大輝の答え
「俺も明音のこと好きだよ。」
大輝はそう囁いてきごちない手付きでゆっくりと自分に抱きつく高柳を抱きしめた。
「本当に……?」
「あぁ。好きだ。」
大輝は高柳の体温が上がっていくのを肌で感じる。
だが、大輝の好きという言葉は高柳の望む意味では無かったのだった。
「大輝……、じゃあ私たち…付き合……、」
「ごめん。。明音とは付き合えない。」
「えっ?」
「明音、俺にとってお前は大切な存在だ……、でも……恋人として付き合うことは出来ない、ごめん。」
大輝はそう言って高柳を抱きしめる力を少し強めた。
「……何で……私のこと好きなんでしょ?」
高柳は大輝に交際を断られた理由を全く理解出来なかった。
「俺……今、好きな人がいるんだ……」
「……………っ!」
大輝から言い放たれた予想だにしていなかった一言を聞いた高柳は抱き合っている状態から、急に手を離し、大輝を思いっきり押した。
「痛っ!」
高柳に押されて大きく体勢を崩した大輝はそのまま砂場に倒れ込んだ。
「じゃあ好きなんて言わないでっ!」
「……ごめん。。」
大輝は高柳の顔を見上げると彼女の目には涙が浮かんでいた。
高柳は大輝と一瞬だけ見ると、すぐに涙を隠すように後ろに向いた。
(泣くのはダメだよね……)
背を向ける高柳に大輝はそっと詰め寄り、声をかけた。
「明音、ごめんな……、せっかく……」
「ううん、気にしないで。にしても、大輝が恋をするなんてね、私応援してあげる。」
高柳は一度鼻を啜って振り向くと、浮かない表情をする大輝に笑顔を見せた。
その笑顔は必死で作った笑顔だと大輝は簡単に察することが出来たが、そのことに触れることは気が引けていた。
それから2人は公園内をまた少し歩き回った。
「大輝、そろそろ帰ろ?」
「そうだな。」
二人が公園を後にする頃にはすっかり夕焼け空だった。
そして2人は再び家路を歩き始めた。