日向高校




























小説トップ
第26章
逃げる2人とバレンタイン
美玲「じゃあ、また後でね!」
美玲の昼からの授業が移動教室なので、早めに教室に戻る。

和也「うん、また後で」
美玲と別れて教室に向かうと、ドアから教室を覗き込んでいる美玖がいた。

和也「どうしたの?」
和也が美玖の背後から声をかけると、身体が『ビクッ』と反応した。

美玖「すみません、すみません。何でもないです」
やたら早口で振り向かずに立ち去ろうとする美玖。

すると、「んっ?」と急に足を止める。
美玖「今の声って…」
美玖が後ろを振り向くと、キョトンとした顔の和也がいた。

美玖「か、和くん!?」
和也「そうだけど…。誰だと思ってたの?」
美玖「いや〜、あははっ!知らない人に声をかけられたと思って」
どうやら、知らない人に話をかけられて、お得意の人見知りが発動し、逃げようとしたらしい。

和也「そうなんだ。それで誰か探してるの?紗理菜とか?」
美玖「ううん、和くんを探してたんだ!」
和也「俺を?ごめん、美玲とご飯食べてた」
美玖「全然!連絡しずに来ちゃった私が悪いから」
和也「ありがとう。それでどうした?」
美玖「あのね…」
美玖が話し出そうとすると、「おっ!金村さん!」と同級生の男子が美玖を見つけて、集まってくる。

「俺にチョコくれるの?」
「ホワイトデーのお返し何が欲しい?」
あっという間に取り囲まれ、美玖は困った顔をして笑っている。

和也「行くよ?」
和也は美玖の手を握って、その場から逃げ出した。
「あっ!佐藤!独り占めか!?」
和也「ごめーん!ちょっと話があるから!」
和也はそう言い残し、1年生の教室がある1階に移動した。

和也「ここまでこれば大丈夫でしょ?」
美玖「う、うん!ありがとう。なんかドキドキしちゃった」
和也「ごめん、急に走ったからだよね?美玖が困った顔してたから、慌てちゃってさ」
美玖「そーゆうことじゃないよ?和くんが私を守ってくれてるみたいだったもん。だから、ありがと?」
和也「どういたしまして。それで、なんの用事だったの?」
美玖「あっ、そうだった!あのね…」
美玖が再び話し出そうとすると、「あーっ!」と聞き覚えのある声が…。

鈴花「先輩じゃないですか〜!」
好花「先輩がいるなんてめずらしいですね?」
愛萌「もしかして、私からのチョコを貰いに来てくれたんですかぁ?」
次は1年生メンバーに和也が絡まれ始めた。

和也「えーっと、これは…」
どう切り出したらいいのか分からず、返答を考えていると、「和くん、行くよー!」と美玖が和也の手を握って走り出した。

鈴花「あっ!逃げた〜!」
好花「きんちゃん!?」
愛萌「せんぱぁ〜い!あとで、チョコあげますからねぇ〜!」
2人は逃げ出して使ってない教室に入った。

美玖「ふーっ、疲れたぁ〜!」
和也「ふふふっ、守ってくれてありがとうね?」
美玖「お互い様ですよ?」
廊下側の窓の下にもたれかかって座る。

美玖「やっと2人っきりになれた…」
美玖は和也の方に頭を乗せる。

和也「バタバタだったね。それで?どうした?」
美玖「あの、これを和くんにあげたかったんだ!」
美玖はブレザーのポケットから袋を取り出す。

美玖「バレンタインにクッキー作ったの。美味しいか分からないんだけど…。でも、一生懸命作って、あっ、お母さんに味見してもらったよ?それに…」
美玖は相変わらず早口で喋り出す。

和也「あははっ、ありがとう。すごく嬉しいよ。さっそく食べていい?」
美玖「あ、はい!どうぞ」
和也は袋からハート型のクッキーを取り、口の中に入れる。
美玖は心配そうに和也が食べている姿を見ている。

和也「うんっ!美味い!!」
美玖が作ってくれたクッキーはしっとり系で、和也が好きなタイプだった。

美玖「ほんと!?えっー!嬉しい!」
和也「ありがとう!これで昼からも授業頑張れるよ」
美玖「ほんとですか!?あぁー、どうしよう!今、絶対顔がニヤけてる」
和也「可愛い顔してるから大丈夫だよ」
美玖はパァッと笑顔になり、恥ずかしかったのか、すぐに顔を隠した。

その後、休み時間が終わるまで美玖と話していたのだった。

しかし、教室から出た時に鈴花達に見つかり、和也は逃げるように教室に戻って行った。

しゃもじ ( 2022/04/06(水) 12:34 )