1話
「久々の日本だな、あーはやくボール蹴りてー!」
外の桜が散っていくのを見ながら17歳の少年が手を伸ばした
「お兄ちゃん!こっちこっち!」
「おー、久しぶりだな飛鳥!大きくなったな〜」
橋本飛鳥、修二の妹で奇跡と称される小顔な美少女
サッカーの才能は未知数?
「当然でしょ!3年間も帰ってこないなんて思わなかったよ!飛鳥に会えなくて寂しかったでしょ?」
たまに帰ろう帰ろうと思ってもなかなか帰れなかったからな…そう思いながら飛鳥と一緒に空港から家へタクシーで帰った
「母さんと父さんは?」
「2人とも先週から仕事で北海道に行ってる」
そうか、姉ちゃんは?と玄関前で聞き返すと丁度いいタイミングでドアが開き
「修二!久しぶり!!!!」
そう言いながら抱きついてきた
「苦しいよ姉ちゃん!」
橋本奈々未、修二のお姉さんで容姿端麗な女性、家事全般も出来るパーフェクトビューティー。修二がサッカーを始めるきっかけとなった人で、高校3年生の時に女子サッカーU-18日本代表に選ばれており、女子U-18ワールドカップでチームは準優勝ながらもアシスト王に輝いた。今は大学でサッカーをしながら日本代表に呼ばれており女子サッカーの最高峰と言われているアメリカのチームから声が掛かってるとか。
異名は素晴らしいラストパスから、『ゴールへの橋掛人』と呼ばれている
「連絡ぐらいこまめにしなさい!全く…サッカー以外の事はホント何もしないんだから!」
そう言いながら頭にチョップを入れられたが久しぶりの家族との対面はとても嬉しかった
「ごめんごめん、母さんと父さんに連絡するわ」
そう言って修二は両親に日本に帰ったことを伝え、転校の事を聞いた
「明日から飛鳥と同じ乃木坂高校だね!」
「おう!よろしくな」
「飛鳥、ちゃんと道教えてあげるのよ、修二ってば小学校の頃たまたま私と行かないだけで登校中に迷子になったんだから」
懐かしい話を交えながら新しい環境に行く自分を想像し、一夜を過ごした
「お兄ちゃん起きろー!!!」
そう言いながらベッドに飛鳥が飛び込んできた
「いってーよ飛鳥…おはよ」
平和な朝が来た事を喜んでいると奈々未の声がした
「飛鳥!修二!ご飯食べたら学校行きなさい!」
「「はーい」」
修二は転校初日もあって早めに学校へ行き手続きなどがあるため2人はいつもより早く家を出て行った
そして
「はい、みんな席に着いてください!」
担任の古川洋平先生が席につく事を指示し生徒が席に着く
「今日は春休み前に発表したこのクラスに新しいクラスメイトが加わった!入ってきてくれ」
教室がザワザワする中とても驚いた様に口を押さえ半泣きの生徒がいた
「スペインから転校してきた橋本修二です!サッカー部に入るのでサッカー部の人はよろしくお願いします!」
男女が認めるほど整った顔をしている修二は拍手で迎えられ指示された半泣きの生徒の隣の席に座った
「七瀬、久しぶりだな!」
「修二…いつ帰って来たん?」
西野七瀬、修二のお隣さんで幼馴染。修二を含めた天才5人とも交流があり、良く一緒にボールを追いかけていた。関西弁の美少女。
「昨日の夕方ごろかな?ビックリさせようと思って黙ってた!」
「もー、ホンマにビックリしたやんか〜」
「ごめんごめん!てか、なんで半泣きなんだよ!」
「う、うるさい!気にせんといて!」
七瀬を茶化していたらホームルームが終わり修二の席の周りには沢山のクラスメイトで溢れていた、転校生が受ける宿命の質問攻めである、その輪の外に知った人物がいた
「おい、翔太じゃねーか!」
「やっと気付いたのかよ、質問攻めされてたから再会の喜びは後でと思ったが、まぁいいか」
生田翔太、12歳の時にドイツから日本にやって来た天才。U-15には選ばれなかったが、修二、悠人、蒼と一緒に15歳でU-18に選ばれた。アンカーとしての能力は世界で通用するものがあると評価されるも海外クラブの下部組織、国内ユースには入らず高校サッカーをする事を選んだ。
質問攻めが終わった後に翔太に学校の事をあれこれ聞いた
どうやらこの学校はスポーツが盛んでどの競技も強いらしい、特にサッカーは女子も男子も2連覇している強豪だ
「勿論、修二はサッカーやるんだろ?」
「当然だろ!俺が3連覇のキーマンになってやら!」
「ところで聞いていいかわからないがなんで日本に帰って来たんだ?」
「あー、まぁ下部組織の監督とウマが合わなくてな、トップチームに昇格した後に有る事無い事上に報告されて放出されちった」
呆れた顔で翔太が何やってんだよと言いたげだったのでサッカー部の話に戻しはぐらかした
放課後になり渡部監督と児島コーチに挨拶を済ませそのまま1軍の練習に加わった
もと居たクラブと比べたら小規模だが高校の部活にしては相当な規模な所だ、部員は全学年で100人を超え、グラウンドも2面有り、室内練習場が1つにウエイトルームまで有り充実し過ぎな程だった
練習も向こうと比べても遜色ないほど無駄のなく効率的なものであった
「スペインでレアルの若獅子って呼ばれてた橋本修二だろ?」
「君が来たらウチの3連覇は貰ったな」
先輩後輩関係なく話しかけられすぐに部活に馴染め時間が進んでいった
監督の集合の声で1軍の選手たちが監督の周りに集まった
「新しくこの部に入った橋本修二君だ!みんな彼のプレーを見たいだろう!急だが、明日練習試合を行う!橋本はスタメンだ、セットプレーの確認と明日への調整で今日の練習は終わりだ、気を引き締めてこう!」
「「「「うっす!」」」」
そう言うとセットプレーの確認に修二も参加した、そこで自己紹介の代わりに自分のプレーを新しいチームメイトに見せしめた
「流石だな橋本!」
「ホント凄すぎだろ!」
1軍の先輩達から絶賛の声やハイタッチを繰り返し明日への調整に入った
「明日は修二にじゃんじゃん回すから気抜くなよ!」
「おう!待ってるぜ翔太!」
部活が終わりダウンを済ませそれぞれ帰路につくと
「七瀬!帰り道で会うなんて奇遇だな!」
「修二!そりゃ、お隣さんなんやからそんな奇遇やないやろ!」
「まーそうか、今度から一緒に帰るか?」
「え、、ええの?」
顔を赤らめながらとても可愛く聞いて来た
「い、良いも何も家となりだろ?」
「せ、せやな!うん、今度から一緒に帰ろうな!」
最後に見た中学1年生の頃から変わらず、いや、さらに綺麗に可愛くなった七瀬と一緒に帰る約束をした
「んじゃ、またな!あ、そうだ明日試合になったから見に来いよ!俺の日本復帰戦だ!」
「ホント!?友達連れて見に行くな!」
「おう!バンバン点決めてやるから!」
「楽しみにしとるな!」
そう言って手を振り七瀬可愛くなってたなー、と思いながらドアを開けると飛鳥が飛びついて来た
「お兄ちゃんおかえり!」
「うお!飛鳥ビックリさせんなよ〜」
「修二おかえりなさい、ご飯出来てるから食べようか!」
「ありがとうねーちゃん」
家族での食事は何よりも癒しだ、今日あったことや明日が試合になりスタメンになった事やスペインでの事など話しが尽きる事は無かった
そして次の日
「お兄ちゃん!試合頑張ってね!みなみと見に行くから!」
「おう!ありがとな」
「私も見に行きたいけど、今日から代表合宿だから飛鳥に私の分も応援させるね」
「ねーちゃんもありがと、合宿がんばれよ!ゴールへの橋掛人!」
「もー、恥ずかしいから言わないで!」
イタズラに笑いながら手を振りグラウンドへ向かった
「今日は今年度の初戦と橋本のデビュー戦だ!まだ噛み合わない事もあるだろうが勝って無敗で1年終わらせるぞ!」
「「「「おー!」」」」
選手がポジションに着いた
「あ!始まるよみなみ!」
「ホントに修二君帰って来てる!」
「なーちゃん!試合始まるよ!」
「あのCFの人が橋本修二君?かっこいいね!」
「ありがとういくちゃん!真夏ったら、もー、修二にアタックしたらあかんで!」
「なーちゃんが一途に想ってる人にアタックしないよ〜」
「頑張れ修二…」