2.地獄行きリムジン
正午。
照りつける太陽の下、欅ハウスの門の前に一台のリムジンが到着した。

客間のドアを開け、客を待つ運転手。
それに合わせて玄関から現れた菅井は、足早にそのリムジンに乗り込んだ。
ドアを閉め、運転席に戻って発進させる運転手。
リムジンが走り去るとともに、バタバタと次々に門から出てくる守屋茜、松田里奈、齋藤冬優花に尾関梨香。
遠退いていくリムジンを追いかけようと駆け出しかけた尾関を茜が止める。
「茜…!」
と不満げな眼をする尾関を、
「我慢…我慢よ…」
とたしなめる茜。
リーダーの菅井がまんまと連れていかれてしまった。
茜だって、当然、追いかけたい気持ちはあるが、
「ヘタな行動は相手を刺激しかねない。尾行はしないように」
と出ていく直前の菅井から忠告されている。
「くっ…!」
唇を噛む尾関、そして齋藤。
「菅井さん…!」
と呟く松田も心配そうだ。
そして四人はリムジンのテールランプが視界から消えるまでずっと、その場で手も足も出ずに立ち尽くしていた。
リムジンの車内。
やや緊張した面持ちでシートに腰かける菅井と、黙々と運転するドライバーの二人だけの静かな時間が流れる。
てっきり、中にあの電話の男がいるものだと思って乗り込んだが、誰もいなかった。
手持ち無沙汰になって腰かける革張りの高級シートを爪で掻く菅井だが、ふいに車内に備え付けられたテレビにあの目出し帽の男が映り、掻く指を止めた。
「ようこそ、菅井友香。君のために用意したリムジンの乗り心地はいかがかな?」
「━━━」
「これから君を案内する場所は、我々、復讐兵団のアジトの一つだ。そこで、欅共和国のリーダーである君には、ゲームで我々と対決し、その勝敗で人質の運命を決めてもらおうではないか」
「ゲーム…?」
「時間が惜しいので、今のうちにルールを説明しておく…」
ゲームといっても、まさか、ファミコンで対決するワケではない。
提示するゲームは、ズバリ、「堕ちたら負け!プライドを賭けた寸止め快楽拷問チキンレース」だ。
ルールはいたってシンプルで、相手となるのは復讐兵団が誇る女体責めのテクニシャンたち。
勝負は制限時間を設けて行い、その制限時間内に彼らが菅井の身体に様々なアプローチで刺激を与え、快楽漬けにしていく。
そこで、至極のオーガズムを味わうか否かは菅井次第。
刺激に耐えきれず、欅共和国のリーダー、その女王のプライドを捨てて陥落し、絶頂を自ら懇願すれば菅井の負け…。
逆に、その制限時間を、どれだけ焦らされようと精神を保ち続けることが出来れば菅井の勝ち、というワケだ。
「君が勝てば人質を解放しよう。それは約束する。ただし…!」
「━━━」
「万一、君が負けた場合…その時は、我々が聞き出したいことを全て包み隠さず、素直に答えてもらう。たとえば、君たちの根城である欅ハウスを奇襲して残る仲間を一網打尽にするための侵入経路、そして、統治神ヒラテの居場所といったことだな」
「━━━」
自然と拳を握る菅井。
自身の不甲斐なさで残してきた仲間たちまで食い荒らされるワケにはいかないし、ヒラテの居場所など言語道断。
(絶対に…絶対に負けられない…!)
闘志に満ち溢れる菅井の表情を画面越しに見て、
「どうかね?受けて立つかね?…といっても、拒否すれば人質は死んでしまうワケだが」
「ええ。もちろん受けて立つわ。ただし、そう簡単にはいかない。全てそっちの思い通りにいくと思ったら大間違いよ!」
とテレビ画面の向こうの男に向け、睨みを効かせる菅井。
「ククク…いいねぇ、その気丈な態度。楽しみだ」
と笑った男は、
「思い通りにいくと思ったら大間違い…か。面白い!そのセリフ、こっちこそ、そっくりそのまま返してやる!アジトに着くまでのあと数分の間に堕ちる覚悟を決めておくんだな!ハーッハッハ!」
と、最後は高笑いとともに画面が消えていった。
そして、今の言葉を復唱するように、運転席から、
「あと3分ほどで“地獄の入り口”に着きますぜ。堕ちる準備…いや、失礼。降りる準備をしてお待ちくださいねぇ。ひっひっひ…!」
と笑い声が聞こえた。
敗れれば、守るべきもの全てが奪われる…。
国のため、仲間のため…そして崇拝する統治神ヒラテを守るため…!
菅井友香の絶対に負けられない戦いが、まもなく始まる…!
(つづく)