極西の飛行隊
筑紫島はオノゴロ皇国のもっとも西に位置する小さな島だ
四季折々な表情を見せる国土の中でも温暖な琉球諸島から更に南西に位置している
他の同地域の島が観光で親しまれているのに対し、この島は防衛の最前線だ
これから西の海は東南アジアと呼ばれる地域の各国や華僑連邦の境界線がある
オノゴロ皇国国防空軍・第9防空師団・508飛行大隊・筑紫島分遣隊「シルバークウガ」
これが私、高橋みなみが所属する部隊の正式名称だ
もっとも私を含めた隊員達はこんな長い名前は呼ばない
呼ぶ時があったら「筑紫分遣隊」もしくは「シルバークウガ」と呼んでいる
ブリーフィングルームに入ると同時に部屋にいるパイロット全員が立ち上がる。
毎回思うが学校の先生ってこんな感じかな?といつも思う
皆が座る椅子と対面する形でブリーフィング用のホワイトボードが壁際に置かれ、その前に私が座る椅子が置かれている
椅子に座ると皆もそれに倣い着席する
ちなみに敬礼はなしにしている
空に出れば階級なんか意味がなくなる
撃つか撃たれるかの状況に誰が偉いかなんて意味がない
私が便宜上指揮官で指揮をして責任を取る…その程度の感覚だ
大体22歳で一等空尉になり、一部隊を率いるのがおかしいのだ
部下の中には私より年上がいるし…
「そんなんでは困ります。たかみなさんは隊長なんやからもっと威厳を持って下さい」とゆい【オノゴロ皇国・国防空軍・三等空尉・横山由依】に京都弁で言われた事がある
敬礼は無くしたが、私が入室する時に起立するのはゆいがさせている事だ。
席に座ると回りを見回す。
あの騒動で半分の人間を失った
残ったのは地上待機だった数名だけだ
その内で有事に使えるのは、ぱるるにゆい…
もう1人、長池という青年士官で26歳の私より年上のパイロットがいるが、大学出で士官学校卒なので、パイロットとしての寿命はこの中で一番若い
あとの連中は皆訓練生…
国防の最前線ながら訓練生の教育の場になっている事からも、国のお偉方は誰もこんな事になるとは思ってなかっただろう
色々な意味で悩む状況だ…
「さて…」
軽く息を吐き私は話始める
「言いたい事はみんな山ほどあるだろうけど…とにかく人手が足りない。これからは全員がスクランブル要員だ」
周りを見回し…ぱるると目が合う