第三章 幼馴染みの関係
久しぶりに2人で

「大輝、寝癖すっごいよ?女の子の前にいるんだから早く直してきなよ。」

「まだ8時じゃないか…、来るの早過ぎるだろ。」

寝起きで少々不機嫌な様子の大輝は、渋々とベッドから立ち上がると明音と共に自分の部屋を出て階段を降り、1階の洗面所で手早く身支度を済ませると、明音はまるで自分の家の様にリビングのソファに座ってくつろいでいた。

「明音、今日は何処へ行くんだ?」

リビングの隅にある姿見を見ながら寝癖を直した髪の毛に手を触れながら大輝は明音に尋ねた。

「うーん……考えてない!」

誘っておきながら何も考えてい無かったという明音の答えに大輝は体の力がガクッと抜け、ため息を1つ吐いて、食卓の椅子に腰掛けた。

「なんだよ、それなら寝るわ。」

「こら!寝るなー!」

「痛っ!……冗談に決まってるだろうが…。」

冗談で食卓に突っ伏して寝ようとする仕草をして見せた大輝の背中をソファから立ち上がって叩いた明音の力は冗談では無かったようで、大輝は叩かれた背中をさする。


すると突然、大輝の腹の虫が鳴き声を上げたのであった。

「あはは、すっごい音したね。」

「仕方ないだろ、朝なんだから。」

朝から明音に押しかけられ、朝食を口にする事の出来ていない大輝は叩かれた背中に続いて、腹部をさすっていた。

そんな大輝の様子を見た明音は何か閃いたようで、キッチンの方へと足を進めて行く。

「なら特別にあたしが朝ご飯作ってあげるよ、あたしもまだなんだ!」

「おぉ、それは嬉しいな。頼むよ。」

大輝の両親は偶然にも昨日の夜から泊まりがけで出掛けてしまっており、朝食をどうしようかと悩んでいたところでの明音の一言に、この日初めての笑顔を見せた。

「じゃあ作るから待っててね!」

キッチンに立って冷蔵庫の中を覗き、適当な食材を取り出した明音は料理を始めるのであった。

(明音の料理か…、明音は中学ぐらいまでは覚えた料理を作りに来たなぁ、味があんまり良くないのは俺の口からは言えないけどな。)

明音は鳥の他に料理も好きであり、大輝は明音が作ったメニューを何度か口にした事もある。

大輝が過去の事を思い出しながらテレビを見て、食卓の椅子に座って待っていると、やがて明音は2人分の料理を運んできた。

「はいどうぞ!きっと美味しいよ!」

明音が大輝の前に置いた白い皿にはハムエッグとサラダ、茶碗には白米が盛り付けられており、その横には味噌汁の入った碗も並べられた。

「ありがとう、明音。いただきます!」

「どうぞお召し上がりくださいませ……お米は冷凍、味噌汁はインスタント何だけどね。」

明音は最初にハムエッグを口に運ぶ大輝を真剣な眼差しで見る。

「どう?美味しい?」

「え?これ本当に明音が?」

大輝は一口食べた瞬間、驚いた顔に変わっていた。

「あたしがって、今このお家にはあたしと大輝しかいないでしょ?」

「はは、そうだよな。…いや、久々に明音の料理食べたけどかなり上手になったなって、美味しいよ。」

美味しいという一言を聞いた途端に明音の表情は、ぱあっと明るくなった。

「良かったー、ありがと。」

「これならいつか明音が毎日料理を作るような人が出来てもきっと問題無しだな!」

「う…うん、そうだといいな。」

そのまま朝食を食べ進める2人であったが、明音は大輝に言われた一言に心に引っ掛かりを感じていた。

(大輝は前にあたしに言ったこと、きっと忘れてるんだろうな……まぁ昔の事だから仕方ないね。)


「美味しかったよ、ありがとう、ごちそうさま!」

あっという間に大輝の前に並んだ皿や碗の上は空になっており、明音にお礼を言った大輝は食べ終えた食器をせっせとキッチンのシンクへと運んで行った。

「いいえお粗末さま、あたしお皿洗っちゃうね。」

「よし、俺も手伝う!」

朝食が食べ終わった2人は協力して、洗い物を始める。

「大輝?何だかこうやって2人だけで遊ぶなんて久しぶりだね。」

「確かに、達也とか花音も一緒の時は良くあるんだけどな。」

会話をしながら短時間で洗い物を済ませた2人は、リビングのソファに並んで腰を下ろす。

「ねぇ、大輝は何処か行きたいとこ無いの?」

「明音に任せるよ。」

「そうだよね、あたしが決めないと…、なら映画行かない?見たいのがあるの。」

「分かった、行こう。」

こうして2人の出掛け先は映画を見ることに決まり、大輝と明音は一緒に富岡家を後にして行くのであった。


■筆者メッセージ

書き直し阪、三章入りました。

ちゅり回なのでちゅりちゃんの誕生日である、本当は11月29日付の更新としたかったです。

Twitterフォローしてくださった方、ありがとうございます。
バステト ( 2015/12/01(火) 01:09 )