日向高校




























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第23章
ハーフタイム
試合開始から20分。
相手が高い位置でボールを奪い、ゴール前まで一気に駆け上がる。
そして、GKと1対1になり、シュートを打たれて、ネットを揺らした。

久美「あっ!点、とられちゃった!!」
芽依「どないしよ…」
優佳「大丈夫!まだ前半だから、全然時間あるよ!」
菜緒「和くん…頑張って…」

(さて、どうしたものか…)
先制点を取られて、更にこちらの流れが悪いうえに、昨日、みんなで考えた作戦も上手くいかない。
主将「和也!!走れ!」
急に呼ばれて我に返り、相手の裏を取った味方からのロングボールを追いかける。
「なんだあいつ!めっちゃ速いぞ!」
グングン加速する和也を見て、相手選手は衝撃を受ける。
しかし、パスが長くなり、相手GKにキャッチされた。
和也「クソッ」
チャンスを生かされなかったことに対して悔しがる。
和也がこんな感情的になるのは珍しかった。

美穂「あぁ!!惜しい!」
ひより「もうちょっとだったのに!!」
史帆「和くんのあんな悔しそうな顔初めて見た…」
今日初めてのチャンスは、次に繋がるものになったと同時に、相手チームに和也の足の速さの情報を与えた。

その後、両校点が取れないまま、前半が終わった。
ハーフタイムになり、後半からの作戦を考える。
顧問「もしかしたら、相手さんはゼロトップかもしれんな」
主将「ゼロトップですか!?」
顧問「恐らくな。ただ、まだ完璧じゃないんだろう。あれはそんな簡単に出来るもんじゃないからな。未完成でこの試合でどこまで出来るか試してるかもしれんな」
顧問の先生の話を聞いているメンバー。
そんな中、和也は輪から離れて優佳の所に向かった。

和也「ねぇねぇ、優佳」
優佳「和也くん!どうしたの?今、話し合い中でしょ?」
美玲「わぁーい!和くんだぁ!」
和也「美玲、応援ありがとね。それでさ、ゼロトップってなに?」
優佳「ゼロトップ?急にどうしたの?」
和也「いや、今顧問の先生がそんなこと言ってたからさ。話聞いてても分からないし、優佳に聞こうと思って」
優佳「そういうことか。説明するのは難しいんだけど、そうだな…。前、一緒に見た動画覚えてる?」
和也「動画…うん。覚えてるけど」
優佳「その中にスペインのチームの動画があったでしょ?綺麗なパス回しをしていて、和也くんが興奮してたの」
和也「うん、あれすごかったよね!」
優佳「そうだね。それで、あのチームがゼロトップの完成形だったの。高い位置からプレスをかけて、パス回しで相手を崩して、シュートする。だから、中盤でのプレーが多くなるの」
和也「中盤での…。なるほど!ありがと!」
和也はお礼を言って、輪の中に戻っていった。

紗理菜「ねぇ、かげこ。前一緒にってなんのこと?」
優佳「えっ、なんでもないよ!一緒にサッカーのお勉強しただけだよ!」
愛奈「なんか怪しいなぁ〜!」
優佳「ないない、なんも怪しくないから!」

主将「どう攻略するかだな…」
輪の中に戻ると、みんなは後半の作戦を話し合っていた。
和也「あのさ、カウンターでどうにかならないの?」
部員A「和也!どこいってたんだよ!」
和也「ごめんごめん。ちょっと気になることがあってさ」
主将「それで、カウンターって?」
和也「前半の途中で、1回だけチャンスあったじゃん?あの時って…」

和也は前半の相手チームの動きについて話した。
顧問「よし!それでいってみるか!」
『はい!』ハーフタイムが終わり、みんなは気合いを入れ直して、ピッチに戻っていく。

主将「和也、どうして相手の動きがわかったんだ?」
ポジションに着く途中、主将が話をかけてきた。
和也「んっ?なんとなくだよ?」
主将「なんとなくってお前な…。まぁ、今はそのなんとなくを信じるしかないな。後は任せたぞ!」
和也は頷き、ポジションに着いた。

和也がハーフタイムの時に伝えたことは、日向高校がペナルティーエリア付近でボールを持つと、DFの最終ラインがハーフラインまで上がること。
そうなったら、ロングボールのカウンターで点を取ることだった。

主将は何故分かったか気になっていたが、和也は普段からメンバーの事を気にしている為、周りをよく見るようにしている。そのクセが今回の作戦に役立ったのだ。

そして、運命の後半戦が始まろうとしていた。

■筆者メッセージ
めいおしさん
コメントありがとうございます!
そう言ってもらえると嬉しいです!
めいめいとの話は近いうちに作ろうと思います!
しゃもじ ( 2021/12/01(水) 20:58 )