体育はサッカー!
「はい!整列して!」
そう全員ジャージ姿のクラス全体に促すのは、体育教員の秋元才加だ。
「新学期最初の体育の種目は、サッカーです!まずはパスの練習を二人一組でやってください。ちなみにペアは今からくじ引きで決めます。」
秋元がそう全体に説明すると大輝と女子の一人が前に出てきた。
そうこの二人は2年D組の体育委員である。
ちなみに、大輝と一緒に前に出た女子とは、高城亜樹という人物で例の俊太の彼女である。
「体育委員がくじを引かせるのでそれで同じ色のマークのくじを引いたもの同士でペアになってください!」
そして大輝は達也と美優紀が同じマークのくじを引き当てるように仕組んだのだった。
ペアが決まった後、達也が大輝の方を見ると大輝は達也にサムズアップのサインを見せていた。
(なるほどこういうことか…)
「達也と一緒なんて、えらい偶然やな!私サッカーなんて全然出来へんからよろしく〜。」
「うん。よろしく。」
二人はボールを取りに行くとすぐにパスの練習を始めた。
「いくで……えぃ!」
美優紀の何処に飛んでいくか分からないようなキックで蹴られたボールを達也はトラップし、美優紀の足元に蹴り返した。
「凄い!ちゃんと足元に帰って来たで!……あ……」
美優紀はたいして勢いの無いボールだったが後ろに反らしてしまい、小走りで取りに行った。
「ふぅ……ごめーん。どうやったらちゃんとできるか、教えて〜。」
それから達也は美優紀にボールの蹴り方やトラップの仕方等を教えてあげていた。
そしてその頃別のペアもパスの練習をしていた。
あまり他のペアがいないグランドの端の方でパスの練習をしているのは大輝と彩だった。
この二人は偶然同じペアになった。
「大輝くんみたいな、サッカー部の人と一緒に出来るなんて私ツイてるな。」
彩は美優紀よりも器用なようで軽いパス交換を難無くこなしながら大輝と会話をしている。
「山本さんってギター出来るんだよね?」
「うん。まだまだ下手やけどな。」
「俺さ、ギター好きなんだよ。めっちゃカッコイイじゃん。」
「え?ホンマに!?何か嬉しいわ。」
彩は転校してから恐らく1番になるであろう笑顔を見せていた。
「じゃあ今日お昼の時、俺達と一緒にご飯食べて、その時にいろいろ話そうぜ!」
「おおき……ありがと。」
「今、おおきにって言おうとしただろ」
「…お恥ずかしい//」
「可愛いじゃん、関西弁。」
何故か彩は大輝の一言に少し胸のうちがドキッとしていた。
「い…いややなぁ……からかわんといて?みるきーなら可愛いやろうけど…」
「からかってないよ。山本さんの関西弁も可愛い。」
「もう……あ、そうや!シュート教えてよ!」
彩はクルリと大輝に背を向けて、ボールを持ってゴールネットのあるグランドの中央付近に向かって行った。
そこにはパスの練習を切り上げてシュートの練習をしている男子のペアが複数いた。
その時、彩に危険が迫っていた。