乃木坂高校












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第9章
あの日の約束
和也とさくらが顔を上げると、そこには少し怒った表情をした飛鳥が立っていた。

和也「飛鳥さん…」
さくら「あすぴーさん…」
飛鳥「あの時の約束覚えてる?」
さくら「あの時の約束…?」
飛鳥「やっぱり忘れてる!合宿の時に言ったでしょ?何かあったらすぐに言うって。1人で抱え込まないって約束したでしょ?」
(飛鳥さん、そんなこと言ってくれてたんだ…)
和也は合宿の時に、さくらが急にセンターを頑張るって言った事を気にしていた。

さくら「ごめんなさい…。みんなに迷惑かけたくなかったから…」
飛鳥「誰も迷惑だなんて思ってない!!」
飛鳥が思わず大きな声を出す。

飛鳥「さくらが1人で抱え込んで、悩んで、泣いて…。そっちの方がみんな心配するんだよ!だから、もっと頼っていいの!」
いつも冷静な飛鳥が感情的になっている。
それはさくらのことを人一倍想っているからであろう。

「飛鳥の言う通りだよ」入り口から声が聞こえた。

飛鳥「真夏、それにみんなも」
そこには選抜メンバー集まっていた。
絵梨花「さくらちゃんと飛鳥の様子がおかしかったからみんな戻ってきたの」
真夏「さくちゃん?さっき飛鳥が言ったけど、さくちゃんが1人で泣いてる方が私達は悲しんだよ?」
真夏はさくらの前に座って、優しく頭を撫でた。

美月「私達も全力でさくらちゃんを支えるよ?」
史緒里「うん。だから、何でもいい。なんかあったりしたら話して欲しいな…?」
美波「1人で抱え込まなくていいんだよ」
あの日、さくらを支えると誓った同級生メンバーもさくらに駆け寄る。

遥香「さくちゃん…。1人で無理させてごめんね?」
あやめ「あや達がさくちゃんを支えるって言ったのになにも出来てなかった」
涙を流す遥香とあやめ。それに対して、さくらは「そうじゃない」と言いたいのか、首を横に振っている。

眞衣「それに1人で居残りで練習なんて水くさいぞ!あの日から私達はさくらを支える覚悟は決めてるんだから」
一実「そうだよ?私達は1人で強くなる必要はないんだよ?」
美波「私達は誰1人としての強くないんだよ?みんなが居るから強くなれるんだからね?」
みんなの優しさにさくらの涙が止まらなくなる。

飛鳥「えんちゃん。みんなが居るんだ。だから、無理して強くならなくていい。自分のペースでゆっくりでいいんだよ?それまで、私達がずっと支えるから」
飛鳥がさくらを抱きしめると、「うえーん」とさくらは大声で泣いた。
飛鳥はさくらが泣き止むまで、ずっと抱きしめて頭を撫で続けた。

そして、少ししてさくらは泣き止んだ。
さくら「みなさん、まだまだ未熟でご迷惑ばかりかけてしまいますが、わたしを支えて下さい。よろしくお願いします!」
さくらは頭を下げてお願いした。

真夏「もちろん!!」
美波「2人程、役に立てるかわからないけどね?」
美波が言う2人にみんなが目線を送る。

桃子「うえ〜ん。さくらちゃん〜!」
祐希「ぐずん!頑張ろうねぇ〜」
さくら以上に泣いているよだももコンビ。
それを見てみんなが苦笑いしている。

飛鳥「全く。手のかかる子だなぁ〜!」
さくらの表情を見て、飛鳥は少し頬が緩んだ。
美月「とか言って、飛鳥さん嬉しいくせに〜!」
飛鳥「こらっ!やま!!先輩をいじるな!」
美月「ごめんなさーい!」
美月が逃げるように和也の元に近づいてきた。

さくら「飛鳥さん、色々ありがとうございました!」
飛鳥「おう!もう約束破るなよ?」
さくら「それなんですけど、わたし、約束破ってないですよ?」
飛鳥「んっ?だって1人で抱え込んでたでしょ?」
さくらの発言に飛鳥は不思議がっている。

さくら「1人じゃないですよ?兄ちゃんに相談したんで!」
飛鳥「……。さーくーらー!!先輩に屁理屈言いやがってぇ!!」
追いかける飛鳥に対して逃げるさくら。
しかし、2人の顔は笑顔だった。

美月「これで安心したね?お兄ちゃん?」
和也「そうだね。いいメンバーだね」
美月「ふふっ、でも、さくらちゃんだけじゃなくて、わたしのことも支えてね?」
美月はそう言って和也を見つめてウィンクした。
そんな美月を見て、和也は思わずドキッとするのであった。

しゃもじ ( 2022/03/06(日) 11:49 )