日向高校




























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第7章
ごめんよりもありがとを
金村さんの近くに行くと、一年生の男子が何かで揉めている。
和也「菜緒どうしたの?」
近くにいた菜緒に事情を聞く。
菜緒「練習してたら金村が転んじゃって。歩けなさそうだから、誰がおんぶして保健室に運ぶか男子が揉めちゃって。」
菜緒もおどおどしている。
和也は菜緒の頭を撫でて「大丈夫」と言って金村さんのところに行く。
和也「金村さん大丈夫?」
美玖「先輩。ちょっと派手に転んじゃいました。」
泣くのを耐えている金村さん。足を見ると膝が擦り付けて血が出ていた。
和也「保健室まで運ぶから背中に乗って?」
美玖「はい!すみません。」
金村さんが和也の背中に乗る。
すると後輩が和也に絡んできた。
後輩A「なんで先輩がでてくるんですか?せっかく美玖ちゃんと絡めるチャンスだったのに。」
後輩B「美玖ちゃんは俺らが運ぶんでおろして下さい。」
和也は自分勝手な後輩にイラッとした。
和也「君たちの勝手な都合で、美玖を巻き込むなよ。美玖がどれだけ痛いのを耐えていたと思ってんの?邪魔だからどいてくれる?」
和也の聞いたことない声にびっくりするアイドル部の後輩たち。和也は金村さんをおんぶをして運んで行った。
「くそっ」その後ろ姿をみて、後輩呟いた。
和也「失礼します。あれ?誰もいない。」
保健室に着いたが先生がいなかった。
和也「消毒するから、椅子に座って?」
美玖「はい。ありがとございます。」
消毒液とガーゼと絆創膏を持ってきて、金村さんの前に座る。
和也「ちょっとしみるからね?」
美玖「うぅ。いたっ。」
消毒が終わり絆創膏をつけた。
和也「これで良し!よく頑張ったね。」
和也は金村さんの頭を撫でる。
和也「今日の練習は無理そうだね。歩いて帰るのはきついよね?どうしよう」
美玖「親に電話してみます。あっ、スマホ教室だ」
和也「取ってくるよ。金村さん何組?」
金村さんにクラスと席を教えてもらって、かばんと制服を取りに行く。
保健室に戻ると、金村さんは泣いていた。和也はそっと近づく。
和也「大丈夫?」
美玖「なんでいつもこうなんだろう。頑張ると空回りしちゃって、先輩にも迷惑かけて。」
和也「迷惑じゃないから大丈夫だよ?だから泣かないの。」
和也はハンカチで金村さんの涙を拭いた。金村さんは笑ってくれた。
和也「とりあえず親に電話してみて。」
金村さんが電話をする。
美玖「もしもし、ママ?体育祭の練習してたら足怪我しちゃって。迎えに来れる?えっ?うん。分かった。いいよ?気にしないで。じゃあね」
明らかに表情が曇っている。
和也「なんだって?」
美玲「まだ仕事中らしくて。帰るのにまだ少し時間がかかるそうです。」
和也「・・・」
和也は考え込んでいた。ぱっと何かひらめいた顔をして
和也「金村さんちょっと待ってて。」
そう言って走り出した。
和也はグラウンドに行き、菜緒と佐々木さんに事情を説明しに行った。事情を説明して保健室に戻ってきた和也。
和也「俺がおんぶして送るから行こっか。」
美玖「えっ?流石にそれは悪いですよ。重いですし、先輩が大変です。」
和也「俺は大丈夫。金村さんは軽いから大変じゃないよ?それに、菜緒とキャプテンからもお願いされたから。」
美玖「でも・・・」
和也「大丈夫だよ?行くよ?」
そう言って遠慮する金村さんを背中に乗せて歩き出す。
美玖「ほんとすみません。」
帰り道何回も謝る金村さん。
和也「謝りすぎ。迷惑じゃないからもう謝るの禁止。次謝ったら罰ゲームね?」
美玖「罰ゲームってなんですか?」
和也「ん〜考えてなかった。」
美玖「あははっ。何ですかそれ!」
やっと金村さんが笑ってくれた。
美玖「先輩?転んだ時すぐ来てくれてありがとうございます。凄く嬉しくて、痛いよりも、嬉しくて泣きそうになりました。」
和也「うん。それでいいんだよ!」
美玖「それでいいって何がですか?」
和也「ごめんよりもありがとうの言う数を増やしていこ?ごめんよりもありがとうの方が、俺も言われて嬉しいから。」
和也の優しさに泣きそうになる美玖。
美玖「先輩ありがとう。それに、男子に怒ってくれてありがとうございます。」
和也「いいよ。自分勝手な人間が苦手だからさ」
和也は笑っていた。
美玖「それに・・・」
和也「それにどうした?」
美玖「先輩が美玖って呼んでくれて・・・」
和也「あぁーごめんね。頭にきちゃってつい。」
美玖「いえいえ!謝らないでください。嬉しかったです・・・。それで先輩が嫌じゃなければ、その、あの・・・」
和也「明日からまた頑張ろうね?美玖。」
流石の鈍感の和也でも、美玖の言いたいことが分かった。
美玖「はい!!」
美玖の家に着いた。
美玖「先輩ありがとうございました。またお礼させてください。」
和也「お礼なんていいよ。また明日ね?」
そう言って和也は美玖の家を後にした。
「あっ。荷物忘れた。」
急いでいたので自分の荷物を持ってくるのを忘れたので、学校に戻ることにしたのだった。

しゃもじ ( 2021/05/04(火) 21:17 )