第三章【強いって何だろう】
02
校舎裏にある敷地で、人間ダーツだった。いつもは教室や廊下だが、今回は理由があるのは、間違いないだろう。
18人という大人数に呼び出され、コンクリートの上に何度も蹴落とされた。


「おい、仕返しとか考えてんじゃねぇだろうなぁ?」


うつ伏せに倒れて唸る僕を見下ろしながら、彼らのリーダー格である人が言った。

呼び出された理由は、いつもの理由に比べれば、マシな方だった。

彼らは恐れていた。

僕が桐嶋烈央に頼んで、仕返しをされるのでがないかと……。
校舎裏で人間ダーツをしているのは、これが理由だろう。

怯えるくらいなら、最初から僕に関わらなければいい。
虐めなんて、しなければいい。

しないで欲しい……。


そんな願いも虚しく散り、僕は蹴られ続けた。


「ちょっと!」


意識が薄れているが、誰かの叫び声が聞こえた。霞んだ視界に映ったのは、短いスカートを履いた人、女子生徒だった。
僕はてっきり、男子が来たのかと思っていた。

女子が来たところで、この人達は止められるはずがない。それどころか、彼女を巻き込んでしまう。


「古畑奈和!?」


いじめっ子達が、一瞬だけ引けを取った。

彼女を恐れている訳ではない。彼女には、黒澤舞斗というバックが居る。
彼女自身は、そんなつもりはないかもしれない。けど周りからすれば、黒澤舞斗は彼女はボディーガードにしか思えない。


「こんな大人数で1人を虐めて、情けなくないの!?」


両手を腰に当て、両足を肩幅くらいに開きながら、彼らを怒鳴りつけた。

僕は、情けなく思った。

女の子に助けられ、言い返す事もやり返す事もしないで、好き勝手殴られてる自分を……。


「ちっ、行くぞ」


彼らは、古畑奈和が居る逆の方向に歩き始めた。
ゾロゾロと歩き去って行く彼らを見てから、正面に見えるコンクリートの地面を見た。

僕の血が、飛び散っていた。

制服の袖で拭おうとした時、視界の端から、花柄のハンカチが差し出された。

顔を上げると、古畑奈和がしゃがんでいた。


「大丈夫?」


「……うん」


「これ、使って」


差し出しているハンカチの向こうに見える彼女の笑みに、偽りは無さそうだった。

後で気持ちが悪いと言われる。

いつもなら、こう思っていたかもしれない。


「どうしたの?」


「えっ! あっ、いや……」


彼女の前で、余計な事は考えない方がいいのかもしれない。
差し出されたハンカチを受け取ろうとした時、ハンカチが引っ込められた。

やっぱり、僕みたいな嫌われ者にモノを貸すのを、躊躇っていたんだろう。

ところが……。


「!?」


ハンカチが、僕の口元に当てられていた。


「酷い怪我だね。保健室行こっか」


腕を引っ張られ、僕は立った。
彼女に誘導されながら、僕は保健室に向かった……。

黄金騎士 ( 2014/06/17(火) 17:14 )