試合前日
練習試合まで残り1日となった。
昼休み。サッカー部のメンバーと明日の練習試合の作戦を考えることになった。
主将「それで、ここでオーバーラップをして、サイドチェンジ。そうすればフリーになるだろ」
よくわからない言葉が出てきて、ただ話を聞いてるだけになった。
話を聞いている中で、和也はあることに疑問を思った。
練習試合で、本番の試合ではないのに、なぜここまで力を入れるのだろう。
作戦会議が終わり、和也は優佳の元に向かった。
和也「優佳、ちょっといいかな?」
優佳「和也くん、どうしたの?」
和也「あのさ、サッカー部の事で気になる事があって」
優佳「サッカー部…?もしかして、何か問題でもあった?」
和也「いや、失礼な話なんだけど、練習試合なのに、なんかやけに力が入ってるなーって思って」
優佳「そのことか……。今まで黙ってたけど、この試合で負けたらサッカー部、廃部になっちゃうかもなんだ…」
和也「えっ…なんで?」
優佳から聞いた衝撃の事実。
優佳の話では、人数が少なく、試合も負けてばかりなので、今回の練習試合で結果が求められているみたいだ。
和也「そうだったんだ…」
これで全て腑に落ちた。サッカー部のメンバーが集まらなくても中止にならなかったこと。白石先生が協力的だったこと。
優佳「黙っててごめんね?和也くんに余計な心配かけたくなくて…」
和也「ううん、話してくれてありがと。なら、この試合は絶対負けられないね!」
優佳「和也くん…ありがと…」
その日の放課後。サッカー部は明日の為に早く練習を切り上げた。
主将「和也、明日はよろしくな!また明日!」
和也「うん、また明日」
サッカー部のメンバーと別れて、和也は職員室に向かった。
和也「白石先生、お願いします!」
白石「うーん。私が顧問じゃないから、あまり協力できないけどわかった」
和也「先生…ありがとうございます!」
白石先生にお礼を言い、職員室を出て、再びグラウンドに行く。
和也はゴール前にボールかごを置いて、右サイドからボールを蹴り上げる。
和也は自分に出来ることがないか考えた時に、ゴールを奪うのは難しいと思い、センタリングを上げてチャンスを作るという考えに至った。
しかし、そう上手くはいかないもので、いくら蹴ってもボールかごの近くにいくが、かごの中に入ることはなかった。
日が落ちて辺りが暗くなる。そこに『パァッ』とグラウンドの照明がついた。
これは和也が先生にお願いした事だった。
その後、蹴ってはボールを拾いに行く事を繰り返した。
和也「はぁ…はぁ…全然ダメだ。上手くいかないや」
上手くいかないことで気持ちが落ちて、ボールを拾いに行くのでさえ嫌になる。
和也はグラウンドに寝っ転がり、目を閉じて気持ちを落ち着かせる。
「冷たっ!!」頬に冷たい何かが触れた。
目を開けるとそこにはアイドル部のメンバーが立っていた。