第一章【僕は一人】
02
毎朝、目が覚めると何時も思う。
どうして、目が覚めてしまったのだろう……。
このまま、永遠に眠っていればいいのに……。

下駄箱にある上履きに、新たな傷が増えていた。呼び出しの合図みたいなものだ。
ため息を吐き、校舎裏にある器具庫に向かった。
理解し難い因縁をつけられ、殴られ、蹴られ、バケツの中に入った水を被せられた。笑い声をあげながら去って行く彼ら。
殴られる事。虐められる事になれてしまった自分を、虚しく思った。


誰にも、何も伝えず、学校を抜け出す事にした。
元々、伝える相手など居ない。教師も皆、僕の虐めは見て見ぬ振りをする。
教師が一番面倒に思うのは、不良や問題児ではない。虐められる生徒だと思う。
校門前へ行った時だった。同じ学園の生徒5人と、大勢の他校生が相見えていた。物陰に隠れ、その様子を伺っていた。
同じ学年の不良2人と、1年生の三つ子だった。同級生の1人は、何故か股間を抑えていた。
そして股間を抑えている同級生は、後輩に声を掛け、周りに何かを言われてから、相手のリーダーらしき人物を、いきなり殴り飛ばした。
周囲に釣られ、僕も驚いてしまった。
両軍が離れ、他校生が帰って行った。5人組も校舎へ戻ろうとしていたが、不運にも、1人と目が合ってしまった。股間の男だ。
険しい表情で、僕の前へと迫ってきた。逃げたい。だけど逃げれない。足が動かないくらい、怯えてしまっているのだ。


「よぉ、お前同じクラスの奴だよな?」


同級生に声を掛けられるのは、小学校の入学以来。実に10年振りだ。
素直に嬉しかった。
彼の後ろに、もう一人の同級生が立った。


「うん……」


「お前、いいよな。友達多いからよ!」


その言葉は、僕の胸の中にある心というものを、深く傷つけた。
僕には、友達などいない。それを分かっていながら、言っているに違いない。
何年振りかに、笑いそうになった。緩みそうになった表情も、いつも通り暗い表情に戻り、俯いた。


「僕には、友達なんて居ないよ……」


彼の横を通り、早足でこの場を去って行った。

友達って何なんだろう。
僕は生まれた時から、友達というものがいない。周りの人達には、当たり前のように友達が居る。それを見ていても、友達というのが何なのか分からない。
今の彼らみたいに、一緒にいるのが友達なのだろうか……。
知ったとしても、何も変わらない。

僕はこの先ずっと、友達というものが出来ない……。

友達が出来る前に、命を経つであろう……。

■筆者メッセージ
BAD reform school BOYの方は、1日に1回か2日に1回にします。
黄金騎士 ( 2014/04/18(金) 06:44 )