第1章【高校編】
2話
ピーッ

高く鳴るホイッスルとともに相手ボールから試合が始まった
パスで組み立てていく相手に対しどっしりと王者の風格を感じさせながら迎え撃つ乃木高
相手も県内で五本の指に入るであろう強豪だがアンカーの翔太がパスカットでボールを奪いロングパスで最前線の修二とキーパーのちょうど中間地点にボールが落ちると修二は迷わず走り出しペナルティーエリア内に侵入、そのまま出て来たキーパーの真横を通る鋭い弾道でゴールを決めた

「す、すごい」

「いまのパスだったの?」

すごいしか感情を表せない絵梨花と今のがパスだと信じられない真夏を他所に七瀬はゴールを決めた修二を惚れ直していた

「やっぱかっこええわ…」

開始5分で先制した乃木高はそのままのイケイケムードで得点を重ね最終的に7対0で試合を終えた
修二は5得点、翔太は2得点4アシストと強豪相手に流石代表選手と言わせるプレーを見せた


「流石だな修二!」

「ナイスパスだったよ翔太!」

2人はハイタッチをし、ダウンを終えると今日の試合に出場した選手と監督室でのミーティングを行なった

「流石としか言えない活躍だったな橋本!次も頼むぞ」

「はい!監督!」

イタズラに笑いながら返事をしミーティングを終えると外に七瀬が待っていた

「修二!お疲れ様」

彼女の笑顔は家族の癒しとはまた別でとても癒される、そう考えながら「見に来てくれてありがとう」と返事をし一緒に帰って行った

「さっきの試合見て修二がほんまに帰って来たんだって実感したな〜」

「なんだそれ、転校して来たのに実感なかったのかよ」

「そう言う訳じゃなくて、海外に行ってからもう修二のサッカーを生で見れへんなって思ってん、やっぱ修二にボールが渡るとワクワクするな〜」

「まぁ、それが俺の持ち味ってか武器だしあんまり深く考えてなかったな、ボールを持ったらゴールを狙うのは俺の仕事だと思ってるからそう言われると嬉しいよ、ありがとうな、七瀬」

「いやいや、ありがとうはこっちやで?またワクワクするサッカー見せてな〜」

七瀬に褒められるとまだ上に行ける、もっと高みに登れると思ってしまう、そうこうしていると家に着いたので七瀬を玄関まで送り家に帰った

「ただいまー」

「お兄ちゃんおかえり!試合かっこよかったよ!」

「ありがとう!お、みなみじゃんでっかくなったな!」

「久しぶり修二君!試合かっこよかったよ〜!」

抱きつかれながら言われビックリしたが可愛いので良しとしよう

「疲れたからシャワー浴びて寝るわ」

そう言いながらみなみをはがしシャワーへむかった




そして学校、練習、試合、と普通の学生生活や部活にも慣れて来た頃インターハイ予選の組み合わせが発表された

「日本の高校サッカーの大会って何個くらいあるんだ?」

「そっか、修二は中1の終わりから向こうにいたから知らないのか、高校サッカーの大きな大会は2つ夏のインターハイと冬の選手権で、冬の選手権が終われば3年生は引退するんだ」

「なるほどな、んで?さっき監督の言ってた組み合わせでみんな焦ってたけど、なんかあったのか?」

「ライバルの秋葉原高校が予選リーグの初戦なんだよ…去年の決勝カードがいきなりなんてって事だろう。前回は引退した先輩10人と僕がスタメンだったし、厳しいこと言うけど今年は…」

「どこが相手でも変わんねーだろ、俺は点取ることしか考えてねーよ!」

「流石修二だね!頼りにしてるぜエース!」

監督の集合の合図で1軍が集まりインターハイ予選の初戦のスタメンを発表した、修二は7番、翔太は10番と2年生ながら名門のエースナンバーを背負って戦う事となった

「明日は初戦だ、まさか去年の決勝カードがいきなり当たるとは思わなかったが、早いか遅いかの違いだ!去年同様無敗で終わらすぞ!」

「「「「おう!!」」」」

監督の解散の声でそれぞれ自主練する選手とダウンしていく選手がいる中、修二が監督室へ呼ばれた

「失礼します」

ノックをしどうぞという言葉が聞こえたので疑問を持ちながら監督室に入って行った、すると渡部監督と児島コーチだけでなく校長と見慣れた外人がいた

「スフィアさん!お久しぶりです!」

「修二!久しぶりだね!」

彼はスフィアさんレアルの専属スカウトマンだ彼のおかげで俺はスペインで良い経験を積ませてもらった

「何かあったんですか?」

「修二にお願いがあってね、来年の1月にあるクラブワールドカップU-18に我がレアルの選手として出て欲しい」

「いやいや、俺放出されたんだから出場出来ないでしょ?」

「それは、下部組織の指導長(監督)の彼が独断で判決した事なんだ、僕たちが君を捨てるわけ無いだろう?クラブには半年間の休暇として日本に戻って来ていることになっている」

「いや、解雇書類も突きつけられ言うこと聞かないならこれをクラブへ提出すると言われたのですがそれはどうなったのですか?」

「彼も引くに引けなかったのだろう、我々は深く反省している。どうか戻って来てほしい」

深々と頭を下げたスフィアさんには申し訳ないが日本に戻りとても充実した楽しい日々を過ごしている、この生活を捨ててまで行く価値はあるのか…そう考えてしまった

「すみません、少し考えさせてください。」

「では最後にこれだけは聞いてくれ、この大会には君のライバルの彼らも出る、お願いしている立場の言うセリフでは無いかも知れないが彼らは君のいない間にも最高のパフォーマンスを磨いている、プロが夢なら出るべきと思うが…これ以上はズルいな。では私はこれで!チーム合流は10月を予定している、9月の末にまた来るよその時には答えをよろしく!」

そう言いながらスフィアさんはその場を後にした
うつむきながら考える修二に向けて児島コーチが「この話は自分の事を第1に考えろ、チームの事を考えるんじゃ無いぞ!そんな情けは監督も他の選手も要らないはずだ」と珍しくまともな事を言っていたので思わず笑みがこぼれた


東魁 ( 2020/07/13(月) 15:29 )