2.心理戦
「さぁ、次のカードを引け。四枚はハズレだが、一枚は『解毒剤』と書いてある。運が良ければ次で終わるぞ」
と、扇状に広げた五枚のカードを愛季の繋がれた右手の前に差し出す鮫島。
それに対し、キッとした目を向ける愛季。
(そんなことを言って、実は五枚とも全部ハズレのカードなんじゃないでしょうね?)
と、愛季からすれば当然の疑念…そんな、ジロリと向ける疑いの眼差しに対し、鮫島はその意味を見事に汲み取り、
「フッ…自分の引き悪さを棚に上げてイカサマ呼ばわりとは喰えない女だ。濡れ衣は心外だから、ちゃんと確認させてやる」
と、五枚の中から一枚を自分で引き、そのカードを愛季の前に突きつけた。
「━━━」
なるほど。
確かに、
<解毒剤>
とマジックで書かれたカードが存在。
「どうだ?イカサマは無いということが分かったか?」
と、そのカードを再び扇の中に戻し、マジシャンのように繰り直す鮫島。
そして、再び愛季の右手の前に扇を広げると、今度は、
「ククク…この左端のが解毒剤だ。信じて引いてみろ」
と、こともあろうに一番左のカードを頭ひとつ出して提示。
その挑発的な態度なイラッとしつつ、内心、
(ぜ、絶対ウソだ…こんなヤツ、信用できない…!)
そんな思いから、頭ひとつ抜き出た左端のカードを無視し、逆に右端のカードを引いた愛季。…だが、そのカードをかすめとった鮫島はニタニタと笑って、
「ククク…バカな女だ。せっかくの厚意を」
その笑みに感じた嫌な予感…そして、カードが顔の前に突きつけられると、そこには、
<筆×2>
その字を確認した瞬間、
「くっ…!」
と思わず身構える愛季に、
「おい、お前たち!次は筆だとよッ!」
鮫島が声を発するや、手際よく、持っていた羽根を筆を持ち替えた配下の男たち。
再び磔の愛季の左右に陣取ると、
「へへへ…♪次はこれでしてやるぞ」
「羽根と筆、お前さんはどっちの方がくすぐったいかなぁ?」
下卑た笑みとともに、再びくすぐり責めがスタート。
手始めに再度、二の腕に毛先を這わされただけで、
「んッ!んーッ!」
さっきの羽根よりも明らかに大きな反応に、
「おやおや…♪」
「お気に召されたようで…♪」
しめしめと笑った男たちによる筆責めの始まり。
そして、片方の男が二の腕の裏側…ぷるぷると肉が震えているところをなぞった瞬間、愛季が、
(くっ…ま、まずい…!そこは…!)
という表情をしたのを鮫島は見逃がさず、すかさず、
「おい、お前ら。どうやらコイツは二の腕が弱いらしい。弱点ってのは責めるためにあるんだ。もっとしてやれ」
と、愛季の二の腕の裏側を、ご丁寧に指を差して指示。
それをキッカケに、左右とも筆の餌食となる愛季の二の腕。
「んふッ…!んッ…んッ…!」
と、猿轡越しの悶え声がさっきよりも少し大きくなった。
くすぐりに弱い人間にとって、筆は凶器。
ましてそれが過敏な二の腕の肉を狙ってくる。

「ほれ…ほれ…どうだぁ?」
「ぷるぷる震えて可愛らしいじゃねぇか」
とご満悦の男たちに対し、防戦一方の愛季。
さらに鮫島が、
「お前ら。二人がかりで同じところをやるのもいいが、片方は別のポイントを探したらどうだ?コイツの引きの悪さから察するに、まだまだくすぐり責めに出来そうだからな♪」
「へい♪」
と片方の返事をし、苦悶する愛季に向かって、
「じゃあ…このへんとか行っちゃおうかねぇッ♪」
「くっ…!」
片方の筆が二の腕を離れ、脚へとワープ。
「腕でいう二の腕は、脚でいうとここだよなぁ?」
と、太ももをなぞるようにして毛先を這わされ、
「はふッ…!ほぉッ…ほぉッ…!」
猿轡を通すことで変な声になりながら、なぞる筆に合わせてピクピクと震える愛季の脚の動きに、
「へへへ…♪どうやらビンゴだな。上は二の腕、下は太もも。ちゃんと次に活かしてやるからな♪」
「くっ…!」
二の腕と太ももが弱点…その指摘に、正解と認めたように紅潮していく愛季の顔。
動揺とともにクネクネと動きが増した両腕は、依然、左右の手枷にガッチリと固定され、
「ククク…手が使えないから大変だなぁ?その状態じゃ、うざったい筆を掴み上げて遠ざけることも出来まい」
と鮫島に笑われる始末。
そして、さっきの羽根の時と同様、二の腕から腋の下へと筆が滑り降りると、
「んーッ!んーッ!」
「ハハハ!やっぱり羽根より筆の方が好みか?えぇ?」
「こんな筆二本で悶絶してるヤツが女王様なんて務まるのかよ!素直に俺たちのオモチャになってる方がお似合いじゃないのかぁ?」
圧倒的優位な状況ということもあり、意気揚々と笑い声を上げる男たち。

そして、
「…よし、3分経過だ。このへんにしといてやれ」
と鮫島が口にしたところでようやく、二本の筆がスッと離れていく。
「はぁ…はぁ…!」
と猿轡越しでも分かる愛季の吐息の乱れ。…だが、鮫島は気にせず、
「ククク…ここらで引き当てておかないと、まずいんじゃないか?毒が注入されてからまもなく10分…そろそろ効果が出始める頃だぞ」
「…くっ…」
鮫島の笑みで、それまで気丈だった愛季の表情が強張る。
理由は簡単…今しがたの筆責めの最中(さなか)、頭の中で、
(くっ…あ、熱い…!身体が急に熱を…!)
と思っていたことの答え合わせとなったからだ。
そして、そんな身体の変調に気付いたが最後、ますます熱くなっていく愛季の身体…いや、正確には淫蟲に刺された左右の乳首と陰核。
この三点だけがやたらと熱を帯び、さらにウズウズする。
特に陰核の方は凄まじく、みるみる体温を上げ、たちまち愛季の額は汗だくとなり、自然と困り眉に。
その様子を、
「おーおー、どうしたぁ?」
「滝のような汗をかいてるぞぉ?」
と面白がる男たちは、さらに、
「暑そうだな、おい」
「しょうがねぇなぁ…♪」
と、愛季の身体に残る切り裂かれた衣類の裾を、上下ともにめくり始める。
それに気付いて、
(や、やめろッ…!見んなッ!)
と叫んだつもりの声は猿轡で呻き声に変換され、為す術もなく晒される愛季の下着姿。
見た瞬間、
「おやおや…♪」
「これはこれは…♪」
ニヤリと笑みを浮かべた男たち…その表情だけで何が言いたいかが分かる。
おおかた、
(見た目はチビのくせに、しっかり女の身体してるじゃねぇか)
といったところだろう。
そして、
「もう、あってもなくても一緒だろう。下着を残して、他は全部、脱がせてしまえ」
という鮫島の指示で再びハサミを入れられ、ついさっきまで神聖だった筈の衣装は完全にハギレと化して足元に落ち、肌の露出面積をさらに拡大させられた。
「ククク…見た目はガキのくせに、意外と背伸びしたのをつけてやがるな」
と愛季の着用する下着を見た鮫島の感想。
さらに、
「どれどれ…♪」
「んッ…!んーッ!」
ふいにスッと伸びてきた鮫島の指先が、ひょいとブラを摘まみ、引っ張ることで、中を覗ける隙間を作った。
その隙間を、鼻の下を伸ばすように覗いて、
「ほぅ…キレイなピンク色だな。これは、さぞかし嬲り甲斐があるだろう」
と、絶賛ウズウズしている乳首を無遠慮にチェックされた愛季。
さらに、同じようにパンティも摘まんで引っ張られ、こちらは少し大袈裟に、
「おぉ…♪童顔だからてっきりまだツルツルかと思いきや、意外とフサフサ…♪」

(う、うるさいッ!このッ…!)
身体の火照りで赤くなっていた頬に、羞恥による赤面も加わり、文字通り、真っ赤になった愛季の顔。
そして、
(くっ…は、早く…早く解毒剤を…)
秒を刻むごとにどんどん熱くなる女の弱点。
我慢でどうにかなるレベルではない…先輩の森田が敗れたという話も納得だと判断した愛季の顔色も変わってきた。
よって、コイツらの前で下着姿を曝そうが、乳首やアンダーヘアを覗き込まれようが、それらの恥じらいよりも解毒剤が先決。
その思いもあって、じっと鮫島を見つめる愛季。
その視線に気付いた鮫島が、
「ククク…?何だ?さっさと次のカードを引かせろ、と?」
「━━━」
首を振ることもなく、視線を逸らさないのは図星の証拠。
そんな愛季の様子を、
「ハハハ!何だ、コイツ!睨みながらおねだりしてやがるぞ!」
「下着姿でもまだツンツンしやがって、生意気だな!」
癇に障る男たちの笑い声も今は右から左。
とにかく解毒剤…今は一にも二にも解毒剤だ。
そして、
「分かった、分かった。しょうがないヤツめ」
ニヤニヤした鮫島が再び五枚のカードを、今度は真ん中のを頭ひとつ抜き出した状態で扇にして、それを愛季の右手の前に差し出す。
「━━━」
「…どうした?引けよ、ほら」
と急かす鮫島をよそに、
(ど、どっち…?罠…?それとも、裏の裏…?)
苦悶を強いられながらの心理戦…。
先ほどは、罠だと警戒して避けて泣きを見た。
それもあって、
(お願い…解毒剤…解毒剤って書いてありますように…)
誘いに乗る形で真ん中の頭ひとつ抜き出たカードを摘まみ上げた愛季。
「ククク…次は俺に従ってくれたワケだな」
やたら満足げな表情で静かに扇を閉じた鮫島が、そのカードをひょいと掠め取り、愛季の目の前に突きつけると、そこに書かれていたのは、なんと、
<性感オイルマッサージ>
どう読んでも「解毒剤」とは読めないそのワード。
じわじわと情勢が変わってきた矢先、次はこのお題が愛季の身体に襲いかかる…!
(つづく)