第一章 新学期初日
達也と美優紀の帰り道
「お待たせ。悪いな待ってもらっちゃって。」

「いいえ、全然大丈夫やで。気にせんといて。」

達也と美優紀の二人はメールのやり取り通りに昇降口で合流すると校門に向かって行った。

すると校門の傍に遥香が立っていた。

「あれ、遥香ちゃんやん。」

「遥香ー、まだ帰って無かったのか。」

「あたし帰り一人だから、校門にいればお兄ちゃん来るかなーって……」

「そっか。じゃあ遥香も一緒に……」

「いいよ。一人で帰るから。」

遥香は去っていってしまった。

(遥香ちゃん、私の事嫌いなんやな……)


遥香の取った行動に二人の間の空気が凍りついた。

「渡辺さんごめん、俺の妹が……」

「謝らんといて。帰ろ?」

「うん。」

二人は校門を出て歩き始めた。


「それで二人とも同じパートな訳だ。遥香の事頼むよ、きっと接してれば慣れて来るから。」

「うん。達也くんは妹思いの優しいお兄ちゃんやね。」

「あはは、周りから見たらそうなのかもな。あっ、そうだ渡辺さんって……」

「ねぇ!」

達也が美優紀に何かを尋ねようとしたが、口を挟まれた。

「渡辺さんって呼ばれんの嫌や。」

「え、、じゃあみるきー?」

「うーん、、達也は特別に"美優紀"でいいよ?」

(今、達也って……それに特別って…)

美優紀の発言に達也は思わず固まってしまう。

「呼び捨ては出来へん?」

美優紀は寂しい顔をして上目遣いで達也の目を見る。

「いやいやいやいや、喜んで!」

「ははは、おもろい反応するなぁ。」


「それでさ、わ……美優紀は彼氏いるの?」

「おらんよ。達也は?」

「いないよ。」

「ホンマに?大輝くんは達也はたらしだって言ってたで?」

「……あいつ余計な事を。」

「ふふふ、やっぱりそうなんやな。」

美優紀はいたずらっぽい顔をして達也の横顔を覗き見る。

「そんなこと無いって!」

「ふーん……でもさ、達也って…」

「ん?俺って?」

「絶対女の子にモテるやろ?」

美優紀の質問に達也はとても戸惑ってしまった。何故なら美優紀の思ってることは現実とは正反対だからだ。

「何言ってんだよ、全然モテたことなんて無いよ。」

「あれ?意外やな……絶対モテると思うんやけどな。。」

「そう?何で?」

「別になんとなくそんな感じがしただけや。」


二人が話ながら歩いていると、二人は達也の家の前に来ていた。

「ここ俺ん家だから!また明日ね。」

「うん。また明日な!」

美優紀は満面の笑みを達也に見せて帰って行った。

(美優紀…可愛すぎるだろ。この感じ久しぶりだな。)

すっかり達也は美優紀に夢中になりかけていた。

しかし、美優紀の煌めく笑顔の裏に隠された事をこの時達也は知るよしもなかった。

そして、達也が家に入ると遥香が怒った顔をして待っていた。


■筆者メッセージ
できるだけ、一日二回ぐらい新しい話を書いて行きたいです。
バステト ( 2013/11/07(木) 21:32 )