02
ガチャ
末永(また次のお客様・・・)
末永「よろしくお願いいたします」
姿は見えないが、入ってきた男を正座で出迎えた。
時は数ヶ月遡り・・・
末永桜花のソロコンサート開催が決まる。
自分でセットリストや演出を考えて実行できるということで、末永はこのチャンスを活かしたいと気合いを入れて取り組んでいた。
既にグループからの卒業を発表していた、大の仲良しメンバーの片岡成美をサプライズゲストとして呼ぶことも決めていた。
舞台監督とも話を進めていき、着実に準備は進んでいた。
そうして迎えたコンサート前日、リハーサルを行うためな会場へ前乗りしていた。
ところがその時、突然風向きが変わってしまう。
マネージャー・・・山下から演出についてNGを突き付けられてしまったのだ。
理由も聞いたが、到底納得のできる内容では無かった。
末永(事前に相談してたのに、何で今更・・・)
もう明日本番なのに、1から組み直すなんて不可能だ。
しかも舞台監督も急遽交代すると告げられる。
末永(なんで・・・なんでこんなことに・・・)
末永は悔しさで涙を流した。
片岡「・・・・・・おーちゃん、私も考えるから!諦めないで頑張ろ」
一緒にリハのために前乗りしていた片岡が、末永を励ましていた。
末永「うん。・・・なるぴー、ありがとう」
2人はいくつか案を出していったがOKが出ず、ただただ時間ばかりが過ぎていた。
末永(やっぱりもうだめだ・・・)
日も落ちて辺りが暗くなりはじめていた。
コンコン・・・ガチャ
山下「入るぞ」
山下が2人のいる部屋に入ってくる。
末永(・・・・・・)
末永は恨めしそうな眼差しで山下を見つめる。
山下「そんな顔をするな。お前はグループの代表として出るんだから、中途半端なものは受け入れられないんだよ」
山下「できれば自分達で考えたものやってほしかったんだが、もう時間が無い」
末永(何よ。あなたのせいで・・・もっと早く言ってくれれば)
山下「ここで提案があるんだが・・・こちらで準備した構成や衣装がある」
末永「え?」
また突然出された提案に、末永は戸惑った。
自分達の考案した内容でコンサートができないことは悔しいが、時間が無いのでこの提案を受け入れるという選択肢以外考えられなかった。
末永「・・・分かりました・・・」
末永が答えた瞬間、山下の口元に笑みが浮かんだような気がした。
片岡(良かったぁ・・・)
片岡はホッと胸を撫で下ろす。
片岡「良かったね、おーちゃん」
末永「うん・・・」
複雑な気持ちのまま返事をする。
山下「それじゃ、早速打ち合わせするから。末永は一緒にこっちに」
山下「あ、片岡は先にホテルに戻ってていいぞ。リハーサルは早朝からにしよう」
片岡「はい。じゃ、先に行ってるね」
山下と末永が打ち合わせの為に退室した後、片岡は荷物をまとめて近場の宿泊先へと1人帰っていった。
山下「ここだ。入って」
末永「はい、失礼します」
会議室のような部屋に入ると、何やらチャラチャラした風貌の男が椅子に座って足組みをしていた。
山下「あの人が明日担当してくださる舞台監督だ」
末永「あ、末永桜花です。よろしくお願いします」
末永が深々とお辞儀をした。
監督「よろしく〜」
男からは軽い返事が返ってきた。
末永(何この人・・・こういう人苦手ー・・・)
山下「この人はな、某エンタメ会社社長の息子なんだ。失礼のないようにな」
山下が末永に小声で耳打ちをした。
末永(七光りってやつね・・・)
挨拶を終えた末永と山下が椅子に座る。
末永「えっと・・・構成を教えてもらえますか?」
監督「山下さん、説明してあげて。もう時間無いからさっさとね」
男はやけに時間を気にしているようで、山下にコンサートの構成を説明するように促した。
山下「まず、今回のソロコンサートは2部構成にすることにした」
末永「え?それって、時間も2倍ってことですか?」
山下「いや、予定の2時間30分を半分にして2部制にする」
山下「1部は一般応募からのお客さん、2部は会員サイトからのお客さんになる。チケットもそうして販売していた」
末永「そうだったんですね・・・初めて聞きました」
末永(会員サイトって何だろう・・・)
末永「あの、それで構成や衣装は・・・」
山下「まあ、そう慌てるな」
末永(慌てるなって・・・監督さん急いでるみたいなのに)
山下「所で末永はもう18になって高校卒業するんだよな」
末永「え・・・あ、はい・・・」
山下「これからはもう1人前のの社会人だ」
山下「これから生きていく中で大切なことを教えてあげるよ」
末永「・・・?」
山下「今夜はこの人の相手をするんだ」
末永「・・・は?」
山下が何を言ったのか、すぐに理解はできなかった。
山下「これからもこの世界でやっていきたいんだろ?」
末永「え・・・待ってください・・・これって・・・」
山下「上を目指したいなら、こうやって仕事を取ることを覚えたほうがいい」
末永が男のほうを見ると、にやけた顔で末永を見ている。
その時末永の耳元で、山下が小声で話しかけてきた。
山下「さっきも言ったろ。この人は大事な社長の息子なんだ」
山下「機嫌を損ねることをしたらお前だけじゃなくて、グループ全体が干されるかもしれない・・・それを良く覚えておいてくれよ」
末永(そ、そんなこといきなり言われても・・・)
動揺する末永をよそに、山下が立ち上がる。
山下「じゃあ、後はお願いしますね。明日は7時からということで・・・」
監督「おう。もし遅刻してたら先に始めててな」
山下「分かりました。・・・じゃ、頑張れよ」
末永の肩をぽんっと叩いて、部屋を出ていった。
末永(これって枕営業ってやつ・・・!?)
監督「末永桜花・・・18歳・・・今日は君か」
男は手に持った資料を机に置いて、末永を見てきた。
末永(枕営業なんて噂では聞いたことあるけど・・・何で私がこんなことを・・・)
監督「長い黒髪と細身でスラッとした体型。こういう子もいいな」
男が末永の背後に回り込んできた。
監督「ちょっと気の強そうな顔してるけど、そういう所もそそるね」
末永「あ、あの!明日のことで打ち合わせをしに・・・」
監督「そういうのは後でいいじゃん。山下さん言ってたろ?今日は俺の相手をしてくれって」
末永「私そういうことはしな・・・んむっっ!」
不意に男が顎を掴み、後ろを向かせて唇を重ねてきた。
末永(そんな、いきなり・・・!)
男は舌を侵入させようとしてきたのを、末永は口を固く閉じて拒んでいた。
男の舌が末永の唇の上を這いまわる。
末永(んんん・・・そうだ・・・この人偉い人の息子さんだから、抵抗するとみんなに迷惑が・・・)
一瞬唇を閉ざす力が弛んだ隙を狙って、男の舌が口腔に侵入してきた。
末永(こ・・・こんなのだめなの・・・嫌なのにぃ・・・)
男の舌で蹂躙されている内に、末永の頭の中に白いモヤがかかってきて、自ら舌を絡めていくようになっていた。
末永「んはっ、むちゅ、んちゅぅぅ・・・」
お互いの舌が絡み合い、いやらしい音をたてていた。
末永「んむぅぅ・・・ぷはぁぁぁ・・・」
何分経ったのか分からないくらいのディープキスを終え、男が顔を離すとお互いの唇から唾液が糸を引いていた。
末永「あはぁぁ・・・はぁぁん・・・」
末永の顔は赤く上気して、口から漏れる吐息も熱く甘いものになっていた。
監督「君のことは山下さんから良く聞いてるよ。16歳で初体験済ませていて、輪姦も経験してたりハードなことしてきたらしいじゃん」
末永「それは・・・」
今まで何度も騙されて、男達の慰み物にされてきた過去を思い出してしまう。
監督「こんな可愛い顔してるのにやることやってて・・・とんだ淫乱アイドルだね」
そう言ってまた唇を重ねてくる。
末永(そんな・・・私は違う・・・私、淫乱なんかじゃない・・・)
末永「んん、ちゅ、れろ・・・むちゅ・・・」
心では拒絶していたはずなのに、今度のキスは末永のほうから男の口内に舌を挿れていった。
末永「んはっ・・・はっ・・・ぁぁ・・・」
2回目のキスを終え、お互い顔を見合わせる。
監督「俺は君を性欲の捌け口にしてた下衆なやつらとは違う。ちゃんと一人の女として抱いてあげるからね」
男は末永の瞳をじっと見つめながら言った。
末永も男の瞳をじっと見つめ返す。
末永「・・・・・・本当ですか?」
監督(ピュアすぎるだろ・・・こりゃちょっと優しくすればすぐ騙せるわ・・・)
監督「ああ、約束する」
末永を椅子から立たせてワンピースを脱がせにかかる。
特に抵抗する様子は見られなかった。
末永「あの・・・優しくしてください・・・」
こうして、初めての枕営業の幕が上がった。
片岡「おーちゃん遅いなー。何時に帰ってくるかな」
片岡「一緒にご飯食べに行く約束したのに・・・もうお腹すいたぁ」
一方片岡はホテルのベッドでくつろぎながら、同室の末永の帰りを待ち続けるのだった。