学園祭まで残り2日。
アイドル部の方はだいぶ形になり、最後の仕上げに入っている。
しかし、その中で1人悩んでいる人がいる。
和也はその子に話を聞く為に、そっと近づこうとすると、「私にいかせて？」と声をかけてきた。その子の真っ直ぐな目を見て和也も頷いた。
和也「なら、任せてもいいかな？」
「うんっ！」力強く頷いてくれた。

菜緒「ひよたん、どうしたの？」
ひより「菜緒…。なんかちょっと分からなくなっちゃった」
菜緒「分からなくなったの？何にかな？」
ひより「陽菜や菜緒や他の人もみんな力を付けているのに、ひよたんだけ変わってないような気がして…」
菜緒「なんでそう思うの？」
ひより「みんな個性があって、自分を見つけれてると思うんだけど、ひよたんは自分の特徴が無くて、ただ居るだけな気がして…ひよたんは必要なのかなって」
菜緒「そうなんだね…。でも、菜緒はひよたんが必要だよ？もちろんみんなも」
ひより「なんで？何もしてあげれてないよ？」
菜緒「ううん、ひよたんの笑顔ってみんなを癒やしてくれるし、ライブ前に菜緒が緊張してると、背中をさすってくれたり、ひよたんが居てくれたから頑張れたこともいっぱいあるよ？」
ひより「菜緒…」
菜緒「ひよたんはひよたんのまま、思いっきり楽しめばいいんだよ。ひよたんの笑顔がみんなを笑顔にしてくれるから？ねっ？」
ひより「うん！菜緒、ありがと…」
菜緒「よしっ！それじゃ、練習頑張ろうね？」
菜緒は立ち上がり、ひよりに手を差し伸べた。
ひよりはその手を強く握り、立ち上がった。
菜緒「ひよたん、痛いよ〜！」
ひより「えへへっ、ごめーん！」

和也「菜緒も強くなったね…」
心配そうに見ていた和也は、2人の姿を見て微笑んだ。
そして、あることを思いつき、白石先生と七瀬さんに相談した。
白石「えぇ！！振り付けを一部変更したいですって！？」
七瀬「それはまた急やなぁ〜」
和也「ごめんなさい。でも、どうしてもお願いします。2人にとって大事な事のような気がして」
白石「2人にとって？どういうこと？」
和也はさっきの菜緒とひよりのことを説明した。
白石「なるほどね。でも、どういう風にしたいかイメージはあるの？」
和也「はい。ぼんやりですけど…」
2人にどういう振り付けにしたいか説明した。
七瀬「うん！それええんちゃう？」
白石「確かに…。曲のコンセプトは合ってるわね。よしっ！それでいきましょ！佐藤くん、2人を呼んでくれる？」
和也「はい！！ありがとうございます！」

和也は菜緒とひよりを呼んで、振り付け変更と内容を説明した。
和也「という訳だけど出来るかな？」
菜緒「ひよたん、出来るよね？」
ひより「うん！先輩！ひよたん、その個性を活かしてみます！」
2人の笑顔に和也も安心した。
その後、みんなに集合をかけて、振り付け変更の説明をした。
和也「とりあえずやってみるね。菜緒、ひよりお願い。先生たちもお願いします」
『はい！』菜緒とひよりはステージに上がり、他のみんなはステージ下から観ることになった。

和也「それじゃ、いくよ？」
『〜〜♪』ピアノの音と共に和也が歌い出す。
「夜が明けて行く　遠い地平線の彼方　世界はこんなに広かったと知った…」
それと同時に2人は踊り出した。
手を繋ぎ、ひよりがバレエの動きをして、菜緒も合わせ、2人は笑い合っている。
先生たちがそれを応援する振り付けをした。

和也「どうかな…？」
一通り終わってみんなに感想を求めた。
静まり返る体育館。すると、『パチパチパチパチ』と拍手が起きる。
美玲「みーぱん、感動しちゃったぁ〜」
史帆「としちゃんは泣けてきたぁ〜」
久美「うん！2人の良いところが詰まってるね！」
陽菜「ひよたん、綺麗です！」
鈴花「2人を応援してる感じがまた良いよね！」
好花「うんうんっ！先輩の曲にぴったりや！」
和也「なら、この振り付けに変更してもいいかな？」
美穂「もちろんです！」
美玖「はい！よろしくお願いします！」
ひなの「発表が楽しみです！」
2日前の振り変更なのに、みんなは文句一つ言わず、逆に喜んでくれた。

部活が終わって部室に戻る。その途中、菜緒を引き止めた。
和也「菜緒、ありがとうね？」
菜緒「何が〜？菜緒は本当のこと言っただけだよ？」
和也「そっか。菜緒も強くなりましたなぁ〜」
和也は菜緒の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
菜緒「もぉ〜、やめろ〜！髪が崩れるやんかぁ！」
和也「崩れた髪型も可愛いから大丈夫だって」
菜緒「笑っとるやん！絶対バカにしてるやんか！」
久美「2人とも〜、早く教室に戻ってクラスの手伝いするよ〜！」
和也「はーい！菜緒、いくよ？」
和也は菜緒に手を差し伸べた。
菜緒「うんっ！」
菜緒はその手を笑顔で握りしめた。