エースは俺 - 第1章【高校編】
10話
決勝戦


相手は愛知代表の栄高校、少数精鋭を好み部員人数は30人と全国大会に出場したどのチームより少ないがここ10年間優勝候補と呼ばれるも一度も優勝は無い無冠の強豪。U-18エースで飛び級U-23の松井 珠理那(まつい しゅりな)、飛び級U-23のMFの松井 玲那(まつい れな)、まだ2年生のダブル松井を中心に初優勝が狙えるほど今年の戦力は最強とまで言われるチーム

「珠理那、相変わらず殺気立ってるね」

「玲那は緊張してるのか?」

「ち、ちがうよ!僕も乃木中に少しの間転校してたから知り合いが多いなーって思っただけだよ!」

「そうか、向こうにはあいつがいるからな」




「修二何ニヤニヤしてんの?」

「いや、U-15の時に13歳で選ばれた者同士で戦えるんだぜ?楽しみで仕方ねーよ!多分日本で純粋な勝負を楽しめるのは後ダブル松井以外居ないからな」

「僕は眼中にも無いのかい?」

「お?珍しいな翔太、終わったら相手してやるよ」

「よし、行こう!」

歓声の止まないスタジアムに両チームが入ると止まない歓声がさらに大きくスタジアムを揺らした。


試合は栄高校から始まるとダブル松井の猛攻に乃木高は防戦一方だった、珠理那のシュートは修二に負けず劣らずの力強さ、玲那のパスは決定的チャンスを何度も作った。

前半終了間際、修二は1本珠理那は8本のシュートの差があったがまだ両者1点も決めれてない状況だ、翔太のパスカットで乃木高ボールになるといつもの様に修二へとロングパスを放つ

修二はそれをトラップしようとすると、2人のCB、両サイドバックの4人に囲まれそのままボールを奪われ前半がここで終了した


〜〜〜ハーフタイム〜〜〜

「4人は少しキツイな…」

「警戒されてるんだよ、後半は僕も上がってマーク1人もらうよ」

「いや、大丈夫だ。俺に任してくれ」

いつものイタズラな笑顔に少し悪意を足した表情で言った修二を見て翔太は任せたの一言で済ませ、グラウンドへ戻った


後半は乃木坂から始まり、早速翔太から修二へと鋭いスルーパスが通ると前半終了間際同様CBの2人と両サイドバックの選手が迫って来た、いつもならスピードで抜き去り絶対的な決定力のシュートが得意パターンだが4人を前に一旦止まり、まるで軽やかにダンスを踊っているかのようなボールタッチとフェイントを入れながら相手を挑発し、ディフェンダーが耐えかねボールを取りに行く瞬間


「バカ!行くな!」

玲那の声がグラウンドに響き渡るも遅かった

修二は1人をヒールリフトで抜くと脅威的な加速力でトップスピードに乗り、華麗なボールタッチで2人の間を抜き、残り1人の裏のスペースを確認してメイア・ルア(日本では裏街道と呼ばれる技)で抜き去りキーパーと1対1、ペナルティーエリアに侵入しいつものいたずらな笑顔でループシュートを放ち先制点を決めた


「あいつやっぱり別格で強すぎだろ!」

「獅子が踊ったぞ!」

「まるで遊んでるみたいだな」

会場から修二を称賛する様々な声が聞こえた

「やっぱり修二くんすごいね、私もあんな風に相手をぬきたいな〜」

「真夏はいくちゃんのパスあってやもんな!」

「そうよ真夏!私のおかげで2年連続得点王なんだからね!」

「うっ、、、なぁちゃんの言葉の弾丸が…」

「あ、試合再開する!」

「なぁちゃん、せめてリアクション取ってあげて!」



試合も終盤に差し掛かり1対0のままロスタイム直前に玲那からペナルティーエリア内の珠理那へとボールが行くと翔太とマークについていたキャプテンでシュートコースを塞ぐとそのままダイレクトで玲那にリターンし、シュートを放つ、ボールはポストに当たりルーズに、その瞬間キャプテンは硬直し、翔太も驚いていた。まるで修二の様な殺気と闘気に満ちたストライカーが目の前にいたことに。

珠理那は跳ね返って来たボールにヘディングでは届かないと判断するとジャンプして体を捻り、カカト落としでキーパーの股を抜きゴールを決めた

会場のボルテージは最高潮に上がった、誰もが乃木高の勝ちと思っていたらアクロバティックなシュートで栄高校が追いつき延長戦へ望みを繋げたのだから

「珠理那!ナイス!」

「いや、玲那がシュートの判断をしてなかったら出来なかった事だ。」



「翔太、どーした?」

「あぁ、修二、日本もまだ捨てたもんじゃないよ」

「なんだよ急に」

「驚いちゃったよ、なんせ修二と同じ物を感じちゃったから」

修二はそうかとだけ言いセンターサークルへ入っていった、

「橋本!」

そう言うと珠理那はただ修二を睨んだ、そして、2人はニヤッと笑い試合が再開した

ロスタイムは3分、乃木高はパスを回し攻撃を組み立て様とすると栄高校は引いて守っており、珠理那1人が乃木高陣地でカウンターの機会を待っていた。

翔太が修二へ鋭いスルーパスを放つも玲那にカットされた。

「もどれーー!!」

キャプテンの声と同時に珠理那が走り出した。

だが珠理那の元にはパスは来なかった。

パスカットされた瞬間、翔太は珠理那には追いつけないと判断し玲那のパスコースを予測し飛び込んだ。その背中に当たったボールは獅子の足元へと転がっていた。
栄高校のキーパーがファール覚悟で修二へ向かって飛び込むも、その横を反応できない速度でボールが通り過ぎた。その瞬間審判の長い笛と共に観客が騒ぎ、揺れ、乃木高の優勝が決まった。


東魁 ( 2020/07/13(月) 15:38 )