第四章 マネージャー修行!?
帰り道からの悪い予感

着替えを済ませ、サッカー部の活動が解散になると部員やマネージャーたちはそれぞれ帰宅していった。


先ほど一緒に帰る約束をした、彩と涼花は2人で会話をしながら帰っていた。

「彩先輩、大輝先輩って格好いいですよね。」

「うーん、かっこいいって言うのは私あまり分からへんけど、大輝はいい人やで。」

2人の会話の話題は最初のうちは涼花の姉の優子のことや、彩と優子の所属するバンド、RED TRIGGERのことだったが、涼花が部活中に持ち出した大輝の話になっていた。

「そういえば美優紀先輩から、彩先輩が大輝先輩と仲良いって聞きましたよ?」

「あはは、まぁ良くしてもらってるで。私がマネージャーに立候補したのは、大輝に誘われたからやし。」

「そうなんですか!あ、私こっちです。」

「うん。じゃあまた....」

何だか大輝に興味を示してきるような涼花は彩に別れ際にもう一つ質問をした。

「あ、彩先輩!大輝先輩って彼女とかいないんですか?」

涼花からの唐突な質問を受け、彩の頭に一瞬、高柳の姿が浮かび上がった。

「あー、本人はいないって言ってたで?」

彩の答えを聞いた涼花の口元は少し緩んでいた。

「へぇ、居そうなんですけどね、何か意外でした!あ、ありがとうございました。さよなら。」

「あ…あぁ、気をつけてな。」

涼花はくるっと彩に背中を向けると何だか楽しげに歩いて彩とは別の方向の分かれ道に姿を消した。

(よく分からんけど、面白い子やな…)

彩は涼花がいなくなり一息を着くと自宅へ向かって再び歩き始めた。


その頃、大輝は珍しく一人で帰り道を歩いていた。

いつも一緒に帰っている人物がこの日は誰一人捕まらなかったのだ。

(達也は渡辺さんと一緒だし、彩は一年生と帰ったし…、、明音は…うーん....)

「クシュッ!....」

大輝は何故かこの日は多くのくしゃみをしていた。

すると、大輝は背後から声をかけられた。

「大輝お兄ちゃん?」

「あ、遥香ちゃん。」

声をかけてきたのは、遥香だった。

大輝と達也が中学からの付き合いであるだけに、大輝は達也の妹の遥香とも仲が良い。

遥香は普通のリュックとサックス入ったのケースを片紐ずつかけて背負っていて重そうにしていたので、大輝はリュックの方を持ってあげた。

「荷物多いな。」

「ありがと....、ちゅり先輩、今日は一緒じゃないの?」

「あぁ....まぁ、色々あってな。」

「そっか。........はぁ…」

遥香は下を向いてため息をついていた。

「遥香ちゃん、どうした?」

「今日ね、お兄ちゃんに帰りに荷物持つの手伝ってってメールしたのに....」

「あぁ、達也は....」

「知ってるよ、転校生のみるきー先輩と一緒なんでしょ?」

遥香はとても寂しそうな顔をしていた。

だが、大輝は何も言えずにただ遥香の横顔を見ていた。


それから少し歩くと遥香の携帯に着信が来た。

「お兄ちゃんだ。」

遥香は一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに暗い顔に戻り、電話に出た。

「もしもし....」

ふと大輝が通話をする遥香のスマホを見るとカバーには達也と遥香のツーショットのプリクラが貼られていた。

「もういいよ、大輝お兄ちゃんに途中で会って手伝って貰ってるから。」

............

「お兄ちゃんの馬鹿!もう知らないっ。」

遥香は怒って電話を切った。

「....、大輝お兄ちゃん、ちょっと楽器お兄ちゃんに渡しておいて。」

「えっ....ちょっと、どこへ?」

遥香は大輝にサックスのケースを預けて、代わりにバックを大輝から受け取り、家とは別の方向に走っていった。

「遥香ちゃん........(まぁ、携帯は持ってたから....)」

大輝は少し心配になったが、とりあえず島崎家に行き、大輝はサックスのケースを達也に渡した。

「達也、これ遥香ちゃんが....」

「すまないな、まったく遥香のやつ....」

達也は受け取ったサックスのケースを玄関に置いた。

「遥香は?」

「それが....」

大輝は遥香が何処かへ行ってしまった事を話した。

それを聞いた達也は呆れた顔をした。

「まぁ、そのうち帰ってくるって。ちょっとウザイんだよな、あいつ高校生もなって。」


(本当に何もないといいんだが....)

大輝は重い足取りで帰っていった。


■筆者メッセージ

久々に書きました。

バステト ( 2014/03/06(木) 12:08 )