第一章〜始まりの空
翼を駆る少女〜2〜
「ごめんなさい」

空から帰り基地に着いた途端…私の2メートルほど前を歩く彼女は、振り返りながらそう言って私…【フリーカメラマン・松井玲奈】に謝った


元から白かった肌を蒼白くさせて、今朝食べたメロンパンが口から逆流しそうになるのを必死で堪えていた私は、その突然の謝罪にそれらの緊急事態を瞬時に忘れてしまった


身長は私より10p以上低い…整った顔立ちでどこか男の子っぽい印象の顔だ


髪はショートヘアとまではいかないが短く、男の子っぽく感じるのはその髪型のせいか…

しかし、彼女の前を知る人間は彼女は昔ポニーテールをずっとしていたという


いまの髪型しか知らない私にはあまり想像が出来なかった




【オノゴロ皇国・国防空軍・筑紫島分遣隊・高橋みなみ・一等空尉】

それが彼女の現在を表す身分だ

親しい仲間には「高みな」と呼ばれ、幸運にも私もそう呼べる程の仲となっていた

年齢は私と同じ22歳…だが同い年とは思えぬ出来た人間だ



「本当に何て詫びれば…」


すまなそうな顔でこちらを何度も見る


だが今の状態になったのは彼女のせいではない…


国籍不明機がいきなり撃ってきたのも、逃した訓練生の進路の先に不明機の仲間がいた事も…


私達と一緒にいた教官の1人は空中でその生涯を終え、もう1人は今さっき滑走路で乗っていた機体ごと燃えた


逃げた筈の訓練生達は抗う術がないまま襲われ、私達が着いた時には全くの手遅れだった


通信指令の人間達の怠慢とミスが7人の人間を死なせたのだ



「あっでも!あの07のマークの機体…あの機体のパイロットの反撃は見事でした」


何とか場を明るくしようと、自分達以外に生き残ったもう1人を話題にする


この時の私には、まだ人が目の前で死んだ実感がないから出来た事だろう



だが私のこの台詞に…


「見てられないわよ」

一瞬で否定した高みなは、話題となった人物に視線を向け怒鳴った



「ぱるる!今度あんな飛び方したら死ぬわよ」


言われた人物…【オノゴロ皇国・国防空軍・筑紫島分遣隊・島崎遥香・三等空尉 】は機体からちょうど降りたところだった


ヘルメットを脱ぎ乱れた髪型を直しつつ…


「死にません」


にべもなく返した


「まったく…虫も殺しませんって顔で…」


呆れた顔の高みなと違い、私は思わず彼女に見とれてカメラのシャッター切っていた


どらごん ( 2013/11/27(水) 05:46 )