第2章【クラブワールドカップU-18編】
26話
前半も残り10分、実力は互角でスコアも動かない。VIPルームではノアンへの称賛の声が上がっていた

「にしてもノアンすげーな。」

「キングとバチバチにやりあってレベル上げてるな」

称賛する同じMF陣のアザール、ジダン。その一方で辛口な悠人とロッベン

「確かに抑えられてはおるけど、攻めな点は取られへんで」

「同感。自分で持って行ける時はキングから離れても良いだろう。」

「MFそれぞれわかりやすく性格出てるな。」

「ロッベンとか特にな」

「修二。頑張って。」

蒼と拓真が面白がってる横で真剣に修二を応援している七瀬。その願いは届くのか。

〜〜〜ピッチにて〜〜〜

キングはドリブル突破を仕掛けずに左右前後にボールを散らしながら攻撃の機会を伺っていた。
ハルクはそんなプレーのキングに疑問を抱いていた、いつもなら圧倒的ポテンシャルで強引突破、ファールしても止められない、故に『怪物』と呼ばれているからだ。

前半ロスタイムに入るとキングが仕掛ける、ハルクからのバックパスを貰う。ノアンがすぐ縦へのパスコースを塞ぐとキングは反転してノアンに背を向けたと思ったらソニックムーブで自分で放ったボールに追いつくと強烈なシュートを放ち先制点はユベントス。そのまま前半終了

観客は「モノが違う」「キングは別格」と流石『怪物』と言えるプレーを見せつけた。
VIPルームでも同じ様に誰もがキングのプレーに流石としか言えなかったが違和感に気付いたアザールから口を開いた

「ノアンの頭にはパスしか無かった。前半残り10分、あの10分間キングはドリブル突破をしていない。それが伏線だったか。」

それに気付いたのは悠人と直接戦ったアザールだけだった。 

「なぁ、悠人。」

「ん?どーした七瀬」

「修二、なんであんな怖い顔してサッカーやっとるん。」

「あくまで噂だが相手のDFのマリオは実力、実績、ポテンシャル、どれをとっても凄い選手なんやけど、性格に難があるらしいからな。異名は『悪童』。修二は多分しつこいラブコールに遭ってんだろ。あいつそう言うの嫌いやからなー。」

「どうにかならへんの?」

「あの『悪童』1人ならどうとでもなるけど、問題は『怪物』だ。あいつが居るからノアンもフォローに行けない。修二が1人でどうにかせなあかんな」

「修二。頑張って」

(それにしてもノアンはえげつないな。戦った時も思ったが、相手が強ければ総じて強く成長しとる。何よりパスコースの塞ぎ方。まるでうちの『ナポレオン』やないか。)

七瀬が心配する中後半が始まる

ユベントスの猛攻を必死に止めるレアルはカウンター狙いで前線に修二1人置いて全力で守っていた、たまに来るロングボールも修二に収まる前にマリオから明らかに潰しに掛かってくる激しいプレスに阻まれる。
しかし後半残り10分、キングのパスをノアンがペナルティーエリア前でカットした。
キングの反応が遅れた隙にカットしたボールに追いついたノアンが大きくクリア、そのボールが運良く修二が反応し飛び出した。
追いかけるマリオは追いつけないと判断するとフライパスをヘッドで触ろうとジャンプするも僅かに届かず飛び出した修二の前に落ちるとキーパーもファール覚悟で飛び出す。
距離はペナルティーエリア10メートル手前、修二は左足を振り抜く。
スピンのかかったボールは枠の外からゴールに吸い込まれるような軌道で会場をゴールネットの中から揺らした。
キングは何も言わずニヤッとだけ笑い自陣に戻る。
同点弾を決めた修二はゴールの中のボールを取りセンターサークルへ走る。希望が見えたその時、マリオが足を掛けて修二が倒された。審判も呆れたようにマリオに今日2度目の注意をしに来るが。修二は我慢の限界だった、周りにバレないよう立ち上がりそのままマリオを突き飛ばしてしまい1発レッドカードを貰ってしまった。

ヒートアップした修二をノアンは止めにかかるとキングはマリオに近付き今度はキングがマリオを突き飛ばした。
VIPルームでも修二の一発レッドに動揺していた。

「英雄から一転、戦犯やな。」

悠人は冷静にそう口を開くと七瀬は納得してなかった

「なんでなん!あのDFが引っ掛けたのになんで修二だけレッドカード貰わなあかんねん!」

「七瀬。やめろ。」

「いやでも、、、!」

七瀬の意見はみんなが思っていた。だが審判が行為じゃ無いと判断したら行為では無い事になる。どのスポーツでもそうだがピッチの上で審判は絶対だ。それとは逆に行為と決めつけ、尚且つスポーツマンシップに反する行動をとった修二の方が反則の対象になった。
しかし主審の見てない所で明らかに修二を挑発する行動ばかりだったマリオを許すものは少なくともVIPルームにはいなかった。だからこそ蒼は七瀬に「やめろ」とだけ言いそれ以外は何も言わなかった。



東魁 ( 2020/07/24(金) 16:36 )