乃木坂高校












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第2章
劇的な試合
「ボール!フォアボール!」
乃木坂高校は和也の四死球からランナーを出してしまう。和也がピッチャーになってから初めてのランナーだ。
和也「はぁ…はぁ…。くそっ」
先ほどの盗塁のせいなのか、制球が安定しない。
約2年運動という運動をしてこなかったので、体力の無さを実感する。
次の打者を三振に抑えて、次は4番打者を迎える。
「ボール!」「ボール!」「ストライク!」「ボール!」ボールが先行してしまう。
(しまった!!)和也は足に力が入らなかったのか、甘いコースに球が入ってしまう。
『カッキーン!』バットにジャストミートした球はライナーで一塁上に飛んでいく。
『パスッ』ファーストの人が手を伸ばすと、ボールはグラブに入り、飛び出していたランナーもアウトになった。
和也「ふぅ〜。助かった…」
幸運にも恵まれて無失点で抑えれた。
ベンチに戻ると和也は座り込み、息を整えていた。
遥香「和也くん辛そうだね」
田村「3回以降1人で投げて走ってだもんね」
乃木坂高校の攻撃はヒットは出るものの単発で終わり、得点には繋がらなかった。
キャプテン「遠藤、大丈夫か?」
和也「はい、大丈夫ですよ」
和也は立ち上がり、マウンドに向かう。
この回もなんとか無失点に抑えて、8回裏の攻撃に入る。
この回、和也から始まるが、またもや敬遠されてしまう。
飛鳥「こらーっ!勝負しろ〜!」
秋元「飛鳥!そんなこと言わないの!」
飛鳥「うぅ〜。だってさぁ〜!」
その後、1番、2番、3番打者がアウトになって、残すは最終回のみとなる。
和也はグローブを持って、マウンドに向かおうとする。
飛鳥「和!!カッコ悪い姿見せんなぁ〜!もし、点取られたら許さないからな!」
和也「ふふっ、初めて飛鳥さんに名前を呼ばれた様な気がします。怒られない様に頑張ってきますね」
その後の和也のピッチングは飛鳥の喝が効いたのか、三者連続三振を奪った。
秋元「ふふっ、飛鳥のエールが効いたね」
飛鳥「べ、別にエールじゃないし!あいつがカッコ悪かったからだし!」
美月「あれれ〜?飛鳥さん照れてる〜」
飛鳥「うるさい!!バカにすんな!先輩だぞ!」
和也が三振で抑えた事で、少し雰囲気が良くなった。

そして、最終回。最後の攻撃に入る。
「あーあ、早く帰る予定だったのにな〜!」
「でも、相手の観客可愛い子ばっかりだから良くね?」
「昼飯どこで食べる?」
相手チームはもう勝った気でいるようだ。
乃木坂高校は4番から始まる。
しかし、外野フライでアウトになり、5番も内野ゴロで2アウトになってしまう。
桃子「あと1人…。」
遥香「こんな負け方悔しい…」
みんなが諦めムードになっている中、「大丈夫ですよ!まだ終わってないですから!リラックスしましょ!」
ベンチから次の打者に声をかける和也。
しかし、『カァン』打った球はボテボテのゴロになる。
サードが取り、一塁に送球する。
打者の子も懸命に走り、ヘッドスライディングをした。ほぼ同時に球はファーストに収まり、走者は塁に手がつく。
キャプテン「どっちだ…」
「セーフ!!」奇跡的に塁に出た。
乃木坂ベンチは大盛り上がりだ。
7番バッターも打ち損じたが、ポテンヒットになり、8番バッターは四死球になる。
久保「2アウト満塁。1発出れば逆転…」
田村「次のバッターは遠藤先輩…」
「タイム!!ピッチャー交代!」
秋葉高校はピッチャーを交代した。
監督「まずいな…」
秋元「まずいってどうしたんですか?」
監督「あの選手が秋葉高校のエースピッチャーだ」
生田「うそっ!さっきの子よりもすごいって事ですか?」
監督「あぁ。秋葉高校は去年の大会でベスト4に終わったが、あの子の失点数は大会で最少失点だったんだ」
掛橋「それじゃ、先輩は打てないってこと?」
筒井「そんなこと言わないで!現実になっちゃいそう…」
掛橋「ごめん…」
相手ピッチャーが投球練習を始める。
『パァーン!!』先ほどのピッチャーとは段違いで、スピード速く、変化球も鋭い。
投球練習が終わり、和也が打席についた。
「別にお前と勝負しなくてもいいんだけどよ、監督がひねり潰せっていうから勝負してやるよ」
打席に入ると相手キャッチャーが呟いてきた。
和也「それはどーも」
そして、ピッチャーが球を投げる。
『パァーン!!』
「ストラーイク!!」
球がキャッチャーミットに収まる。
2球目。カーブボールにバットを振るが空を切る。
桃子「あぁ…。追い込まれちゃった…」
監督「流石の遠藤でもダメか…。あのピッチャーの凄いのは変化球も勿論だが、ストレートが140キロを超えるところなんだ」
田村「140キロを超える…」
遥香「まゆたんどうしたの?」
田村「先輩、バッティングセンターで140キロを打ってたよ!!」
美月「ほんと?なら打てるじゃん!」
久保「でも、ストレートだけとは限らないんだよ。変化球を投げられたら…」
みんなは祈る様に和也を見ている。
「ファール」変化球をなんとかバットに当ててファールにする。それが何球か続いた。
そして、カウントはフルカウントになった。
久保「ここで四死球だったら勝ち目はない…」
ピッチャーが投球フォームに入る。
(来る!!)和也はバットを強く握りしめた。
さくら「兄ちゃん、打てーー!!」
『カッキーン』
相手ピッチャーの渾身のストレートが、振ったバットの芯を捉えた。
「……。」静まり返るグラウンド。
そして、次の瞬間、「うわぁー!!」大声援が起こる。
和也の打ったボールはフェンスを超えて、サヨナラ満塁本塁打となった。
久保「桃子、勝った、勝ったよ!!」
桃子「うぇーん!勝ったぁ〜」
遥香「さくちゃんの大声のおかげかな?」
さくら「ちょっと恥ずかしいよ…」
秋元「飛鳥、泣いてるの?」
生田「えぇー!飛鳥が泣いてる〜!」
飛鳥「うるさい!2人だって泣いてんじゃん!」
和也はみんなが待ち構えている本塁に笑顔でたどり着いた。
「やった、よくやったぞっ!」
「勝った!勝ったぞ〜!」
みんなに揉みくちゃにされる和也。
そして、乃木坂高校と秋葉高校の交流試合は劇的な幕切れで終わりを告げた。

しゃもじ ( 2021/09/06(月) 11:10 )