乃木坂高校












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第11章
祐希の気持ち
祐希を保健室に連れてくると、保健の先生に事情を説明してベットに寝かせた。

「軽い熱中症ね…。たぶん、寝不足で体調が良くなかったのもあるかもね」
先生が祐希の状態を見て、熱中症の対処をする。

先生「これでよしっと。少し休めば大丈夫よ」
脇などに保冷剤を挟み、祐希の身体を冷やす。
すると、「先生!怪我をした子がいるので来てください!」と他の生徒が入ってきた。

先生「わかった。すぐに行くから」
先生は心配そうに祐希を見る。
和也「祐希は俺が見ているので大丈夫ですよ?」
先生「なら、お願いします。もし起きたらそこにある水を飲ませてあげて!」
和也「わかりました」
和也が返事をしたのを確認して、先生は保健室を出て行った。

和也は祐希の額にかいた汗を濡れタオルで拭いて看病をする。
少しすると、『パタパタ』と廊下が騒がしくなる。
『与田!』とみんなが保健室に入ってきた。

和也「シーッ!寝てるから」
美波「あっ、ごめん」
美月「与田は大丈夫?」
和也「軽い熱中症だって。少し休めば大丈夫みたい」
史緒里「よかったぁ〜」
みんなは大丈夫と聞いて、力が抜けたように座り込んだ。

綾乃「それにしても良く気づいたね?」
和也「みんなが手を振ってくれた時に見えたんだ」
楓「そうなんだね。流石の視野の広さだね」
理々杏「あれって選抜リレーの選手決めてたの?」
和也「うん、そうだよ?」
葉月「じゃあ、和也くんは選抜リレーに選ばれないってこと?」
和也「それはいいよ。元々、選ばれる気なかったし、祐希が無事ならそれでいいよ」
楓「選ばれる気がなかったの?」
和也「うん。俺はC組じゃないし、選抜リレーはC組のメンバーででなきゃ」
美月「……。だめ…」
美月が小さな声で呟いた。

美波「山下どうしたの?」
美月「和くん、それじゃだめだよ」
和也「美月…?」
美月「与田は寝不足になるまで練習してたんだよ?それはたぶん体育祭で優勝したかったから。だから、和くんがそんな気持ちじゃだめだよ?与田も選抜リレーで走る和くんを観たいはずだよ!」
少し涙目になった美月が和也に訴えかける。

和也「……。そうだね。俺が間違ってたよ」
史緒里「また明日走らせてもらえるようにお願いしようね?」
史緒里が優しく微笑んだ。

和也「ありがとう。それより、祐希は俺が見てるから、みんなは練習に戻って?」
桃子「でも…」
和也「みんなで優勝するんでしょ?それに、明日からは全体練習になるんだし、みんなに迷惑かけないようにしなきゃね?」
美月「……。そうだね!よしっ!みんないこ?」
美波「うん!なら、和也くんに与田のことは任せた!」
和也「了解!いってらっしゃい」
みんなは頷き、保健室から出て行く。

和也「美月!」
和也は美月のことを呼び止めた。
美月「どうしたの?」
和也「なんか…ありがとう」
美月「ふふっ、与田に手を出したら煮込んで食べてやるからね!」
ニコッと微笑んだ美月は保健室から出て行った。

祐希「う、うーん…」
30分程して祐希が目を覚ました。
和也「祐希?大丈夫?」
祐希「あれ?和くん?ここは?」
和也「保健室。祐希、熱中症で倒れたんだよ?」
祐希「熱中症?おかしいなぁ〜、今日の朝も馬刺しと納豆食べたのに。それにグレープフルーツも…」
いつも通りの天然発言を聞いて、少しホッとする。

和也「練習もいいけど、ちゃんと夜寝なきゃダメだよ?」
祐希「うーん、体育祭も近いし、迷惑かけたくないから練習しないと」
美月の予想通りだった。普段はフワフワしているが、責任感は人一倍強い。

和也「大丈夫だよ。みんなで頑張って優勝しよ?祐希1人で抱え込まなくてもいいから。ねっ?」
祐希「うんっ!それより、和くんがここまで運んでくれたの?」
和也「そうだけど、なんで?」
祐希「えぇ〜!そんなことなら、もっと痩せておけばよかったぁ〜!」
和也「全然軽かったから大丈夫だって」
祐希「おんぶ?あっ、お姫様抱っこだったりして!」
和也「いいから!ゆっくり寝てなさい!」
和也は恥ずかしくなって、窓を開けて外を眺めた。

祐希「和くん…好きっちゃん…」
和也「んっ?なんか言った?」
祐希「ううん!今度お礼に祐希の好きな馬刺し食べさせてあげるね!」
祐希はそう言って布団の中に潜った。

和也「あ、ありがとう」
和也はキョトンとした顔で、ベットの中に潜る祐希を見ていたのだった。

しゃもじ ( 2022/06/06(月) 12:04 )