01
友月(やっぱり・・・誰か後ろにいる?)
石黒友月、チームS所属の15歳。
最近JKになったばかりのキラキラスマイルが特徴なメンバー。
4月が過ぎたあたりからだろうか。
彼女は、帰宅中に背後から視線や気配を感じることが多くなっていた。
最寄り駅からは自宅まではそれほど離れていないが、夜公演が終わると遅い時間になってしまい、人通りもまばらになってしまう。
怖くなった友月は親に相談して、遅くなった時は駅まで車で迎えにきてもらうことにした。
それから1月ほどしたある日、親戚に不幸があったとのことで、家族で出掛けることになった。
しかし友月は公演の予定などが決まっており、数日1人で留守番しなくてはならなかった。
友月は抱えていた不安は消えていて、むしろ羽根を伸ばして自由に過ごせるという期待のほうが大きかった。
そして家族が出掛けていった当日、夜公演をこなした後に同期メンバー数人と食事をしてから帰宅の途についた。
いつもより遅くなってしまったが対して気にせず、駅からの道を歩く。
カッ・・・カッ・・・
背後に足音が聞こえてきた。
もうこの時間、住宅街に人影は無い。
友月(やだ・・・何?)
忘れていた恐怖が沸き上がってくる。
後ろを振り向くのは怖いので、早足で歩いていく。
すると後ろから聞こえてきた足音が変わり、こちらに向かって走り出してきた。
友月(何?何で!?)
友月も走り出そうとする。
だが混乱して初動が数秒遅れてしまったため、誰かに腕を掴まれる。
友月「イヤ!だれかぁ・・・むぐ」
叫び声を上げようとする口も、背後から抑えられてしまった。
??「ダメだよ、暴れちゃ」
男の声だ。
友月は背後に視線を向ける。
友月(え、見たことある・・・最近握手会に来てくれてる人だ)
そこには無精髭にシワのよったシャツ、ジーパンを身に纏った中年男がいた。
男「こんばんは、ゆづちゃん!俺のこと覚えてる?」
こくっ
友月が首を縦にふる。
男「本当に!?嬉しいなあ」
正直顔を覚えてる程度で名前などは頭に入っていなかったが。
男「俺、ゆづが中学卒業するの、ずっっっと待ってたんだよ」
友月(そう言えば、この人が私のレーンに来たのって高校入る少し前からかも・・・)
男「ロリコンなんて言われるの嫌だったしさ」
男「やっと夢が叶うよ!ゆづ、結婚しよう!」
友月(・・・?何言ってるの?)
男「もうすぐ16歳だろ?そしたら籍入れてさ」
男が一方的に語ってくる。
友月(やだ・・・このおじさんキモい)
自分の親と同じくらいか、もしかしたらそれより上かもしれない中年男にいきなり求婚されて背筋に寒気が走る。
男「握手会じゃこんなこと言えないからさ、このタイミングずっと待ってたんだ」
友月(この人おかしい・・・怖い・・・)
男「大分仲良くなってるし・・・俺と結婚してくれるよね?」
こくっこくっ
友月は2回首を縦に振った。
結婚なんてする気はさらさら無い。
だが、一刻も早くこの状況から逃げ出したい一心で頷いた。
男「おおお!やった!!」
男が口を抑えていた手を解き、スマホを取り出す。
男「証拠残すために録音しようぜ」
男「○月○日、俺はゆづにプロポーズして承諾されました」
男が友月にスマホを向ける。
男「ほら、俺のプロポーズ受け取った言葉言ってよ」
友月「え・・・わ、私は、あの・・・」
男「どうしたの?」
友月「あの、えっと・・・」
言いよどんでいる友月を見てもしやと思い問いかける。
男「もしかして、俺のこと覚えてない・・・?」
友月は、男に凄まれて身をすくめてしまう。
友月「いや、そんなことは・・・」
男「じゃあ俺の名前言ってみろよ」
友月「・・・・・・」
しまったという顔で男から視線を逸らす。
男「まさか覚えてないのかよ。俺は、こんなにゆづを愛してるのに!」
友月は俺を覚えていなかった。
あれだけ握手会に通って色んな話をしたのに。
男は怒りが込み上げてきた。
男「ふざけんなよ!今までの俺との関係はウソだったのかよ!」
友月は男の剣幕に震え、大声も出せなくなっていた。
男「くそっ!こっち来い!」
男が友月の手を引っ張り、近くの公園へと連れ込んでいく。
友月「い、痛っ」
男「はぁ、はぁ・・・ここなら誰も来ねえだろ」
小さな公園の近くには民家は無く、夜遅い時間で周囲に人影もない。
友月「何・・・何するんですか・・・?」
怒りと興奮で顔を真っ赤にしている男に聞く。
男「ふふ・・・ふふふ」
友月は突然笑い出す男に震える。
男「妊娠させちまえばいいんだろ!そうすれば、俺と結婚するしか無いよなあ!」
友月(え、妊娠なんて・・・嫌、嫌!)
腕を掴まれたままなので逃げることも出来ない。
友月は恐怖で顔をひきつらせるのだった。