれぞれバランス取りながらしっかりフォローし合おう。フォワード!点取ってこい!俺からは以上。」

「よし、合格点だ。補足の指示は2つ、1つはキングとロナウドのホットラインの対処。これと言って策は無いがロドリはキングへマンツー。パスを受けさせるな。もう1つは攻めは裏に行くより中に切り込め。サイドを駆け上がるのはサイドバックに任せろ。以上!さぁ、勝ってこい!」

「「「おう!!!!」」」


マイボールから後半が始まる。
デブライネからアグエロへ渡ると両ウィングが中に切り込んでくる。左のスターリングに落としダイレクトでシュートを放つもディフェンスに弾かれる。
セカンドボールを拾ったのは修二。マリオを振り切ろうと縦へ急加速するもマリオのスライディングした足に引っかかりファールを貰った。

ペナルティエリア左側といい位置のフリーキックにキッカーとして立ったデブライネと修二は2人でコソコソ話していた。

「デブライネ。俺蹴っていい?」

「今日監督の許可出てないぞ。」

「でも俺の利き足左だから警戒されないと思うんだよね。」

「分かった。次のファールは蹴っていいがこのフリーキックは俺が貰う。」

「ちぇ〜。ならフェイクで走りまーす」

「よろしく!」

そんなこんなでデブライネが蹴ったボールは惜しくもブッフォンに阻まれコーナーもブッフォンに弾かれてしまう。
その先にはリンクマンのディバラ。

「ディバラ!へい!」

(いや、キング。お前にはマーク付いてるだろ。)

ディバラからハルクへのロングフィードをストーンズは体を当て精度の欠けたヘディングはキングとロナウドに渡らずシティが奪う。そんな場面が数回繰り返され後半も残り5分とロスタイム。

「シュート打たされてるのか?」

「いや、防戦一方にも見える。カウンター狙いなのは変わらずになにかしかけてくるかもな。」

シルバとデブライネのそんな会話をしているとユベントスの攻撃の牙は一瞬でシティに剥けられた。

ディフェンスに参加していたキングがデブライネとマッチアップ。体を当て前を向かせずロドリへバックパスで立て直す。
しかし、ユベントスの攻撃力に後手のシティは攻撃陣と守備陣の意識のギャップで中盤に大きなスペースが空いていた。思ったより後ろに居たロドリへ向けられたバックパス。
ニヤッと不敵な笑みで微笑むキングはそのバックパスに追いつきボールを奪取。急な攻守の切り替えにもたつくシティ。その弱みにキングが付け込まない理由はない。キングを起点にハルク、ロナウド、ディバラの4人でシティのゴールへ迫る。それぞれがワールドクラス。ペナルティエリアに入る3人と目配せだけで完璧な意志交換を済ませキングが選んだ選択肢は。


東魁 ( 2021/02/11(木) 19:46 )