*2 小林由依 AM11:00
「ふわぁぁぁ」
コーヒーがなくなるまで話続けた由依が、不意に欠伸をする。
それもそうだ、年末の怒濤のテレビ出演で疲れが溜まっているに違いない。
「母さんたち帰ってくるまで、少し寝たら?初詣は後でも構わないし。」
「うーん、じゃあ申し訳ないけど、お言葉に甘えてちょっとだけ」
そう言うと由依は僕の隣で横になるのだった。
「すぅ…」
小動物のような寝息をたてている。
女の子の特有の甘い香りに僕はドキドキを隠せないのだった。
30分くらいたっただろうか?
由依は夢を見ているようだ。
「私も前からずっと好きだよ…」
(また、ミッキーマウスのことか?)
「まあくん、まあくんっ…」
(えっ?)
思わぬ出来事に動揺を隠せない僕。
切なげな声と吐息は、甘い香りと相まって僕を興奮させる。
改めてねがおを見ると、何年分もの想いが込み上げる。
そんな自分の気持ちに蓋をするように、僕も由依の隣で横になることにする。
ん?
うとうとしていた僕は、肌に何かが触れる感覚で目が覚めた。
「まあくん」
隣で寝ている由依が、僕の背中に体を預けていた。
意識は急速に覚醒するが、寝たフリを続ける。
「大好きだよ」
背中越しの告白。
十数年前にも同じ言葉をもらった。
感情のスイッチが入った僕は突然由依の方を向いた。
「僕のほうが大好きだよ」
そしていきなり由依を抱き締める。
「えっ?起きてたの?」
顔がぱあっと赤くなり、されるがままに僕の胸に顔を預ける由依。
「途中からだけどね。」
「恥ずかしい…」
「嬉しいよ」
「夢を見てたの、まあくんとまたディズニーに行ってる夢。昔と違って二人きりで…
夢の中で大好きだよって言ったら、まあくんも応えてくれて。嬉しかった。
現実になったらいいなって。」
「バカだなぁ、ずっと現実だよ。昔から変わらない。」
「だって、子どものころの恋愛なんて麻疹みたいなもんだってよく言うし…私は今誰か独りの女の子になれないから、いつか見離されちゃうかなっ、あっ」
あまりに素直に想いを打ち明ける幼なじみに、僕も気持ちが高ぶる。
ぎゅっと抱き締めて、唇を塞ぐ。
「んっ」
触れるだけの優しいキス
「ごめん、ついっ」
「ううん、ねぇ、もう一回」
目を潤ませておかわりをねだる由依。
(なんだこの可愛い生き物…)
今度は由依の口内に舌を入れる。
「あっ、んんんっ」
初めは驚いたようだが、受け入れて舌を絡めてくる。
卑猥な音が耳から脳に刺さる。
「んっ、だめっ、激しいよぉ」
言葉とは裏腹に、しつこく舌を絡めてくる。
「はぁっ、はぁ」
名残惜しくも唇を離すと、混ざりあった唾液が糸を引くように二人の口を結んでいた。
「こんなの初めてだよ、チューは昔しちゃったけど」
恥ずかしそうに言う由依を見て、僕は猛烈に彼女の"初めて"がほしくなった。
由依の方に目をやると、まるで続きをねだるかのように、潤んだ瞳でこっちを見ていた。
「由依、いい?」
「まあくんになら、何されてもいいよ」
ただでさえ色っぽい声で、こんなことを言われて立ち止まれるわけもなく、僕は彼女のカラダに手を伸ばした。