エースは俺 - 第1章【高校編】
8話
〜〜放課後〜〜

「サクッと日本一取ってヨーロッパに居るあいつらへの土産話にでもするか」

「問題は勝ち方だよ、油断しないようにね」

「俺が得点の日本記録作ってやるから任せとけ!」

といつものいたずらな笑顔でそう言った



〜〜全国大会前夜〜〜

いつものように2人は帰り道で話していた

「明日はついに全国大会やな!応援行くから頑張ってな!」

「ありがとう七瀬!任せとけ!」

「はい!修二!」

そう言いながらミサンガを修二の左腕につけた

「頑張るんやで?」

「…やっぱ俺七瀬のこと好きだわ」

「き、急にどーしたん!そんな恥ずかしいこと言わんといて!」

つい口から出た言葉に自分でも恥ずかしさを感じながら七瀬の手を握りいつもの笑顔で言った

「ありがとう、これ付けて頑張るな!」

「うん!」



〜〜全国大会当日〜〜

開会式が終わり1試合目という事もありそそくさと準備をし、いつものキャプテンの掛け声とともにみんな気合を入れてグラウンドへ散った
相手は広島代表の瀬戸内高校、スポーツマンシップを大事にしファールを予選を通じて0回のチームで年代別代表に選ばれた経験のあるGKのキャプテン岡田 成(おかだなる)と俊足のMF瀧野 結衣(たきのゆい)がキーマンのチーム

「修二!あいつのパスとは程遠いかも知れないが、僕をアシスト王にしろよ!」

いつもクールな翔太が熱いことを言う時は決まってテンションが上がり自分自身が良い状態の時だ

「もちろんだ!いくぞ!」

ホイッスルが高々と鳴り相手ボールから試合が始まると瀬戸内高校はパスを繋げ無理をしないようミッドフィルダーとディフェンスでパスを繰り返し乃木高が前掛かりになったのを見計らい岡田へとバックパスと同時にハーフラインからMFの瀧野が猛ダッシュで乃木高ゴールへ走り出した。DFからのバックパスをGKの岡田がダイレクトロングパスで瀧野へ向けて放った、突然の奇襲に前掛かりになっていた乃木高ディフェンスの反応が1人を除いて遅れた。
瀧野が走り出してすぐ翔太も走り出しており瀧野へ激しくプレスを掛けそのままボールを奪い取りお返しと言わんばかりのロングパスをペナルティーエリア手前で修二がトラップと同時に反転してシュートを放ち先制点を決めた

「翔太!ナイスパスだ!」

「修二!よく決めてくれたね!」

そう言い寄ってくるチームメイトとハイタッチとスタンドへのアピールをしポジションへ着いた

「岡田、俺らの必勝パターンが初見で破られるなんて…さすが日本代表と言うべきだな」

「瀧野くん!そんなしんみりした顔しない!全国なんだからそう簡単にはいかないよ」


瀬戸内高校は焦りが出たのかペナルティエリアに居た瀧野への安易なパスを翔太がカットし前線の修二へパスを出す。そのパスを一旦スルーしてディフェンスの意表をつきそのまま転がって行くボールに修二が追い付きキーパー岡田と一対一になるも当たり前のように決めて2点目

前半終了までに翔太と修二のコンビで3点決め、修二が前半20分でハットトリックを達成と最速記録を更新した




「ここまで凄いとはね…」

「キャプテン!ここからは意地です!なんとしても1点決めましょう!」

監督も諦めムードの中、岡田と瀧野の闘争心はまだ燃えていた



しかし、実力の差は圧倒的で後半が始まると翔太が瀧野へのマンマークでボールを触ることもできずこの試合だけで何回このパターンを見ただろうか。瀧野へのパスを翔太がカットし、最前線の修二へスルーパスと、このパターンだけで今日4得点の修二、4アシスト1得点の翔太、実力の差を見せつけながら5対0で乃木高勝利。



続く2回戦




相手は新潟代表の新潟高校、世代別代表選手は居ないもののここまで勝ち上がってきたチームで、キャプテンDFの柏木 雪也(かしわぎ ゆきや)とDF北原 理央(きたはら りお)を中心にレベルの高い組織的ディフェンスのチーム


修二のキックオフから試合が始まり柏木の指示や北原のゲームメイクによる前評判通りの組織的なディフェンスに苦しめられ前半まで修二へのパスをことごとくカットされていた
後半になり敵のパスサッカーに苦しめられるもキャプテンが裏へのスルーパスをカットし前線へ蹴ろうとすると前半ボールに触れたのはキックオフの時だけだった修二はいつもスルーパスに合わせて日本人離れした俊足で相手を置き去る攻撃パターンだったが、よっぽどフラストレーションが溜まっていたのだろう。アンカーの翔太と並ぶほど下がってボールを貰いに来ていた、修二にパスをするとマンマークに徹していた柏木をエラシコで抜き、カバーに入った北原を股抜きで抜いていきペナルティーエリア目前で残りの2人のサイドバックが修二に向かって走り出すと同時にゴール右上ギリギリにシュートをぶち込み待望の先制点をもぎ取った
自陣の真ん中付近から4人を抜く実力差を見せつけ相手の戦意を完璧に無くした


「きたりお、アイツは物が違うよ…」

「ゆきりん!あ、諦めたらだめだよ!」

北原は動揺とショックを隠しながら言ったつもりだったが柏木には、いや、この試合を観ている人でもその後崩れていく新潟高校が心を折られたのは明白だった


その後も2点の追加点を修二、翔太のホットラインで取り結果は3得点修二、2アシスト翔太で試合終了


東魁 ( 2020/07/13(月) 15:37 )