日向高校




























小説トップ
第9章
ヤキモチ
次の日のお昼休み。菜緒が教室まで迎えに来て、部室近くの木陰下のベンチにいく。
菜緒「はい。お弁当。」
和也「ほんとに作ってきてくれたんだ。ありがと。」
菜緒「自分でお願いしたくせに。」
和也「まぁそうだけど、ほんとに作ってくれるとは思わなかったよ。」
菜緒「和君に恩返しがしたいんだよ。」
和也「恩返しされることは何もしてないけどね。」
菜緒「いい加減その鈍感直した方がいいで!」
和也は苦笑いしながらお弁当を開ける。
和也「めっちゃ美味しそう!」
菜緒「美味しそうじゃなくて、美味しいんだよ!」
おかずを手に取り口に運ぶ。「美味しい!!」あまりの美味しさに、リスのように口いっぱいにする和也。その姿をみて菜緒は微笑んでいた。
菜緒「そーいえば、もらっているラブレターはどうしてるの?」
和也「ん〜家に帰ったら読んではいるよ。」
菜緒「そうなんや。どんな内容なの?」
和也「なんか、連絡してください。みたいな感じかな。」
菜緒「連絡してるの??」
和也「してないよ。今は部活のことで忙しいからね。そもそも、連絡先もメンバー以外持っていないよ。」
菜緒「そうなんや。なんか安心した。」
和也「何に安心したの?」
菜緒「和君優しいから、みんなと連絡とってるかと思ったから」
和也「ないない。大丈夫だから安心して。」
菜緒は笑顔で頷いた。お昼休みも終わり、教室に戻っていると白石先生に会った。
白石「佐藤君!今日の部活になーちゃんが来るんだけど、私、職員会議で行けそうにないから、なーちゃんのことお願いしていいかな?」
和也「わかりました!」
「よろしくね!」そう言って白石先生は行ってしまった。
午後の授業を終えて部活時間になる。
みんながランニングに行っている間に、校門まで七瀬さんを迎えに行った。
和也「七瀬さん!待たせてすみません。」
七瀬「佐藤君。迎えに来てくれてありがと。夏祭りの公演がんばろうね!」
和也「はい!よろしくお願いします!」
メンバーがランニングから帰ってきて、体育祭に向かう。和也は七瀬と、ライブ中の動きの確認をしている。
美玖「菜緒。顔が怖いけどどうしたの?」
菜緒「なんもない。」
体育館の練習は、立ち位置を頭に入れることからスタートする。
和也「富田さんちょっと左!濱岸さんももう少しよろうか!」
「はい!」みんなの一生懸命さが伝わってくる。
七瀬「小坂さん動きが遅いで!気をつけて!」
菜緒は七瀬さんの指示に対して、返答をしない。明らかに何かがおかしい。
史帆「こしゃ体調悪い?大丈夫?」
美玲「ちょっと休む??」
菜緒「大丈夫です!すみません!」
1時間ほど動きの練習をして、休憩にする。休憩中菜緒の姿が見えない。
和也「菜緒どこにいった?」
愛萌「菜緒なら休憩になったら出て行きましたよ?なんか様子おかしかったですけど、監督何かしましたか?」
和也「ん〜何も身に覚えがないんだけどな〜。」
和也は菜緒を探しに行こうとすると
七瀬「ななが行ってくるよ。」
和也「七瀬さん。でも・・・」
七瀬「大丈夫。私に任せて!」
そう言うと七瀬さんは菜緒を探しに行った。

〜菜緒side〜
(私、最低だ。七瀬さんは悪くないのに嫌な態度とっちゃった。)
部室近くの木陰下のベンチで、泣きそうになっている。
「隣いいかな?」声が聞こえたので、顔を上げると七瀬さんがいた。
菜緒「はい・・・。」
七瀬さんが隣に座る。すると、
七瀬「小坂さんは佐藤君が好きなんだね?」
七瀬のド直球の質問に焦りはじめる菜緒。
菜緒「なんで、なんでですか?」
七瀬「好きなんだ。」
菜緒は図星を突かれて無言になる。
七瀬「佐藤君と私が話してるから、嫉妬しちゃったんだね」
菜緒「はい。すみません。」
七瀬「謝ることじゃないよ?佐藤君と私が話してる時に、ずっと怖い顔で見てたから、私のこと嫌いなのかと思ったけどね!」
七瀬さんは笑いながら言う。
菜緒「違います。そんなことありません!」
菜緒は全力で否定した。
菜緒「なんか気になっちゃうんです。メンバー相手なら気にならないんですけど、他の人と仲良くしてるのをみると、和君がどっかに行っちゃう気がして。」
七瀬「ほんとに好きなんだね。なんか羨ましいよ。」
菜緒「羨ましい?なんでですか?」
七瀬「大人になると、感情だけで素直に動けなくなるからね。だから、素直に動けるのが羨ましい。」
七瀬さんの顔を見ると悲しそうな表情をしていた。
七瀬「佐藤君なら大丈夫だよ?ずっとみんなのことを思ってるから、絶対どこにも行かないよ?」
菜緒「・・・。でも、やっぱり怖いです。」
七瀬「大丈夫。絶対に一番に菜緒ちゃん達のこと考えているから。」
「菜緒!!」少し離れたところから和君の声がする。声がした方を見ると、和君が走ってくる。
七瀬「ねっ?いつも菜緒ちゃん達を心配してるよ?」
「はい!」菜緒は笑顔で七瀬の言葉に返答した。
和也「大丈夫?お腹が痛いとか?お昼になんか変なもの食べた?」
「パァン!」「いたっ!!えっ?」和也は菜緒に頭を叩かれて混乱する。
菜緒「今日のお昼は菜緒が作ったお弁当しか食べてへんわ!」
和也「あっ・・・」
七瀬「この天然で鈍感だと、菜緒ちゃんが気にするのも無理ないわ」
菜緒「七瀬さん!和君なんてほっといていきましょ!」
菜緒は七瀬の手を引いて体育館に戻った。和也も慌てて追いかけて行った。

しゃもじ ( 2021/05/09(日) 14:25 )