欅坂46
*2 小林由依 AM11:00
「ふわぁぁぁ」

コーヒーがなくなるまで話続けた由依が、不意に欠伸をする。

それもそうだ、年末の怒濤のテレビ出演で疲れが溜まっているに違いない。

「母さんたち帰ってくるまで、少し寝たら?初詣は後でも構わないし。」

「うーん、じゃあ申し訳ないけど、お言葉に甘えてちょっとだけ」

そう言うと由依は僕の隣で横になるのだった。

「すぅ…」

小動物のような寝息をたてている。
女の子の特有の甘い香りに僕はドキドキを隠せないのだった。

30分くらいたっただろうか?
由依は夢を見ているようだ。

「私も前からずっと好きだよ…」

(また、ミッキーマウスのことか?)

「まあくん、まあくんっ…」

(えっ?)
思わぬ出来事に動揺を隠せない僕。

切なげな声と吐息は、甘い香りと相まって僕を興奮させる。
改めてねがおを見ると、何年分もの想いが込み上げる。

そんな自分の気持ちに蓋をするように、僕も由依の隣で横になることにする。



ん?
うとうとしていた僕は、肌に何かが触れる感覚で目が覚めた。

「まあくん」

隣で寝ている由依が、僕の背中に体を預けていた。

意識は急速に覚醒するが、寝たフリを続ける。

「大好きだよ」

背中越しの告白。
十数年前にも同じ言葉をもらった。

感情のスイッチが入った僕は突然由依の方を向いた。

「僕のほうが大好きだよ」

そしていきなり由依を抱き締める。

「えっ?起きてたの?」

顔がぱあっと赤くなり、されるがままに僕の胸に顔を預ける由依。

「途中からだけどね。」

「恥ずかしい…」

「嬉しいよ」

「夢を見てたの、まあくんとまたディズニーに行ってる夢。昔と違って二人きりで…
夢の中で大好きだよって言ったら、まあくんも応えてくれて。嬉しかった。

現実になったらいいなって。」

「バカだなぁ、ずっと現実だよ。昔から変わらない。」

「だって、子どものころの恋愛なんて麻疹みたいなもんだってよく言うし…私は今誰か独りの女の子になれないから、いつか見離されちゃうかなっ、あっ」

あまりに素直に想いを打ち明ける幼なじみに、僕も気持ちが高ぶる。
ぎゅっと抱き締めて、唇を塞ぐ。

「んっ」

触れるだけの優しいキス

「ごめん、ついっ」

「ううん、ねぇ、もう一回」

目を潤ませておかわりをねだる由依。

(なんだこの可愛い生き物…)

今度は由依の口内に舌を入れる。

「あっ、んんんっ」

初めは驚いたようだが、受け入れて舌を絡めてくる。

卑猥な音が耳から脳に刺さる。

「んっ、だめっ、激しいよぉ」

言葉とは裏腹に、しつこく舌を絡めてくる。

「はぁっ、はぁ」

名残惜しくも唇を離すと、混ざりあった唾液が糸を引くように二人の口を結んでいた。

「こんなの初めてだよ、チューは昔しちゃったけど」

恥ずかしそうに言う由依を見て、僕は猛烈に彼女の"初めて"がほしくなった。


由依の方に目をやると、まるで続きをねだるかのように、潤んだ瞳でこっちを見ていた。

「由依、いい?」

「まあくんになら、何されてもいいよ」

ただでさえ色っぽい声で、こんなことを言われて立ち止まれるわけもなく、僕は彼女のカラダに手を伸ばした。

豊後水道 ( 2021/05/28(金) 07:00 )