第二章【流星のような人々】
04
連れて来られたのは、とあるファミレスだった。
きっとここで、2人の食事代を払わせられるのだろう。
両膝に手を置きながら、俯いている。上目でこっそりと、向かい側に座る彼女と、横目で隣に座る彼を見た。


「どしたん? お腹減ってない?」


「えっ、あっ、いや、その……」


お腹は減っていない事もない。だけど食べたくない。ちょっとでも、会計が安く済むように。


「安心しろ。お前に払わそうなんて、思っちゃういねぇよ」


信じられる訳がない。
見た目はヤクザ。それにサングラス。長身で乱暴な言葉遣いの人の言うことを、誰が信じるんだ……。


「僕、お腹減ってないから……」


目の前のお冷を手に取り、飲もうとしたのだが、空だった。緊張で喉が渇いている。


「はい、これ飲んでえぇよ」


微笑みながら、彼女は僕の前に、ジュースの入ったグラスを差し出した。


「だ、大丈夫……」


隣の彼が、それを飲んだ。


「なんで烈央が飲むんよ!?」


「豆が喉に詰まった」


頬を膨らませた彼女は、ドリンクバーに向かって行った。
怖い彼と2人きりになり、僕の緊張は高まっていった。
背もたれに寄りかかり、両手をポケットに入れながら天井を見上げる彼が、口を開いた。


「お前、生きてて楽しいか?」


不意の質問だった。
思わず顔をあげ、彼を見てしまった。


「新崎の従兄弟なのに、お前は暗いよな」


ハッキリと言う人だ……。


「お前は、何の為に生きてる?」


「えっ……」


「お前には、生きる意味はあるのか?」


生きる意味……。
そんなもの、ある訳ない……。


「生きる意味が無かったら、お前はとっくに死んでるよな」


「……何が、言いたいの?」


小声で聞き返すと、急に胸ぐらを掴まれ、詰め寄られた。


「てめぇの欲望の為に、生きてみろ」


この人は、僕が虐められているのを、僕が生きるのを辞めようとしているのを、まるで知っているようだった。


「あ、あんたは、何の為に生きてるの……?」


勇気を出して尋ねた。
胸ぐらを離し、距離を取った彼は、中指の爪をいじりながら答えた。


「金だ……」


「お、お金……?」


「この世にはな、まだまだ見たことのねぇ大金が、俺を待ってるんだ……」


不適に笑う彼が、不気味だった。

ドリンクバーに行っていた彼女が、戻って来た。


「烈央、あんた何か言ったやろ?」


「あぁ?」


「怯えてるやん?」


生きる意味というのは、そんなものでいいのだろうか……。
自分の欲望の為に生きる……。

黄金騎士 ( 2014/04/21(月) 06:24 )