欅共和国の激動‎ ―咲く櫻、散る櫻―































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【🌸櫻咲く編】小田倉麗奈と小島凪紗による尋問
1.代理登場
 欅共和国。
 小池美波、森田ひかるに続き、谷口愛季までもが忽然と行方をくらまし、欅ハウスの面々にも困惑が広がっていた。
 何の予兆もなく、突然、敷地内に見当たらなくなり、音信不通…同時期に統治メンバーに加わった遠藤理子と村井優が屋根裏まで探し回ってもいないという。
 それを受けて、
「ほな、やっぱり連中に拉致されたとしか考えられへんのちゃう?」
 と推測する武元唯衣に対し、
「でも、どうやって…?これだけ監視の目があるんやで?」
 と疑問を投げかける井上梨名。
 確かにその通り…先日、小池美波が蒸発したのを機に欅ハウスの警備は“超”がつく厳戒態勢となっており、現にこれまで不審な人物の侵入はおろか、周囲への出現すらも報告されていない筈…。
 外出の際はなるべく複数で、なおかつ外出申請をしてから、というルールも制定された中、愛季からの外出申請は出されておらず、愛季が姿を消す直前、おそらく最後に会話したであろう中嶋優月も、
「普段通りの愛季で、この後、どこかに出かけるというようなことも言ってませんでした」
 と証言しているから、自ら敷地外に出たとも考えにくい。
(では、いったいどこに…?)
 文字通り、蒸発したように消えてしまった愛季。
 遡れば、森田ひかるもそう…そして小池美波の時もそうだった。
 そして昼過ぎ。
 リーダーの菅井友香は、前回の緊急会議からさらにメンバーを絞り、守屋茜、そして一つ下の代から松田里奈だけを選んで、別棟の詰所へ呼んだ。



 本棟から離れている上、完全防音の壁…秘密の話をするのにもってこいの小部屋。
 常時使用している部屋ではないため、入った瞬間、ムッとしていてサウナのように蒸し暑いが、そんなことは二の次。
 入室早々、何かを言いかける松田に対し、口元に人差し指を立て、

(静かに…)

 とジェスチャーをする菅井。
 そして、おもむろにポケットから取り出した金属探知機を壁や床下、天井に向けて室内を一周…幸い、何も反応は無く、 
「…よし。ひとまず、ここでの会話が盗聴されてる心配はなさそうね」
 と安堵。
 その様子に、
「盗聴…ってことは、やっぱり、私たちの中に連中と通じているメンバーがいると菅井さんはお考えなんですか…?」
 その松田の問いに対し、はっきり断言はせずとも、
「いよいよ、そう考えないと辻褄が合わなくなってきた」
 とだけ返した菅井。
 非常に頭が痛い話…だが、もしそれが事実だとしたら、既にメンバーが三人、それも各世代から一人ずつ姿を消しているだけに、早急に手を打たないとまずいことになる。
「し、しかし…仮に内通しているメンバーがいたとして、いったいどうやって欅ハウスの外へ運び出したのかが…」
「いや…それは、案外、簡単なんじゃない?」
 と言ったのは茜。
「たとえば、私がその内通者だとして…」
 と言いながら松田に一歩近寄り、
「…ふんッ!」
「うッ…!」
 突然、素早いフットワークで松田の背後を奪い、チョークスリーパーのように首に腕を絡めて、
「メンバー同士なら背後も見せるし、ほとんど無警戒…こうやって隙を見て不意打ちで気絶させることもおそらく容易だと思う」
「そ、それは分かるんですけど…く、苦しいです…茜さん…し、絞めすぎ…」
「あぁ、ごめん。つい…」
 松田に腕を叩かれ、力を緩めた茜は、続けて、
「あとは、気絶させたメンバーを一時的に隠しておく場所さえあれば、半日ぐらいなら姿が見えなくても怪しむ者はいない。それこそ、この部屋なんてうってつけじゃないかな。別棟だし、普段は誰も使ってないし」
「た、確かに…」
「そして夜中。みんなが寝静まった頃合いを見て、ひそかに連中と密会し、その気絶させたメンバーを引き渡して、あとは何食わぬ顔で当直として振る舞い、翌朝、異常なしと報告すればそれでOK」
「起きてきた私たちからすれば、いつの間にか煙のように消えたとしか思えないってワケ」
 と、菅井も続いて推理を話し、そして、
「これが今月の当直担当表の写し…」
 と懐から取り出したプリントをテーブルの上に広げ、その細くてしなやかな指を添えて、

「みぃちゃんが消えた日、ひかるちゃんが消えた日、愛季ちゃんが消えた日にそれぞれ当直だったのは…」

 ……

 一方その頃。
 捕らえた男たちを収監している地下牢に、コツ…コツ…と靴音を鳴らして歩みを進める女二人。
 手前の鉄格子から順に掛けられた札を見ながら、
「何番だっけ?12番?」
「違うよ。13番だってば」
 などと言いながら前へ進み、そして、
「…あ。ここじゃない?」
「ホントだ。13番。ここだね」
‎ お目当ての番号札が掛かった鉄格子。
 片方の女が手にしていたキーを差し込めば格子戸の鍵が開き、牢の中へ。
 その壁際では、✕の字で磔にされたパンツ一丁の男が、
「くっ…くっ…」
 と繋がれた手足を懸命に揺すっていたが効果なし。
 そして現れた二人と目が合うとそれをやめ、
「だ、誰だ?お前たちは…」
 問われた二人は息ぴったりで顔を見合わせるとクスッと笑い、

「あいにく、松田さんが今ちょっと手が離せないみたいだからぁ…♪」
「午後の尋問は私たちが代わりにやらせてもらうわ…♪」

‎ そう言って磔の捕虜と対峙した二人の女。
‎ ニヤリと口角を上げ、しめしめと互いの顔を見合わせる彼女たちの名は小田倉麗奈、そして小島凪紗。



‎ ともに最近、尋問官としてメキメキ頭角を現している魔性のペアだ…。


(つづく)


■筆者メッセージ
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鰹のたたき(塩) ( 2025/08/27(水) 00:29 )