日向高校




























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第10章
美穂の答え
美穂「先輩、私ね、土曜日の試合が終わったら、バスケ部を退部しようと思ってるんです。」
和也「えっ・・・?」
美穂からは予想もしてない返答だった。
美穂「ずっと考えていたんです。どちらかを選ばなきゃって。でも、バスケも好きで、アイドル部も好きで選べなくて。」
和也「渡邊さん。でも・・・」
美穂「でもね、先輩。先輩が私の道標になってくれたんです。」
和也「俺が渡邊さんの道標?」
美穂「はい。先輩は、みんなは俺の夢だからって言ってくれました。その言葉がすごい嬉しくて、あっこんな私でも期待してくれる、輝かせてくれるんだと思いました。」
渡邊さんの声が震えている。泣くのを我慢しているんだ。
美穂「私も先輩の期待に応えたい。先輩の夢を一緒に叶えたい!と思えて決心が出来ました。私もアイドル部のみんなと一緒に夢を叶えたいです!」
美穂の決意に和也は自然と涙が流れた。
美穂「なんで先輩が泣いてるんですか〜。」
美穂もつられて泣き始めた。
和也「何でだろうね。自分でもわかんないや。でも、ありがとう。」
美穂「いえ、私の方がありがとうございます。それで、先輩にお願いしたいことがあるんです。」
和也「どうしたの?」
美穂「メンバーのみんなには自分の口から言いたいんです。だから、土曜日の試合みんなと来てほしいんです。みんなに私の高校最後の試合を見て欲しくて。」
和也「わかった。みんなと一緒に応援に行くから。」
美穂「ありがとうございます!それで、もし試合に勝ったら、お願い聞いてください!」
和也「うん。いいよ、何がいい?」
美穂「もし勝ったら、美穂って呼んでほしいのと、デートしてください!」
和也「うん。分かった!」
美穂「やった!頑張るぞ〜!」
渡邊さんは笑顔になった。いつもみんなを元気にしてくれる優しい笑顔に。
次の日の朝。白石先生のところに向かった。
和也「先生。土曜日って何かしていますか?」
白石「今のところ予定はないよ?どうした?」
和也「渡邊さんの試合があるので、一緒に観に行きたいんです。」
白石「美穂さんの試合?わかった。行きましょ!」
和也「ありがとうございます!それでは。」
和也は職員室を出た。放課後、みんなに同じことを言う。
史帆「美穂の試合観に行きたい!」
鈴花「みーたんの試合行きたいです!」
みんな快くオッケーしてくれた。

試合当日。みんなで試合会場に向かう。
美玲「白石先生も来てくれたんですか?」
白石「佐藤君にデートして下さいって言われたからね?」
史帆「ちょっと和君!やっぱり大人の女の人がいいの!!?」
彩花「サイテー!」
菜緒「見損なったわ!」
和也「誤解だって!先生もそんな冗談言わないで下さい!」
白石先生は笑っていた。試合会場に着き、日向高校の応援席に座る。
史帆「あっ美穂だ!みーほー!!!」
かとしが渡邊さんに手を振る。渡邊さんも気づいて手を振り返す。
白石「佐藤君。この試合は何か違った意味があるのよね?」
白石先生は薄々何かに気づいていた。
和也「はい。渡邊さんの姿をずっと見ていて下さい。」
試合が始まる。渡邊さんはベンチスタートだ。第1クォーター。日向高校は劣勢だった。相手の高校はスピードが速く、展開についていけてなかった。
美玲「うぅー負けてる〜。」
久美「日向高頑張って〜!」
みんな全力で応援する。第2クォーター。日向高が動きだす。渡邊さんが試合にでた。
濱岸「美穂がでた!!」
美玖「美穂頑張ってー!!」
明里「美穂ー!!」
渡邊さんの交代は見事にハマって、だんだん点差を縮めてきた。そして、試合はハーフタイムに入る。
史帆「バスケの公式試合初めて観たけどすごいね。」
高瀬「迫力が凄いわ〜!」
京子「美穂も凄いね!」
ハーフタイムが終わり、試合が再開する。第3クォーターが始まり、相手チームが動きだす。渡邊さんにダブルチームを付けて防ぎにでた。日向高は渡邊さん以外の人は、相手チームのスピードについていけていないので、たちまち点差が開く。『頑張れ美穂ー!!』メンバーも必死に応援した。第3クォーターが終了して、51対39で日向高が負けている。
菜緒「和君。この点差はあと10分だと逆転は難しいの?」
菜緒が心配そうな顔で聞いてきた。
和也「簡単ではないけど、逆転出来ないこともないよ。」
しかし、みんなの願いは叶わず点差は徐々に広がった。でも、どれだけ点差が広がろうと渡邊さんは諦めなかった。その姿をみんなは黙ってみていた。ラスト10秒。美穂にボールが渡る。美穂はスリーポイントラインでシュートフォームに入る。
美穂「先輩!スリーポイント教えて下さい!」「また一緒に練習して下さい!」
和也はその姿ををみて、美穂との練習を思い出し泣けてきた。
和也「美穂!いけー!」
和也は大声で美穂を応援した。「シュっ」美穂の打ったボールは綺麗な弧を描いていた。それは和也が打つスリーポイントの弧とよく似ていた。「パシュ」綺麗な弧を描いたボールはノータッチで網をすり抜けた。そして、試合終了のブザーが鳴る。たった今、美穂の高校バスケは終わった。

しゃもじ ( 2021/05/11(火) 21:50 )