乃木坂高校












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第9章
センターの重圧
セットリストも決まり、本格的にレッスンが始まる。

「久保!移動が遅いぞ!」
「賀喜、筒井!振りが早い!」
「遠藤!センターなんだからもっと笑え!」
先生の声がレッスン室に響き渡る。
1年生のメンバーは、初めてのライブを前に緊張感漂っている。

和也「おつかれ」
休憩時間になり、さくらにドリンクとタオルを渡す。
さくら「ありがと…」
さくらは笑っていたが、明らかに作り笑いで元気がなかった。

和也「今日の帰り寄り道して行かない?」
さくら「うーん、今日はレッスンが終わってからも練習しようと思ってるんだ」
和也「そっか。あんまり、無理しないようにね?」
さくら「大丈夫だよ。ありがと…」
和也はさくらのことが気になりながらも、他のメンバーのケアもあるのでその場から離れた。

遥香「さくちゃん大丈夫だった?」
あやめ「すごく思い詰めてそう…」
遥香とあやめがさくらを心配して、様子を聞いてくる。

和也「うーん、だいぶ無理してるかな…」
遥香「私達に出来ることあるかな…」
あやめ「心配でやんす…」
和也「強がって自分から泣き言言わないからな…とりあえずもう一回話してみるよ」
遥香「和くん…お願いね?」
和也は頷き、休憩時間が終わった2人は戻っていった。
そして、もう1人、心配そうな目でさくらを見ている人物がいた。

その後、レッスンが終わり、さくらは1人で鏡の前で振り付けを確認していた。

さくら「全然だめだ」
納得のいく踊りが出来ず、どんどん気持ちが落ちていく。

さくらは思わず周りを見てしまう。
いつも居残り練習する時は和也がいてくれた。
さくら「兄ちゃん、帰っちゃったよね…」
レッスン室には自分1人しか居ない。

さくら「今回は1人で頑張らなきゃ…」
さくらは泣き虫で弱い自分から卒業するために、今回は1人で頑張ると決めていた。
しかし、全然上手くいかず、自己嫌悪になってしまう。

さくらは座り込み顔を伏せてしまう。
さくら「兄ちゃんに会いたいな…」
辛い時や寂しい時はいつも和也の笑った顔を思い浮かべる。

「おーい!」耳元で和也の声が聞こえる。
(兄ちゃんの声?空耳かな…)
さくらは空耳だと勘違いして、全く反応をしなかった。

和也「さくらー?寝てるのかな?」
(空耳…じゃない…)さくらは顔を上げると、そこには笑顔の和也がいた。

和也「あっ、起きてた」
さくら「兄ちゃん…?」
和也「お腹空いたでしょ?これ買ってきたんだ」
和也は袋からみたらし団子を取り出した。

さくら「みたらし団子だ…」
みたらし団子はさくらの大好物だった。
和也「お茶も買ってきたから」
和也はさくらの横に座って、みたらし団子をさくらに渡した。

さくら「ありがと…兄ちゃん、帰ったんじゃないの?」
和也「さくらが1人で頑張ってるのに帰るわけないでしょ?これを買いに行ってただけだよ。ほらっ、早く食べな?」
さくらはみたらし団子を一口食べると、ポロポロと涙を流し始めた。

和也「やっぱりプレッシャーを感じる?」
さくらは小さく首を縦に頷く。

さくら「やっぱり怖いよ…ミスしちゃうこと考えちゃうし、みんなや先輩に迷惑かけたくないし…」
ライブが近づくにつれて、さくらは相当追い込まれていた。

さくら「笑いたくても上手く笑えないし、それに…」
さくらは思ってることを全部吐き出した。
和也は隣で「うん、うん」と何も言わず返事だけしていた。

さくら「強くなる為に1人で頑張ってみようと思ったけど全然ダメで…今も泣いちゃって兄ちゃんに迷惑…かけてる…」
さくらの話が一通り終わり、和也が話だそうとした時、「約束をやぶったな!」
と誰かの声が聞こえた。

和也とさくらが声の先を見ると、そこにはあの人が立っていた。

しゃもじ ( 2022/03/05(土) 12:50 )